しまづ幸広(日本共産党元衆議院議員)-浜岡原発廃炉、静岡から政治を変えよう
国会質問

質問日:2016年 11月 30日 第192国会 内閣委員会

カジノ(IR)推進法についての質疑

会議全体の議事録はこちら

 

島津委員 日本共産党の島津幸広です。

 まず、本日の委員会ですが、会期延長を決めた昨日の本会議直後に理事懇談会が急遽開かれ、与野党合意のないまま、委員長の職権で立てられました。

 今国会では、TPP特別委員会での強行採決、年金カット法案の厚労委員会での強行採決など、異常な運営が非常に目に余ります。

 TPP特の異常事態の際、本委員会の理事懇談会で私が、内閣委員会ではこうしたことがないように求めたのに対して、委員長は、円満公正に努めると明確にお答えになりました。それに反して、このように強行し、しかも、実に乱暴な運営が行われています。

 最初に、委員長、そして職権での開催に同意した会派に厳しく抗議をいたします。

 カジノ賭博に対する国民の声は明確です。どの世論調査でもほとんど、反対が賛成をダブルスコアで上回っています。国民の皆さんにしっかり理解してもらわなければ、簡単に採決などできません。

 そして、法案の重要性です。ギャンブル、賭博の合法化という政策的大転換をやろうというわけですから、拙速な審議などもってのほかです。

 内閣調査室のこの資料に、推進議連の、カジノを含むIRの実現、実施に関する基本的な考え方が掲載されています。その中に、社会的関心事への対応という項目があり、その中には、暴力団組織の介入や犯罪の温床にならないか、あるいは、マネーロンダリングの防止、地域風俗環境悪化などはどうか、賭博依存症防止などへの考え方が書かれています。つまり、推進議連の皆さんも、こうした国民の不安、心配があると認めているわけです。

 こうした問題に一つ一つしっかりと応える徹底した審議が必要です。これらの心配に応える専門家や関係団体の意見を聞く必要があります。委員長、ぜひ、こうした皆さんを呼んで参考人質疑をやっていただきたいと思います。

秋元委員長 ただいまの件につきまして、理事会で協議いたします。

島津委員 ぜひやっていただきたいと思うんです。

 同時に、この法案は、法律案並びに政令案の立案を政府の特定複合観光施設区域整備推進本部に丸投げし、認可されるカジノの具体的な内容などは先送りされています。それでカジノの合法化を認めるというのは納得できません。ここは、政府の説明を聞く必要がどうしてもあります。

 二〇一四年六月の閣議決定、「日本再興戦略」改訂二〇一四において、「IR推進法案の状況やIRに関する国民的な議論を踏まえ、関係省庁において検討を進める。」とされました。資料では、これを受けて諸外国の調査をしていることも明らかになっています。こうした報告もしてもらわなければなりません。

 ですから、本案の審議の場に官房長官に出ていただいて審議をすることを求めます。さらに、観光を所管する国土交通大臣、犯罪対策などでは国家公安委員長、刑法に穴をあけるのですから法務大臣、ギャンブル依存症対策では厚労大臣。委員長、以上の大臣が出席をした上での質疑がどうしても必要です。取り計らいをぜひお願いいたします。

秋元委員長 ただいまの件につきましても、理事会で協議をさせていただきます。

島津委員 それでは、法案の質疑に入ります。

 まず、安倍内閣のもとでIRは成長戦略の目玉とされ、ギャンブル合法化という規制緩和がギャンブル市場という新しい市場を生み出し、そこから関連産業への経済的波及効果が発生し、大きな雇用、所得と誘致自治体の税収などが期待できるとしています。この経済波及効果について、まずお聞きいたします。

 アメリカのニューハンプシャー州がカジノの費用便益分析を行っています。これに基づいて、同州の下院議会がカジノ合法化法案を採決しています。この結果と理由というのは承知しているんでしょうか。

岩屋議員 島津委員にお答えをいたします。

 まず、先ほど通告をいただいたばかりでございまして、正直、米国のそれぞれの州の事情まで私ども精通しているわけではありませんが、急ぎ調べさせていただきましたところ、二〇一五年の春の段階においては、ニューハンプシャー議会ではカジノ合法化法案が否決をされたと承知しております。そのとき、上院は可決をしたけれども下院が一票差で否決をしたというふうに承知しております。

