○島津委員 日本共産党の島津幸広です。
今JR東海が進めているリニア中央新幹線は、そもそもの必要性、経済性、採算性、環境問題など、多くの問題を抱えています。きょうはこの問題を取り上げさせていただきます。
今進められようとしている東京―名古屋間のリニア新幹線は全長二百八十六キロメートル、そのうちトンネルは二百四十六キロメートルです。このルートのうち、静岡県は十・七キロメートル。これが、昨年六月にユネスコのエコパークにも指定された南アルプスの下をトンネルで通過します。
まず、望月大臣にお聞きをしたいと思います。
リニアの建設に当たって、環境影響評価書に対する環境大臣意見があります。この中でこう述べられています。
本事業のほとんどの区間はトンネルで通過することとなっているが、多くの水系を横切ることとなることから、地下水がトンネル湧水として発生し、地下水位の低下、河川流量の減少及び枯渇を招き、ひいては河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い。特に、山梨県から長野県にまたがる地域の一部は、我が国を代表する優れた自然の風景地として南アルプス国立公園に指定されており、また、ユネスコエコパークとしての利用も見込まれることから、当該地域の自然環境を保全することは我が国の環境行政の使命でもある。
このように言っているわけです。
これは本当にもっともだと思うんですけれども、望月大臣は、この意見が出されたときには就任されていないんですけれども、この立場にはお変わりありませんね。
○望月国務大臣 これは、昨年六月の石原大臣時代に出された環境大臣意見でございますが、それにつきましては、法に基づいて環境大臣が申し上げたものでございまして、私としても当然これを踏まえてまいりたい、このように思っております。
今後、事業者であるJR東海においては、責任ある事業主体として、環境大臣の意見を踏まえて、具体的かつ適切な環境保全措置を講じていただきたい、このように思っております。
○島津委員 リニアの建設にはさまざまな問題があります。環境という面だけ見ても、最大の問題は自然そのものを破壊することです。だから、環境大臣意見でも随所にわたって懸念が表明される。これを指摘しているわけです。
南アルプスのど真ん中に五十九・二キロメートル、静岡県内だけでも十・七キロにわたるトンネルを掘る。大量の土砂、建設発生土が放出されます。貴重な生物も生態系が変化する。それだけじゃありません。静岡県では、大井川下流に住む人々の生活や産業、なりわいにも大きな影響を与えようとしています。リニア建設というのは、単に橋をつくったり、あるいは道路をつくる、こういう事業とは根本的に違うわけです。
大臣に改めてお聞きしたいんですけれども、このリニアの建設、環境の側面から見てどういう意味を持つのか、環境省としての捉え方、これをぜひお聞かせください。
○望月国務大臣 リニア新幹線事業でありますけれども、この事業規模の大きさから、相当な環境負荷が発生する、これは我々環境省としては懸念をしております。
具体的に言いますと、環境大臣意見で述べましたとおり、多大な電力消費に伴う温室効果ガスの排出、そしてまた、トンネルの掘削に伴う大量の残土の発生、そして、多くの水系を横切ることによる地下水や河川への影響等の可能性が考えられ、これらについては十分な環境保全措置を求めていく、こういうことでございます。
○島津委員 経済優先、時間短縮など、幾らリニア建設の意味づけをしても、それだけで、古代から形成されてきた自然という宝物を人の手によって破壊することは決して同意できません。一度破壊された自然はもとに戻らないわけです。まさに自然は宝物です。
具体的にお聞きします。静岡県の大井川水系をめぐる問題です。
この地域は、発電用ダムの建設で川の流量が減り、流域住民の皆さんが水の確保のために歴史的にも本当に苦労してきたところです。大臣も同じ静岡県民として、このことは十分承知していると思います。
ところが、JR東海の発表によると、大井川で毎秒二・二トンの減水となる、こうされています。自己水源に乏しい大井川西岸の自治体にとっては、まさに死活問題です。
