しまづ幸広(日本共産党元衆議院議員)-浜岡原発廃炉、静岡から政治を変えよう
国会質問

質問日:2016年 11月 24日 第192国会 科学技術特別委員会

基礎研究への予算確保に関する質問

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島津委員 日本共産党の島津幸広です。

 きょうは、鶴保大臣に、日本の科学の現在と将来について質問をしたいと思います。

 最初に、マスコミ報道によりますと、大臣は、ことしノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典さんの記者会見や講演での発言に対して、去る十月四日、次のように述べています。「社会に役立つか役立たないかわからないものであっても、どんどん好きにやってくださいと言えるほど、この社会、国の財政状況はおおらかではない」、これは、十月五日、朝日新聞に報道されています。

 大臣、この発言についての真意をお聞かせください。

鶴保国務大臣 事実を、この発言をもう一度ひもといていただければわかると思いますが、この後に、私は、おおらかではないが、限られた予算を効率的、効果的に配分をしていくことが重要であるという趣旨の発言もさせていただいておるところであります。

 大隅教授が言われた基礎研究の重要性については、私も、論をまたず、重要であると考えております。

島津委員 まあ、補足があるわけですけれども。

 もう一つお聞きしたいんですけれども、ここで言われている「社会に役立つか役立たないかわからないもの」、こう言ったわけですけれども、社会に役立つ、役立たない、この判断基準というのはどのように考えているんでしょうか。

鶴保国務大臣 いかなる研究であっても、恐らくは役立ってくれるのであろうと私は信じております。

 しかしながら、私の申し上げた真意の限りで申し上げたいと思いますけれども、何十年も、三十年も四十年も、どうなっていくかわからないということを国の予算をつけながらやっていくことが果たしてできるのかなという、そこの問題を申し上げたにすぎません。

 役立つか役立たないかを誰かが法定するということではなくて、これを客観的に、先ほど来のお話にもありましたとおり、重点的に予算配分をしていくその仕組みこそ、私は考えていかなければならないことだというふうに考えております。

島津委員 今御答弁されましたけれども、ただ、この朝日新聞の報道に限れば、「この社会、国の財政状況はおおらかではない」というので終わっているんですよ。これは誤解を与えますから、大臣、朝日新聞に抗議なり要請して真意を出すようにしていただいたらどうですか。私はこれを読んで、実は、科学担当大臣の言葉とは思えないということで驚いたんですけれども、今の話を聞いて、そういうことならそういうことで、ちゃんとするべきだと思うんですが、どうですか。

鶴保国務大臣 それも視野に含め、対応したいと思います。

島津委員 大隅さんは、受賞決定後の会見で、今も大臣もるる言われましたけれども、自然科学の分野での基礎研究の重要性を強調して、この研究をしたら役立つというお金の出し方ではなく、長い視点で科学を支えていく社会の余裕が大事、全ての人が成功するわけではありませんが、チャレンジすることが科学の精神であり、その基礎研究を見守ってくれる社会になってくれることを期待したい、こう言っています。

 大隅先生だけではありません。昨年ノーベル物理学賞を受賞した梶田先生も、先生の研究は何の役に立つか、こう聞かれまして、知の地平を広げる、こう答えられています。大隅先生は同じ質問に、役立つという言葉が社会をだめにしている、こう答えています。

 改めて大臣にお聞きしたいんですけれども、基礎研究ということについてどのように認識されているんでしょうか。

鶴保国務大臣 大隅教授が指摘をされた後も、受賞直後ですか、コメントを出された、そのコメントも拝見をさせていただきましたが、直接、党の方にもお越しをいただいたときに、短い挨拶ではありましたけれども、交わさせていただきました。

 そんなことごとを含め、私なりに、教授が言われている新たな知の資産を創出することとともに、世界共通の課題を克服する鍵であるということを、私も重要なものと認識をしております。

島津委員 この基礎研究、今大臣も御答弁がありましたけれども、文科省の定義でも、個別具体的な応用、用途を直接的な目標とすることなく、仮説や理論を形成するため、または現象や観察可能な事実に関して新しい知見を得るために行われる理論的または実験的研究をいうというわけです。

 今すぐ成果を求められなくても、そういう基礎的な研究が広がる中で、裾野が広がる中で、将来、ノーベル賞をとるだとか、いろいろな役立つものになっていくわけです。そのことをやはり確認しておきたいと思うんです。

 そこで、具体的な話を聞きたいと思うんです。

 ことし一月閣議決定された第五期科学技術基本計画では、「大学及び研究開発法人がミッションを遂行するためには、研究や教育を支える基盤的経費が不可欠である。」こう強調しています。大臣、これは間違いありませんね。