 先生御案内のように、米国は州ごとに、カジノを認めるか認めないか、違いがあるわけでございますが、ニューハンプシャー州がこのとき否決をした背景としては、隣のマサチューセッツ州に大型のIRというものが建設をされていて、果たしてニューハンプシャーにつくるIRが成功するのかしないのかということをめぐって、つまり、それが州の歳入に十分な貢献があるのかどうかということをめぐってさまざまな意見があって、この十年来ずっと議論が続いているというふうに承知をしております。

 米国はネバダに一番集積しているわけですが、東海岸でも、ペンシルベニア、ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネティカット州、メリーランド州、ロードアイランド州などでもIRが既に設置をされているということもあって、そこはあくまでも州の観光振興政策、経済政策上の判断なんですね。議会でも議論をされているんだというふうに承知をしております。

島津委員 通告がおくれたのは、こうした乱暴な運営なわけで、そこはぜひ含んで承知していただきたいと思うんです。私も本意ではありません。

 今お答えがありましたけれども、それも一つの理由ですけれども、アメリカでは、行政による政策決定に当たっては、費用便益分析、つまり、一定期間の便益性と費用額を算出し、費用のふえる分と便益のふえる分を比較して政策の分析、評価を行う手法、あるいは費用効果の分析、これは、便益を考慮せず、物的単位で測定された事業の効果、一単位当たりの費用額を算出していく、これを二つあわせて行政は行わなければならないとされています。

 ニューハンプシャー州が作成したカジノの費用便益分析の結果、これを受けて、ニューハンプシャー州の下院議会は今答弁あったように否決したわけですけれども、その理由の中に、カジノは既存のビジネスを共食いする、地元客に依存するカジノの収益は、地元のカジノ関連施設以外のレストラン、ホテル、会議場、娯楽施設、小売業への支出を減少させるので、カジノ客による増大効果は見られず、カジノ関連施設が地元企業を淘汰すれば、地域経済の利益循環を破壊し、地域経済を衰退させる、これが否決した理由の一つなんです。

 一般に、経済効果に関する試算には、カジノ消費の代替性、カジノで消費が生じた結果、他の消費が減少する可能性など、こういう経済的評価は無視されています。

 経済波及効果の測定は、産業連関表をベースとするので、社会的費用などのマイナス効果が測定結果に反映されていない。今述べたニューハンプシャー州の分析結果に照らしてみると、日本で行われている経済波及効果測定は、社会的規制の運営コストや健康保健局での治療コストといった、社会で発生する損失、社会的費用が考慮されていないという問題があります。

 このように、カジノ誘致論では、カジノ建設やカジノ運営に伴う消費額の推計や雇用創出効果、新規財源の創出などの予測計算は容易なんですけれども、社会的費用といった弊害については量的な検討が試みられないことから、経済的な意思決定を行う際の比較考量が不十分になりがちだという指摘があります。

 社会的費用としてのマイナス効果は、暴力団等の反社会的勢力の排除のための費用、マネーロンダリングを防止するためのシステム構築、維持のための費用、防犯のための費用、犯罪発生による直接の被害金額、犯罪発生後の行刑のための費用、風俗環境の悪化を防ぐための費用、青少年をギャンブルから遠ざけるための教育等に要する費用、問題ギャンブラーをカジノから排除するための費用、ギャンブル依存症に陥らないための啓発費用、ギャンブル依存症患者の治療費用などなど、こういうカジノ開設に伴って必然的に生じる社会的コストのほか、カジノの施設周辺からの人口流出、在来商店の流出など、予想される地域変動に伴うマイナスの効果を全て考慮しなければならないんです。

 果たして社会的にプラスになるのか。こうした信頼に足りる調査検討は行われることになるんでしょうか。

岩屋議員 先ほど、米国の状況については簡単に御紹介をさせていただきましたが、米国においては既に、多くの州においてカジノ並びにIRが認められていて、その間の競争も行われているという事情にあるんだろうと思います。

 我が国には、まだIRは誕生していないわけでございます。しかも、国が頭越しに地域を選定しようということではありませんで、あくまでも、地域の同意を得られた自治体の申請を受け、政府がそのプランを、観光振興効果、経済効果、雇用効果、地域振興効果等を総合的に判断をして、そのプランの中から厳選をして絞り込んでいくということになろうと思いますので、そこでしっかりとした調査を行えば、期待された効果を生ぜしめることができるというふうに私どもは考えております。