現在、大井川広域水道事業により、長島ダムから七市二町六十三万人に対して水が供給されています。中には、市内で使う水道水の九割を依存している、こういうところもあります。二〇一二年は、大井川流域の七市二町で利用した水道利用量は毎秒約一・三九トンでした。二トンというのは、それを大きく超えることになります。
減水に対してどんな対策をとり、そして、その対策をとった場合に水の減量はどのぐらいになるのか、これをお答えください。
○篠原政府参考人 お答えを申し上げます。
この対策でございますけれども、JR東海は事前に先進ボーリング等を行いまして、地質、地下水の状況を十分把握して、必要に応じて薬液注入や覆工コンクリート、防水シート等の措置を投じて、水資源への影響をできるだけ回避するということを考えております。
また、今、トンネルの湧水を大井川に戻す導水路トンネルについても検討を進めておりまして、どのくらいの幅に抑えられるかということを定量的にお示しするのはなかなか困難ではございますが、できる限り水資源への影響を低減していくということを考えてございます。
○島津委員 この水がれの問題ですけれども、山梨の実験線では水源の枯渇が生じています。JR東海も、実験線でのトンネル工事による影響を認めています。
実際の工事に先立って、地下水への影響について、この実験線ですね、予測を行ったと聞いていますけれども、なぜ水がれの事態を予測できなかったのか、これをお答えください。
○篠原政府参考人 お答え申し上げます。
リニア実験線の工事に先立ちましては、事前に現地の地質調査等をJR東海が行っておりますけれども、その際、破砕帯等にトンネルが交差した場合には減水が生じる可能性があるというふうなことは予測をしておったと伺っておりますけれども、実際に破砕帯がどのあたりに地下の深いところで発生しているかというところまでの具体的な特定までには至らなかったために、今のような事態が生じているというふうに伺っております。
○島津委員 予想はしていたけれども、いろいろやったけれども外れたというわけですけれども、結局、掘ってみなければわからないというのが現状ではないでしょうか。
幾らトンネルの掘削技術が進歩したといっても、工事によっては大量の水が出ることは自然の摂理です。とりわけ、山岳トンネルの場合は、土かぶりが大きくなるほど荷重は増して、高圧の地下水が突発的に発生する可能性が大きくなります。とりわけ、大井川から南アルプスの主稜線越えまでの約十キロは、土かぶりが最大になるところです。山梨の実験線では、リニア工事によって水脈を断ち切ったことは、関係者も認めているわけです。
リニア工事は、計画では東京から大阪までの長大な区間を貫くわけですから、その長い区間で連続的に水がれを起こすという特異性があります。だからこそ、問題は、対策ではなく、なぜ予測できなかったか、この検証が行われることが必要だと思うんです。この検証なくして、適切に対処する、問題ないと、とても断言できるはずはありません。このことをぜひ強く指摘しておきたいと思います。
次の問題に移りたいと思うんです。
下流域にある掛川市は、大井川への上水道の依存度が約九割に上ります。それだけに、大井川の水は命の水と言われています。掛川だけでなく島田市でも、大井川の水は命の源、こういうふうに言われています。
ところが、大井川の渇水期には、飲料水、農業用水、工業用水の取水制限が過去何度も行われています。大井川水系で過去深刻な水不足となった一九九四年、九八年、二〇〇五年では、上水道で最大二〇%、工業用水で三八%、農業用水では最大五〇%の節水率となっています。とりわけ一九九四年、この夏には全国的な渇水状況となりました。大井川水系でも、八十二日間もの長期間、取水制限が行われました。だから今、地元の人たちは、このリニアの問題で水が減るということに非常に心配になっているわけです。
環境大臣意見の中では、中央新幹線事業は住民や地方公共団体の理解なくして実現はできない、こう述べています。にもかかわらず、実際は具体的な環境保全対策が明らかにされていない。だから、多くの市長を初め大井川下流域の人たちは、さまざまな疑問や懸念の声が出ているわけです。