鶴保国務大臣 御指摘のとおりであります。

 国立大学法人や研究開発法人の運営費交付金は、継続的、安定的に教育や研究を行う上で必要不可欠であると認識しております。

島津委員 そこで、文科省にお聞きしたいと思うんです。

 国立大学の基盤的経費の重要部分を占める運営費交付金、これについて、二〇〇四年度と二〇一六年度の推移はどうなっているんでしょうか。

義本政府参考人 お答え申し上げます。

 国立大学法人運営費交付金につきましては、第三期中期目標期間の初年度でございます平成二十八年度、二〇一六年度の予算におきましては対前年度同額を確保しておりますけれども、過去十二年では千四百七十億円の減額をされてきたところでございます。

 具体的には、二〇〇四年の予算額が一兆二千四百十五億円でございましたが、二〇一六年度予算額につきましては一兆九百四十五億円となっております。

島津委員 今お答えがあったように、約一千五百億円のマイナスとなっています。

 この運営費交付金の性格、役割というのはどういうものでしょうか。

義本政府参考人 お答え申し上げます。

 国立大学法人運営費交付金につきましては、国立大学が我が国の人材育成、学術研究の中核といたしまして六年間の中期目標、中期計画に沿って継続的、安定的に教育研究活動を実施するために、各法人の運営を支える基盤的経費として配賦しているものでございます。

 各法人におきましては、人件費、物件費を含めた渡し切りで措置された運営費交付金と授業料収入等の自己収入を合わせて教育研究活動を実施しているところでございます。

島津委員 研究をしていく上では非常に欠かせない交付金なわけですけれども、文部科学省が出している資料「「個人研究費」に関する資金の流れ」、これを見ますと、個人研究費は、国立大学法人運営費交付金、私立大学経常費補助、これが基盤的経費として大学などに交付、補助をされて、研究者に渡っています。その基盤的経費が今、年々減らされているのが現状です。

 基盤的経費が減っていることで大学の研究活動にどのような影響が出ていると文科省は見ているんでしょうか。

義本政府参考人 お答え申し上げます。

 運営費交付金等の減少によりまして、常勤教職員の人件費が圧迫されておりまして、特に若手教員の安定的なポストが減少するとともに、文部科学省が実施しました個人研究費等の実態に関するアンケートによりますれば、国立大学の教員につきまして、年間の個人研究費が五十万円未満の者が約六割を占めるというふうな結果も出ておりますなど、国立大学の教育研究の基盤の弱体化が懸念されているところでございます。

 また、若手教員の安定的なポストが減少する中で、先行きが不透明だということもありまして、博士号取得後のキャリアパスの不安定さ、不透明性等から、博士課程の入学者も減少しているところでございます。

島津委員 若手研究者の話についてはこの後もうちょっと聞きたいと思うんですけれども、今お答えあったように、年間の個人研究費の約六割が五十万円未満、これは年間ですから、月に直しますと四万円ちょっとなわけですよね。これでどんなことができるのか。私、いろいろお話を聞きましたら、研究どころか、研究室を維持するのが、それだけで手いっぱい、必要な専門書も満足に買えない、学会に行く交通費もままならない、いろいろなことが話されました。

 大臣、研究現場でのこうした状況というのは把握されているんでしょうか。

鶴保国務大臣 何度か、私も複数の国立大学に行かせていただきました。特に、九月に筑波大学、十月に京都大学、十月にはまた大阪大学、十一月に東京大学、そして先日は九州大学、幾つかの大学にも行かせていただき、ほぼ同じような悩みをしかるべき立場の方から聞かせていただいております。

島津委員 やはり現場では、運営費交付金が減らされて大変御苦労されているわけです。これは今、大臣もお認めになったわけです。見てきたということです。

 私、とりわけ重大だと思うのは、先ほども話がありました若手研究者のいる環境です。

 きょうの朝日新聞でも、「教員雇用に寒風」、こういう特集記事が出ていました。国立大学は、任期なしの教員の人件費はこの運営費交付金に頼っています。しかし、法人化された後は、先ほど見たように、運営費交付金は大きく削減されている。結果、若手教員の数も減少しているんです。かわりに、特定研究ごとに支給される科学研究費助成事業、いわゆる科研費、これなどで任期つき教員を雇うことになります。

 しかし、今、国立大学の四十歳未満の教員のうち、五年程度の任期つきという教員が六割を超えました。この人たちは、任期が切れた後、任期つきの職場を転々としたり、一般企業に就職する場合もあると言われています。