島津委員 カジノとカジノとの共存じゃなくて、カジノができたときに、既存の商店だとか既存の地域の経済だとか、こういうところが共食いされる。例えば、ホテル一つとってみても、現にホテルがあるわけで、IR型となりますと、ホテルだとかいろいろな施設がありますよね。そこがやはり、既存のところがあるところにまたIRをつくるわけですから、その共食いがあのネバダでは心配である。日本でも、こうしたことはやはり十分考慮しなきゃいけないということだと思うんです。

 これまで、さまざまな施設をつくって経済波及効果を期待したわけですけれども、それが本当に期待どおりだったのか。これをやはりきちんと見る必要があると思うんです。

 大阪の例を見てみます。

 大阪では、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを初めとして、さまざまな開発プロジェクトの経済波及効果が取り沙汰されてきました。

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、経済波及効果は五千九百億円でしたが、地元の商店街が潤ったという話は聞いたことがありません。

 あべのハルカスの初年度経済波及効果は、大阪府内で四千五百五十億円と計算されていましたが、このハルカスの麓では、閑古鳥が鳴いています。

 関西社会経済研究所の大阪湾大型施設投資の経済波及効果、ここは、シャープ堺工場の建設で四千五百二十億円、こういう計算をしました。シャープ堺工場は、新日本製鉄の堺製鉄所の跡地を利用して、世界最大規模の液晶パネルと太陽電池の工場として二〇〇九年に稼働しました。ところが、創立以来、巨額の赤字を垂れ流すということになり、稼働率が低下した結果、亀山工場とともにシャープの経営危機の原因となったため、中国の鴻海グループに売却されました。まさに四千五百二十億円は絵に描いた餅に終わったわけです。

 このように、経済波及効果とは計画段階での試算なのであって、それが実現できるかどうかは全く別の問題であることは明らかなんです。一定の経済効果が認められるからといって、そこに意思決定の根拠を求めてしまっては、判断を誤ることになります。

 そうした心配というのは当然予想されますが、この点ではどうなんでしょうか。

西村(康)議員 それぞれの地域、それぞれの企業は、一生懸命やって、収益を上げていこう、あるいは観光客をふやそう、あるいは地域経済の活力を維持しようと、それぞれ工夫をし、努力をしているんだろうと思います。

 ただ、全てが全てうまくいくわけではなくて、うまくいったところもあれば、もちろん失敗したところもある。もちろん、失敗したところは、経営の責任を問われたり、あるいは地域で選挙を通じてまた政権がかわったり、首長がかわったりということを通じながら、さまざまな努力、創意工夫が見られていくんだろうというふうに思います。

 私ども、今回のIR推進法では、一例としてシンガポールの例を先ほど来挙げさせていただいておりますけれども、観光客が六割もふえているということ、あるいは投資額も、五千億円もの投資、あるいは消費額も、海外からの旅行者の消費額も二兆円近くに、九〇%増、倍増近くになっている、こういったことを踏まえて、今回この法案を提出しているわけであります。

 趣旨は、やり方、手続は、地域が、例えば先ほど来議論になっていますように、地元の住民の同意を得て、あるいは議会の同意を得て、住民と一緒に、地域と一緒に計画をつくり、そしてホテルの数が、宿泊施設が足らないところをカバーする、あるいは地域の商店街と一体となって活性化をしていく、そうした絵姿を描きながら、手を挙げて申請してくる、そういったことを想定しておりますので、もちろん、地方議会の同意が得られないところは手を挙げられないような仕組みになるものというふうに想定もいたしております。

 ですから、そういったことを踏まえて、地域地域が創意工夫をして、地域の活性化に資するようなもので手を挙げてくる、そして、政府の方におかれては、それがしっかりと地域の経済の活性化に資するのか、あるいは一定の観光客誘致にうまくいくのか、そういった視点で基準もつくってもらい、そして認められたところが区域として認められるということでありますので、そういったことを含めて、これから、この推進法案の後に、一年以内を目途に政府の方でしっかりと基準をつくり、考え方を整理してもらいながら、日本の国全体として、観光客がふえる、あるいは地域の経済に資する、そして結果的に財政への貢献になっていく、財政改善に資するということを期待して、ぜひ、各地域が創意工夫して、いろいろな提案を出していただきたいというふうに期待をしているところであります。