大臣に伺います。
住民や地方公共団体の理解なくして実現はできない、この大臣意見は、今、リニアの工事を進められている中で生かされているとお思いですか。
○望月国務大臣 事業実施に当たっては、住民の理解を得るということ、これは重要であると我々認識をしております。昨年六月の環境大臣意見においても、地元自治体の意見を十分に勘案し、環境影響評価においても重要である住民への説明や意見の聴取等の関与の機会の保全についても十全を期すことを求めたところであります。
この説明の具体的なあり方でありますけれども、環境大臣意見を踏まえて、JR東海が責任ある事業主体として適切に実施してもらいたい、こんなふうに考えております。
○島津委員 事業主体が適切に実施してもらいたいということはもちろんなんですけれども、環境省としてもぜひ大きな役割を果たす必要があると思うんです。
この問題、大井川の毎秒二トンの減少というのは、生活用水等々、こういう問題だけに限らないわけです。
大臣、通告していませんけれども、静岡県の話ですからおわかりになると思うんですけれども、大井川がつくる霧やもや、これが、茶どころなわけですけれども、お茶の生育に非常に有効な役割を果たしているわけです。もし水が毎秒二トン減るということになると、この霧やもやもなくなってしまうと言われているわけです。お茶産業にも重大な影響がある。
だから、水問題というのは本当に深刻だ、これはもう、深刻だということは静岡県出身の大臣としても理解できますね。
○望月国務大臣 まさに日本一のお茶どころでございますので、こういったものはしっかりと認識をして検証していかなくてはいけない、このように思っております。
○島津委員 それでは、減水対策として計画されている導水路、先ほど話がありましたけれども、これについてお聞きします。
まず、大井川水資源検討委員会というのがつくられました。これはなぜつくられたんでしょうか。そして、現時点での委員会の議論の到達点を教えていただきたいと思います。
○篠原政府参考人 お答え申し上げます。
この委員会でございますけれども、こちらは、国土交通大臣が環境影響評価の法律に基づきまして意見を申し上げた際に、有識者の知見も十分に活用して水資源対策を行うようにということを申し上げております。これを受けまして、JR東海の方で、有識者から成る検討委員会を昨年十二月に第一回を開催し、検討を開始したという状況でございます。
その検討の中で、御指摘いただいた導水路トンネル、大井川の水に導水路を通じましてトンネル内湧水を流していくという方策が最も有効な方策であろうということで、これを最有力の候補として今検討を深度化している、そういう状況でございます。
○島津委員 導水路が主要な対策だということなんですけれども、この導水路についても、新たな指摘や疑問、懸念の声が出されています。
導水路が大井川に水を合流させるわけですけれども、それまでの上流区間というのは水が枯渇する、この可能性があるということは委員からも指摘のあるところです。また、導水路の延長距離は約十二キロ。静岡県内を通るトンネルの本線以上の長さになるわけです。このため、新たな環境影響が生じるとの懸念も出されています。
こういう声にどう応えていくのか。懸念を表明する方々も納得する答弁を求めたいと思います。
○篠原政府参考人 お答え申し上げます。
特に、導水路トンネルについて御指摘がありました、長いトンネルを掘ることによる影響ということにつきまして、今、検討の流れの中では、導水路トンネル上の沢、あるいは出口付近、こういったところに生息しております動植物、あるいは水質、こういったものを事前に十分調査を進めていくということにしております。
そして、その調査の中でモニタリングも行っていきまして、必要な場合には、影響が生じるおそれがある場合には、移殖などの環境保全措置を含めて講じていくというふうな形で、しっかりと環境に配慮しながら導水路トンネルの検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えてございます。
○島津委員 なかなか皆さんの心配に応えるような答弁じゃなかったと思うんですけれども。