 先ほども議論がありましたけれども、重要だという人材が流出している。大臣、これは知の損失という状況ではありませんか。

鶴保国務大臣 委員御指摘のとおり、科学技術イノベーションの重要な担い手は若手研究者でありまして、その活躍が不可欠であると認識をしております。

 これら若手研究者については、流動的な環境のもと、多様な研究経験等を積み重ね、資質や能力の向上を図ることが重要である反面、近年、若手研究者が挑戦できる安定的なポストが減少いたしまして、自立的に研究を行う環境が十分に確保されていないということが指摘されております。

 このため、第五期科学技術基本計画でも、若手研究者の育成、活躍促進などの科学技術イノベーションの基盤的な力の強化を四本柱の一つに掲げて、キャリアパスを明確化するとともに、高い能力と意欲を最大限発揮できる環境を整備することにしております。また、四十歳未満の大学本務教員の数を一割増加させるとともに、将来的に我が国全体の大学本務教員に占める四十歳未満の教員の割合が三割以上となることを目指すとの目標を初めて設定させていただきました。

 また、本年度から、新たな取り組みといたしまして、先ほど来御指摘あります卓越研究員制度を創設もさせていただきました。

 今後とも、若手研究者の育成と活躍促進に向け、全力を尽くしていきたいと思います。

島津委員 今いろいろお答えがあったんですけれども、現実にはやはり研究や教育を支える基盤的経費とは言えないというのが事実としてあるわけです。

 そこで、文科省にお聞きしたいんですけれども、大学や研究現場を所管しているわけで、この運営費交付金が断続的に削減されている現状、そして、その結果として教員が減っている、この実態を文科省はどのように見ているんですか。

義本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、国立大学の法人化以降、運営費交付金がこの十二年間で千四百七十億円減少する中で、交付金により安定的に措置される教員が、例えば平成二十一年度においては五万七千九百四十人のところが、平成二十八年度においては五万六千百四十八人に減少するなどということもございますし、また、先ほど御指摘いただきましたように、任期つきのポストが若手のポストの中において六割を占めるというふうな環境でございます。

 文科省においては、特に、今後、教育研究を進めていく上において、教員が安定的に教育研究活動に専念できる環境づくりが大事でございまして、そのためには、教員の安定的な雇用を支える基盤的な経費の確保が極めて重要だというふうに認識しているところでございます。

 さらに、先ほどございましたように、若手の安定的な雇用のポストを確保していくという観点から、平成二十六年度からでございますけれども、例えば、シニア教員から若手の教員へポストを振りかえるというようなことを大学が取り組む場合においては、それを補助金として支援するような仕組みを設けまして、四十歳未満の若手教員の安定的なポストを確保するための取り組みを支援しているところでございます。

 今後とも、大学が人事給与システムの改革を進めていく中において、教員の、特に若手のポストの拡大を図っていくための取り組みを支援するとともに、国立大学運営費交付金の確保に努めてまいりたいと思います。

島津委員 文科省の方は運営費交付金の確保、増額を求めているということなんですけれども、十月三十一日に、全国の国立大学の理学部長ら三十四人が、「未来への投資」、こうタイトルをつけた声明を発表しました。その際の記者会見で、東大の理学系の研究科長はこう言っているんです。基礎研究費はほぼゼロに近い、大きな人減らしをやらざるを得ず、これまでと違う次元に入る危機感がある、このように述べていると報道されました。これまでと違う次元に入る危機感がある、非常に、控え目なんだけれども、研究者の中枢にある人たちがここまで言わざるを得ない実態があるわけです。

 大臣、これまでのやりとりの中で、教育現場の深刻な実態について、大臣も認識されているし、改めて認識もしてもらったと思うんですけれども、さきの国立大学の理学部長らの声明は、「基礎科学の推進のために、国立大学の運営費交付金は欠かせません。運営費交付金のこれ以上の削減は国の未来を危うくします。」と切実に訴えています。

 大臣、言うまでもありませんが、現場の研究者は、今だけでなく、この国の未来のことを深く考慮して訴えているわけです。こうした現場の声に応えて、基盤的経費の充実、具体的には運営費交付金の増額、これまで、予算を確保するという言葉はありましたけれども、今、文科省の方も要求しているように、運営費交付金を増額していく、そのために科学技術担当大臣として努力する、こういう決意をぜひお聞かせ願いたいと思うんですが、どうでしょう。

