会議全体の議事録はこちら
○島津幸広君 私は、日本共産党を代表して、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案、いわゆるカジノ解禁推進法案の回付案に断固反対の討論を行います。(拍手)
この法案は、刑法で禁じられている賭博を合法化するという、国のあり方を大転換する法律です。どの世論調査でも反対が賛成を大きく上回り、マスコミ各紙も拙速な審議に反対、批判している中、会期延長のどさくさに紛れ、衆議院内閣委員会に突如持ち出されてきました。
議員立法であるにもかかわらず、与野党合意のないまま委員長職権で強引に審議入りをし、衆議院ではわずか五時間三十三分という短時間、十分な審議がなされないまま強行されたのです。
こうした強引、乱暴な運営の結果、参議院で修正せざるを得なくなったわけで、この事態を生んだ自民、公明、維新各党の責任は極めて重大です。さらに、会期の再延長までして何が何でも押し通そうとする暴挙を重ねるやり方に厳しく抗議をいたします。
日本の歴史上初めて民営賭博を合法化しようというこの法律案は、修正しても、何らその本質が変わるものではありません。
カジノ解禁は何をもたらすのか。推進議連がまとめたカジノを含むIRの実現、実施に関する基本的な考え方の中でも、社会的関心事への対応として挙げているのは、暴力団組織の介入や犯罪の温床になること等を断固排除する、あるいは、マネーロンダリングを防止する、地域風俗環境悪化、公序良俗の乱れを防止する、青少年への悪影響を防止する、賭博依存症患者の増大を防止し、その対策のための機関を創設するなどと、カジノによるさまざまな害悪を認めているわけです。
これらの対策、カジノの規制策について法案提出者は、政府が実施法の段階で適切に決めるという答弁を連発しました。法案施行後一年を目途に政府の責任で決める実施法に、まさに丸投げをしているのです。カジノ解禁だけを先に決め、多くの国民が心配していることに何もまともに答えていません。
参議院での修正で、ギャンブル依存症等の防止について明示するなどとしていますが、ここでも、具体的にどのような対策をとるのかは何も明らかになっていません。このこと一つとってみても、この法案は廃案にすべきです。
賭博は、なぜ禁止されてきたのか。それは、人々をギャンブル依存にし、仕事を怠けさせ、かけるお金欲しさに窃盗、横領などの犯罪まで誘発して、公序良俗を害するからです。そして、賭博が横行すれば、まともな経済活動も阻害されるからです。
既に日本は、世界最悪のギャンブル依存大国です。二〇一四年八月に厚生労働省の研究班が公表した調査報告では、日本のギャンブル依存症患者は五百三十六万人。これは、成人人口の二十人に一人に上る数です。
WHOによれば、依存症とは、ギャンブル行動を繰り返すことで生ずる脳の機能障害だとされています。行動による刺激が積み重なることによって、症状に見舞われ、悪化していくのです。
最善の依存症対策は、そうした行動を引き起こさないこと、ギャンブルをさせないことです。
カジノは、他のギャンブルと比べ依存症に誘導する危険が非常に高い、略奪的ギャンブルと呼ばれる賭博です。IR型カジノは、アメリカのラスベガスをモデルとして、現在、世界各地で導入が進められています。そこで導入される米国型の商業カジノは、収益極大化を目指して、依存状態に誘導するテクニックを凝縮させたものです。
その手法は、時計も窓もない空間や刺激的な音楽等の演出で、独自の陶酔感をつくり出します。そして、短時間でのかけを繰り返し延々と続けさせ、大金を得る快感と失う喪失感を交互に味わわせることで、脳内に物質的依存症と同じ状態をつくり出す、あり金なくなるまでかけさせるというものです。
カジノは、パチンコと比べても桁違いに刺激性の高いギャンブルです。カジノを解禁したなら、依存症患者が急増するのは火を見るよりも明らかです。カジノで依存症患者をふやし、莫大な公費、そしてカジノの上がりまでも使ってその対策をすると言います。まさにマッチポンプ。カジノを解禁しないことこそ、一番の依存症対策です。
さらに心配なのは、青少年への影響です。
提出者は、IRは国際会議場やホテル、レジャー施設など複合的な施設の一角にカジノがあるだけ、カジノの割合はほんの少し、三%にすぎないなどと言っています。しかし、それこそ大問題ではありませんか。家族連れで行くところにカジノがある。青少年が賭博場に触れ、育ったなら、どんな影響が出るのか。
今でも、脱法ハーブや脱法ドラッグだけでなく、たばこやゲーム機、スマートフォンへの依存も含め、依存症という問題は、青少年に広範な影響を及ぼしています。こうした問題の解決のないまま、さらにカジノを合法化するようでは、真面目にこつこつと課題に取り組もう、真面目に働こうという教育などは、全くの絵そらごとになってしまいます。
カジノ解禁が経済成長の起爆剤、成長戦略の目玉といった議論もあります。新たな付加価値を生み出すわけでもない賭博が、なぜ経済対策となり得るのか。
カジノで雇用や税収が一時的にふえるかもしれません。しかし、そのふえた何倍もの人が、人生を賭博によって崩壊させられるのです。賭博で負けたお金、人の不幸で成り立つ成長戦略など言語道断、退廃のきわみです。
カジノ産業は、今や、世界でもアジアでも、陰りを見せている斜陽産業となっています。カジノに依存するまちづくりの危険性は、アメリカで今顕著にあらわれています。
ラスベガスと並んでカジノの町の象徴とされたアトランティックシティーでは、次々とカジノが倒産、三分の一が消滅する状態で、雇用で二五%、税収で一九%も減少しています。
カジノの設置で、既存の産業や商業が破壊され、地域循環型経済やコミュニティーの崩壊が進んでいるのです。
観光の振興に期待する議論もあります。しかし、リゾート地や温泉場にカジノができたらどうなるのか。外国の例を見ても、売春組織や闇金融は排除できません。それまで守ってきた観光資源が台なしとなり、風光明媚な町が賭博の町となり、一旦壊れたイメージは取り返せません。
地域経済活性化のために、本来の地域の資源、観光資源を生かす道こそ、知恵と力を集中すべきです。
賭博禁止の理由の一つに、国民経済の機能に重大な障害を与えるおそれが挙げられています。賭博は、経済成長どころか、経済成長の重大な妨げとなるものです。
カジノ解禁推進法案は、まさに国を滅ぼしかねない希代の悪法と言わなければなりません。多くの国民の不安に応えず、圧倒的多数の反対を押し切って民間賭博、カジノを解禁するなら、取り返しのつかない大きな禍根を残すことになります。
まさに、百害あって一利なし。この法案は、廃案にするしかありません。
以上、反対討論を終わります。(拍手)