地元自治体からは、保全措置を尽くした上で減水となる場合の代替水源の確保の具体的な位置、方法、その確実性の根拠、水利権の存在を明らかにするよう求めた意見書が出されています。
導水路の対策を実施しても減水する、この場合はどうするんでしょうか。
○篠原政府参考人 現時点での検討委員会での有識者の見解によりますと、導水路トンネルというのが恒久的、確実に大井川に水を戻す方策であり、必要に応じて途中でトンネルで湧水をポンプアップすることもできるということで、この方策をとれば水資源利用への影響は生じないと考えるというふうに伺ってはおります。
ただ仮に、それでも減水になったような場合には、JR東海は、専門家等の助言を得まして、適切な環境保全措置を講じるというふうにしているところでございます。
○島津委員 そもそもこの検討委員会ですけれども、準備書に対しての知事意見が出された段階で立ち上げるべきものだったと思うんです。この委員会の結論を踏まえて評価書を出すべきじゃないかと思うんですけれども、事業に関連する環境影響を伴うような工事は全て環境アセスの対象とするのが本来ではないでしょうか。後出しで工事が追加されていくのはフェアじゃないと思いませんか。
○小林政府参考人 環境アセスメント制度は、事業の実施に先立ちまして極力環境を織り込んでおく、こういう制度でございます。
今御指摘の導水路トンネル計画でございますが、これは、今のやりとりの中でも明らかになってまいりましたように、JR東海が、大井川流域の水資源に対する影響、特に水が減ってしまうということでございますが、これを回避、低減するための環境保全措置の一つとして検討されている、こういうふうに承知をしております。
そもそも、私どもの環境大臣意見の中でも、河川流量などにつきまして影響を最小限にするように、そういったことはしっかりやっていただきたい、こういうことも申し上げた。それに対する対応であるのかなというふうに考えているところでございます。
アセスメント法自体は、事業の着手前までにいろいろなことを織り込んでおく、こういうプロセスでございますので、こういった導水路トンネル計画自体をアセスの対象にするということは難しいというふうに考えておりますが、六月の環境大臣意見の中でも、これは事業本体も、それから環境保全措置も、全体が含まれると思っておりますが、新たな自然環境の改変を伴う場合には、追加的な調査、予測及び評価を行い、適切な環境保全措置を講じることを求めているところでございます。
したがいまして、JR東海におかれましては、今後の計画の進捗、また環境大臣意見の内容も踏まえていただきまして、適切な対応を講じていただきたいというふうに考えているところでございます。
○島津委員 時間がありませんから、これまで聞いた中でも具体的な環境保全措置が見られないんですけれども、次の問題に移りたいと思います。
次に、建設残土の問題です。
最初に、静岡県内で出る残土の量、置き場所は何カ所で、どこに予定されているのか。これをまずお聞かせください。
○篠原政府参考人 環境影響評価書によりますと、静岡県内で発生いたします発生土の量は約三百六十万立米とされております。その置き場の候補地は七カ所とされておりまして、それぞれのおおむねの位置が地図上で示されているところでございます。
○島津委員 今出ました置き場所の候補地七カ所、このうち、少なくても、がれ場二カ所については、地質の専門家によって見直しが指摘されているところです。
資料でその二つの予定地の写真をお配りしました。こういう山の、南アルプスの中に残土を置くわけですけれども、写真を見てもらえるとわかるように、あちこちで崩れたようなところがあると思うんです。
南アルプスと同じ地質帯である紀伊半島南部は、四年前の台風で大規模な深層崩壊が多数発生しました。同じ地質帯である南アルプスでも、同様の危険が想定されるわけです。実際に、これまでの歴史、過去を振り返ってみましても、一七〇七年の宝永地震では大谷崩れが起きました。一八五四年の安政地震では七面山崩れ。いずれも大規模な崩壊が起きています。このほかにも、小規模な崩壊も珍しくありません。