鶴保国務大臣 もとより、交付金の確保そして充実について、私たちも努力をせねばならないという認識でございます。

 持続的なイノベーションの創出のためには、大学がその役割を果たすことは必要であり、組織基盤の改革や財源の多様化といった取り組みを促すことが必要であります。

 したがいまして、運営費交付金のみならず、民間による多様な資金の獲得による大学等の財政基盤の強化や、大学発ベンチャーなどで得られた果実を基礎研究にも再投資していく資金の好循環の創出方策の検討なども視野に入れて、先ほど来御紹介を申し上げておりますが、政策イニシアチブを取りまとめ、しっかりとしたものをつくっていきたいというふうに考えております。

島津委員 やはり確保ということしかおっしゃらない。

 必要なのは運営費交付金の増額だということで、文科省も要求しているし、現場の大学の皆さんも要求している。増額ということでやっていただけるということをぜひ明言してください。

鶴保国務大臣 確保そして充実と申し上げました。そのことはしっかり御理解をいただきたいと思います。

島津委員 私は頭が余りよくありませんから、充実という中には増額ということも含まれるわけですか。

鶴保国務大臣 そのように理解していただいて結構だと思います。

島津委員 ぜひ、運営費交付金の増額に向けて、科学技術担当大臣の積極的なイニシアチブを発揮していただきたいと思うんです。

 最後に、少ないこの基盤的経費を埋めるために、産学連携による経済界、産業界からの寄附などもあります。しかし、これは特定の、しかも一部の研究者に限定されているわけです。多くの研究者が頼りにしているのが科研費、科学研究費助成事業です。

 これについてお聞きしたいんですけれども、文部科学省、この科研費の応募、採択件数、採択率の推移について、二〇一一年度と一六年度についてお示しください。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 科学研究費助成事業におけます二〇一一年度の応募件数は九万一千七百三十七件、採択件数は二万六千百七十件、新規採択率は二九%でございます。

 また、二〇一六年度におきましては、応募件数十万一千二百三十四件、採択件数二万六千六百七十六件、新規採択率二六%となってございます。

 応募件数が増加傾向にある中、新規採択率につきましては低下傾向にあるという現状でございます。

島津委員 この採択率ですけれども、国は目標を三〇%としています。

 文科省、この目標はなぜ三〇%なのか、また、それをどうやって実現するのかということについて、お考えをお聞かせください。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 科学研究費助成事業につきましては、全ての分野にわたって自由な学術研究を支援する我が国唯一の競争的資金でありまして、その特質を踏まえまして、研究課題を採択し、研究費の配分を行っているところでございます。

 現行の科学技術基本計画の政策目標であります三〇%は、研究課題の多様性を最大限尊重しつつ、独創性、先駆性といった観点からの質の担保などを考慮して設定されているものでございます。

 現在の採択率は二六%となっているところでございますが、今後、目標達成に向けまして、応募動向なども踏まえながら、必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

島津委員 やはりここでも予算の確保、増額が必要なわけです。

 採択率を上げるには、予算の枠を広げる、要するに予算をふやすのか、それとも応募を少なくするかということしかないわけですけれども、応募を制限するというのは制度の精神に反するわけですから、これは日本の科学の将来にとって大きな損失になるわけです。やはり予算をふやすということが必要なわけです。

 最後に、大臣、最後になるか、ちょっとあれですけれども、結局は、予算が不足しているわけです。

 私どもは、科研費のあり方については、必要とする研究者全員に行き渡らない競争的資金であります。また、三年から五年程度の短期で成果が求められるなどの問題点を抱えていると考えています。しかし、現実に、有効に活用されることには異存はありません。

 そこで、当面、この採択率三〇%を達成、これは閣議決定だと聞いています。大臣、最後に、この閣議決定、採択率三〇%を達成する、そのためには、今、文科省もありましたように、いろいろな施策もありますけれども、やはり予算をふやしていく、このことが必要だと思うんですけれども、閣議決定を実行するための決意をお聞かせください。

鶴保国務大臣 研究者の内在的動機に基づく学術研究や基礎研究というものは、幅広い分野でのイノベーション創出の可能性を有しておりまして、イノベーションの源泉として重要であると認識をしております。

 科研費の確保に向けて、第五期科学技術基本計画におきましても、充実強化を図ることと明記をさせていただいておりますので、しっかりと決意を持って取り組んでまいりたいと思います。

島津委員 今も、充実という言葉の中には増額というのが含まれるということで認識していますので、ぜひその立場で頑張っていただきたいと思うんです。

 全国の国立大学の理学部長ら三十四人の声明では、「若手研究者が生き生きと未知のものに挑むためのポストも場所も資金も失われつつあります。未来への投資として、基礎研究の推進とその基になる、運営費交付金と教員ポストの確保を訴えます。」こう結んでいます。

 この声に応えるために、二十一世紀の日本を支える知的基盤を守り、人類に貢献する科学政策となるように求めて、質問を終わります。

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