島津委員 外国の例を出して、観光客が、集客がふえているということで、うまくいっているということでしたけれども、本当にそうなのか。

 それでは、アメリカにおけるIR型カジノのビジネスについてお聞きしたいと思うんです。

 ニュージャージー州アトランティックシティーのカジノ経済の最近の状況というのは御存じなんでしょうか。

小沢(鋭)議員 委員がおっしゃられるのは、恐らく、アトランティックシティーにおいていわゆるカジノ経営四社が倒産をしている、こういう話だろうと思います。

 しかし、これは、アトランティックシティーの場合は、先ほども答弁の中で岩屋委員が申し上げましたが、IR施設が乱立をしておりまして、四十の施設ができたということで、いわゆる競争的結果によってそういったことが起こっているというふうに承知をしておりまして、アメリカ全土で見てみれば、しっかりと、IR型のビジネスはリーマン・ショック以降、収益は増大している、これが私どもの基本的な認識でございます。

島津委員 今お答えがあったように、アメリカでは長年、ネバダ州のみがカジノが認められていたわけです。その中で、ラスベガスの繁栄がカジノの成功例としてモデルとされてきたわけです。ところが、一九七〇年代の不況で地域経済の衰退や税収減に苦しんだ各州政府などが、カジノによって独占された利益の獲得を目指してカジノの合法化に動き出したわけです。ニュージャージー州が真っ先に合法化に踏み切り、アトランティックシティーにカジノ街を建設したわけです。

 今お答えがあったように、倒産が今進んでいる。ここは、従来のカジノ依存から、いわゆるIR型、エンターテインメント施設、会議施設、高級レストラン、ショッピングモール、こういうものを備えたIR型の建設に切りかえていく、これが進められていたわけです。ところがそれが、例えば、IR型カジノの期待の星として、二十四億ドルもの資金を投じて二〇一二年春に開設した「レベル」、このカジノ、IR施設が開業後わずか二年半で閉鎖に追い込まれる。また、次期米大統領のドナルド・トランプ氏も運営しているカジノも含めて、二〇一四年に入ってからのアトランティックシティーでは五つのカジノが経営破綻の憂き目に遭っているんです。今いろいろ理由を、乱立だという話がありましたけれども、結局、アメリカでもIR型カジノビジネスは崩壊しているという指摘もあるんです。

 世界のカジノ産業は、日本で導入論が本格化した二〇一三年ころから斜陽産業と言われてきているんです。その状況は、二〇一六年にかけていよいよ抜き差しならない状況になっています。

 マカオのカジノは、二〇〇六年に米国のラスベガスを抜いて世界一の売り上げとなりました。ところが、マカオの売上高はここ数年、毎年前年割れになっているんです。カジノ不振はもはや慢性的になっている。その結果、マカオの税収も激減しているんです。カジノ収入が激減した最大の理由は、中国経済の成長の鈍化と、中国の国内で進行している反腐敗運動なんです。これが中国の富裕層の出足に直接影響しているわけです。こうした中で、マカオ資本も特別行政区政府もカジノ依存から脱却する方途を模索しているんですが、前途多難だということで指摘されています。

 先ほど話が出たシンガポール、ここも二〇一〇年からカジノが解禁されました。シンガポールでは、日本のカジノの手本とされてきましたけれども、旅行者の大幅な減少に伴って売り上げの減少に見舞われています。シンガポールのカジノ二社の二〇一五年度一月から十二月のカジノ部門の売上高は、前年同期比で一四%減になっているんです。

 一方、外国人専用カジノが十六カ所ある韓国のカジノ業界も、中国人観光客減少で存亡の危機に直面と指摘されるような状態なんです。

 アジア各国のカジノ施設が軒並み総崩れというような状況のもとで、日本に新たな大規模カジノ施設を誘致しようなどというのは無謀な行為と言わざるを得ません。日本でカジノを導入する場合、成否は中国富裕層の呼び込みにかかっているとされてきましたが、カジノの導入、この大前提が既に破綻しつつあるんじゃありませんか。これはどうでしょう。

小沢(鋭)議員 今先生の御指摘で、幾つかちょっと論点を整理してみたいと思うんです。

 まず、アメリカの話がございました。

 いわゆるIR型のビジネスはアメリカでも衰退しているのではないか、こういうお話がございました。ネバダ州ラスベガスの話がありましたけれども、私ども、ラスベガスは収益は拡大していて全く問題はないというふうに承知をしています。