崩壊が起きれば、発生残土置き場も崩壊することは明らかです。さまざまな問題を抱える残土処理を、JR東海は、大規模な崩壊が発生したとしても、発生土置き場の存在による影響は非常に小さいと考えられる、このようにしているわけです。このような楽観的な評価の上に立つ残土処理方針を認可した、この根拠をお聞かせください。
○篠原政府参考人 資料でお配りをいただきました御指摘の地点は、扇沢という地点、写真では1の部分、それから燕沢、これはお配りいただいた写真では3の部分かと思います。
この扇沢、燕沢の状況でございますが、JR東海によりますと、まず扇沢につきましては、現地踏査あるいはボーリングなどを行いまして、発生土を安定的に置くことができる良好な岩盤が分布をしているので安全が確認できたというふうに報告を受けてございます。
また、写真の3に当たりますが、燕沢につきましては、まず、上流に治山ダムが既に設置をされております。また、河川敷が十分な広さがあって、川の流れを阻害するおそれはないということで、発生土置き場としての安全性を確認したというふうに報告を受けております。
その上で、JR東海には、管理計画を発生土置き場ごとに作成させまして、土砂の流出防止等を含めましてしっかりと管理させていきたい、こういうふうに考えてございます。
○島津委員 今お話があったんですけれども、静岡市の環境評価専門家会議があるんです。そこで扇沢について何と言っているか。山梨県側からも静岡県側からも地すべり、崩壊による侵食が進み、面積が縮小しつつある不安定な領域に当たる、そこに発生土を積み上げると重力不安定を促進し、発生土を含め、山体崩壊を促進することになる。このようにして、同地での発生土の処理は回避されることが望ましい、こう言っています。
それから、燕沢についても、同地はこれまで、今お話がありましたけれども、土石流の受け皿として、下流への土砂の流出を抑える役割を果たしてきています。この燕沢に大量の発生土置き場をつくるとなると、土石流が発生した場合に、受け皿にならずに一気に下流部に流出する、こういう危険があると、強い懸念も示しています。
環境大臣意見では、発生土置き場の選定条件として、自然環境に影響を与えず、環境を害することのない場所に設置するよう求めています。静岡県知事の意見でも、発生土置き場が周辺環境に及ぼす影響について、事前の環境調査やモニタリング、事後調査を含め、環境保全のための万全な措置を求めています。
しかし、実際には景観ということがあったわけですけれども、この残土予定地は、残土が登山者から見えるところにも置かれます。そして、地すべり危険地帯が多い場所、そこに盛り土をすることは、危険度を増すことになります。これは環境大臣意見の真意に反することじゃないんでしょうか。大臣、どうでしょう。
○望月国務大臣 昨年六月に提出した環境大臣意見でありますけれども、発生土置き場の発生土の管理について、これは、濁水の発生防止や土砂の流出防止を初め、周辺環境に影響を及ぼさないように、発生土置き場ごとに、地方公共団体と協議をして、管理計画を作成した上で適切に管理することを、しっかりとやるようにということで、これを求めております。
また、新たに発生土置き場を選定する場合には、土砂の流出によって近傍河川の汚濁のおそれのある地域等を回避することも求めております。
JR東海において、これは環境大臣意見を踏まえて、責任ある事業主体として、発生土置き場の適切な選定や管理をしていただきたい、こんなふうに思っております。
○島津委員 るるお答えがあったんですけれども、曖昧な表現じゃなくて、発生土置き場については、具体的かつ遵守の必要のある設置基準を設置すべきだと思います。
大臣意見は、計画の実施に当たっては、地域住民との間で誠実かつ十分な説明と意見交換を行い、双方協議の上で進めなければならないとしています。しかし、日本の環境アセスメントはゼロオプションもなく、計画段階に事業者以外はかかわれないなど、さまざまな欠陥を持っています。リニア計画についても、環境大臣意見で、きょうもいろいろ答弁ありましたけれども、環境保全を繰り返し指摘しているにもかかわらず、実際は環境への低減措置が不十分でも次の措置へと進むことができてしまう、こういうことになっています。
静岡市以外の大井川下流域の自治体は、水がれなど、先ほど指摘しましたけれども、重大な影響を受けるにもかかわらず、アセスの対象にもなっていません。
大臣、本来のアセスのあり方からして、これでは不十分だと思いませんか。
○小林政府参考人 先生よく御高承のことだと思いますが、環境アセスメントは、事業者がみずから情報を集めて、レポートをまとめ、これを公にして、一般の方からの御意見もいただきます。また、都道府県知事は、御承知のように、専門家の審査も経て知事意見を申し上げます。またさらに、そこで手直しをしていく中で、最終的には国がしっかり意見も申し上げる、こういうプロセスを踏んでいくものでもございます。
規制制度と違いますので、何か物事を決めて、これを罰則等で強制していく、そういうものではございませんが、逆に、事業をわかっている本人が、みずから手続を踏んでいくという中で、非常に幅広い、また程度の高い対策も求められる、そういう制度だと思っておりますので、そういうことで今までこの制度を育ててきておりますので、この趣旨が全うされるように頑張ってまいりたいと思っております。
○島津委員 制度の趣旨が不十分だということなんですけれども、日本弁護士会が今回のリニアに関する問題で意見書を出しています。「全長二百八十六キロメートルにも及び、そのうち二百四十六キロメートルはトンネルという大規模な事業かつ環境に影響を及ぼす可能性の高い事業であるにもかかわらず、調査の期間があまりにも短い。」「このような短期間で十分に調査を尽くし、環境への適正な配慮をした事業を実施することは到底不可能である。」このように指摘しています。
大臣にお聞きします。
リニア計画は、採算性、安全性、環境破壊など、さまざまな面で大きな問題を抱えています。加えて、今も明らかになりましたけれども、全く不十分なアセスしか得ていない。だから、多くの批判や懸念の声が上がっているわけです。
大井川下流域にある島田市の染谷市長は、広報の中で、「今般の認可は、地域住民に対して納得のいく説明がないままの「見切り発車」と言わざるを得ません。」とまで述べています。
このようなプロジェクトは凍結して、見直しをすべきだと考えますけれども、大臣、見解はどうでしょう。
○望月国務大臣 我々は、環境影響評価というものを国交大臣にお示しをして、そして、この事業をしっかり、事業者、JR東海が、我々で示したことを守っていただいて、この事業を進めていただくということが本意だと思っております。
事業者においてしっかりと、我々の意見を踏まえて事業をしていただきたい、このように思っております。
○島津委員 環境影響評価法第一条では、「その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資することを目的とする。」と定めています。そして、環境影響評価法に基づいた環境アセスメントの手続の住民参加の規定というのは、住民の意見を事業に反映させることを目的としています。
大臣にもう一度お聞きします。
現状の不十分さを含むアセス法をそもそもの目的にふさわしく抜本的に改正する必要があるんじゃないでしょうか。あるいは、新たな政策、事業立案の段階での環境影響評価を行う制度が必要であると考えますが、どうでしょう。
○望月国務大臣 先ほどお答えさせていただいたことでございますが、この環境影響評価、事業主体がしっかりと我々の提言したことを守っていただきたい、こんなふうに思いますし、また、これは、この事業の許認可等においては、環境配慮の観点からの審査の際に、評価やこれらの意見が活用されることになっております。
こうしたことから、現行の環境影響評価法においては、事業者が事業の実施に際して、先ほどからお話ししておりますように、適切な環境配慮を行うことが担保されていると我々は考えております。
○島津委員 時間がありませんので終わりますが、アセスで大臣意見を述べたからといって終わりではありません。住民の生活に根差した視点で本当に環境保全が行われているのか、最後までそこに責任を持つのが環境省の役割です。このことを指摘して、質問を終わります。
ありがとうございました。