 御承知のように、ラスベガスのIR型ビジネスは、カジノの収益は全体の約四割でありまして、ショービジネスだとかショッピングだとか、あるいはまたいろいろなスポーツ施設だとか、それからあと国際展示場、そういった形に展開していて、極めてある意味では健全になっているというふうに私ども承知しています。

 あと、アジアの話がございました。アジアの話の中でマカオのお話がございました。

 先生御指摘の、中国政策によってそういったいわゆるマカオのVIPのお客さんの勘定がかなり減ったという話は、私どもも聞いております。ただ、全体としては、今お話もありましたけれども、マカオ政府の方は、いわゆる一般観光客の方に相当政策をシフトしておりまして、観光客は相当ふえているということでございまして、いわゆる一般大衆の観光客はふえている、こういうふうに私どもは承知をしています。極めて健全なレベルになってきているのではないかというふうに承知をしております。

 それから、もっと大前提で考えますと、ラスベガスであるとかマカオであるとかは、そういった施設が全くないときに比べれば、はるかに地域の経済は活況になっているわけでありまして、そういった中にあって、一時的にいろいろな景気の問題もあるだろうし、あるいはまた、今御指摘の中国政府の反腐敗運動といったような特殊な政策もあるでしょうし、そういったことはあろうかと思いますが、全体としてIRビジネスがだめになっていく、そういうことは私ども全く考えておりませんし、特に、我が国の場合は初めてのケースになるわけでありますから、過当競争ということは全くありませんので、ビジネスとしては私は極めて有望だと依然として思っております。

島津委員 ラスベガスはともかく、アメリカのほかのところでは、やはりいろいろな衰退の状況があらわれているわけですし、いわゆるたくさんお金を使うVIPの中国の富裕層等、そういうところが減って一般がふえてとなりますと、一般のところからお金を巻き上げるということですから、健全と言えるかどうかというのはまた意見が分かれるところなんですけれども、本当にカジノで地方再生ができるのかということをちょっと考えたいと思うんです。

 大阪がやはりかなり熱心にやっているんですけれども、大阪にカジノをという声が上がって注目されています。

 大阪での地域経済や地域開発を振り返ってみますと、太閤秀吉がこしらえた天下の台所、こういう言葉は昭和十年ごろまではまさにそのとおりだったようです。しかし、戦後になると、絶えず東京との比較において大阪経済の地盤沈下が叫ばれるようになりました。高度成長期には、重化学工業こそが大阪経済の救世主となるんだとばかりに、堺や泉北に臨海コンビナートが建設されました。

 一九七〇年代以降になると今度は、情報産業やサービス産業の強化が叫ばれました。東京や名古屋と違って大阪には広い土地が残されていません。そこで、大阪湾を埋め立てて工業用地が造成され、埋立地のおかげで、日本で最も面積が小さい都府県から抜け出すことができたわけでした。

 ところが、土地はどんどん造成できたのに、そこに入る産業がなかなかないという現実に大阪経済は直面します。大阪のオリンピック誘致にも失敗しました。埋立地である夢洲にはこれまで二千八百億円もの造成費用がつぎ込まれています。ところが、三百九十ヘクタールの広大な敷地に夢洲コンテナターミナルや横浜冷凍の夢洲物流センターが設けられましたが、今なお二百五十ヘクタール以上もの未利用地が残されている始末です。ここで出てきたのが万博とセットでのカジノ誘致、IR構想なわけです。

 IRカジノビジネスは、先ほど提案者からもありますように、商業施設、宿泊施設への集客手段としてカジノを誘致するとの開発計画です。

 ちなみに、マリーナ・ベイ・サンズ、シンガポール、このショッピングゾーンは七万五千平米なんです。ところが、既にこのシンガポールの施設よりもはるかに広い商業地域が大阪にはあるわけです。二万平米以上の商業施設は、大阪市内には四十カ所もあります。この上、夢洲にカジノを利用した商業施設を立地しようというのですから、ただでさえ飽和状態にある大阪地区では、カジノ誘致派の皆さんがIR型のカジノの魅力をあれこれ訴えたとしても、商業施設に限って見れば、多くの競争相手が歴然として存在しているわけです。

 夢洲のIR型カジノ施設が飽和状態にある商業施設と競争していくには、カジノの収益をてこに何がしかの特権を商業施設に与える営業戦略を講じない限り、経営不振に見舞われるのは必定ではないでしょうか。

 何がしかの特権を付加するビジネスモデルは、大阪での商業戦争に一層の混乱を持ち込み、今度は既存の商業施設に経営上の諸困難をもたらす、こういうことを心配しているんですけれども、こういうことというのはないんでしょうか。

松浪議員 私も大阪出身でありまして、今の問題にお答えをさせていただきますと、大阪の場合は、委員御指摘のとおり、非常にいい立地がある。大阪がどうして沈んできたのかということは、まだ大阪に決まったわけではないので、ここから申し上げるのは不適当かもしれませんけれども、とにかく、地方再生というのは地方の創意工夫によるものであって、今回はそれの手挙げ方式ですから、大阪が要らなければ要らないで済むわけです。

 特に、大阪の場合は、今、観光客についても、民泊でも足りないというような状況があって、そこにコンベンション機能とか会議の機能とかを付加したものというのは、実は東京でも、コンベンションをすると、ここでコンベンションをしたけれどもホテルまでは遠過ぎるんだというような問題がある中で、日本で最初に相乗効果を持ったIR施設をつくろうということは、これは大阪府民の中でも、私は、ふだんの感覚で、非常に皆さんの理解を得られていることかなというふうに思います。

 その上で申し上げますけれども、他の国を見ても、ここに、NHKの放送文化研究所が、日本人が好きな国、地域というものを全国で三千六百人を調べている結果では、一位オーストラリア、二位イタリア、三位スイスから十位のスペインに至るまで、これらの国でこうしたカジノ施設と共存をしていない国というのは一つもないわけでありまして、我が国は、先ほどの小沢委員の答弁にもありましたように、こうしたものがまだ一つもない、競合することがないわけですから、我々は、これは、地方が求める地方活性化の、地方がやりたいということの選択肢を新たに与えるということは大変効果の高いものだと思います。

 これによって地域のサービス業全体を活性化させることができれば、これの効果は我々はやはり大きいものだと考えます。

島津委員 社会的なマイナスの面なんかも十分加味しているとは思えませんし、また、アメリカなどの例では、カジノを、IR型をつくったのはいいんだけれども、周辺の商業施設の共存で、どちらかといえばその周辺のところが寂れていく、そして、カジノも集客が少なくなり、結局は撤退する、こういうことがあるわけですから、カジノが来れば万々歳だ、そこまでは言っていないでしょうけれども、非常に幻想を振りまくような思いだというふうに思うんです。

 大阪だけじゃなくて、カジノ誘致に名乗りを上げた自治体のうち、例えば長崎県のハウステンボス、あるいは宮崎県のシーガイアなど、少なくない自治体のプランは、リゾート開発に失敗した施設に再活用のチャンスがめぐってきた、こういうものなんです。

 疲弊した地域経済を立て直したい、この願いはわかります。しかし、その対策がなぜカジノなのか。私は幻想にしかすぎないと思うんです。ここはやはり、賛否あるわけですから、しっかり現地でも専門家の意見も聞いて十分に議論をしなきゃいけないと思うんです。

 次に、マネーロンダリングについてお聞きしたいと思うんです。

 マカオやシンガポールのカジノビジネスの成長の背景には、中国人VIP客のマネーロンダリングがあるわけです。この対策について、日本は、このマネーロンダリング、非常に未熟だというふうに言われているわけです。本当に対策をとれるんでしょうか。

中村政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、犯罪収益移転防止法に基づきまして、特定事業者による取引時確認等の義務の履行を徹底することにより、マネーロンダリングの防止を図るとともに、届けられた疑わしい取引に関する情報を集約、整理、分析いたしまして、都道府県警察を初めとした捜査機関等に提供をしております。

 都道府県警察等におきましては、その情報を活用することなどにより、マネーロンダリング事件を検挙するとともに、犯罪により得た収益を没収、追徴して、その剥奪に努めているところでございます。

 平成二十七年中の警察によるマネーロンダリング事犯の検挙件数は、組織的犯罪処罰法に係るものが三百八十一件、麻薬特例法に係るものが八件の計三百八十九件となっておりまして、この数字は年々検挙件数として増加をいたしておりまして、警察としては、捜査のノウハウを蓄積しているというふうに認識をしております。

 仮にカジノが合法化された場合におきましては、マネーロンダリング対策に関する国際基準でありますところのFATF勧告に基づいて、所要の措置を講ずることが必要だと認識はしておりますけれども、その場合には、警察といたしましては、マネーロンダリング事犯やその前提犯罪を検挙するなどして、不正な資金の移転防止、そして取り締まりにしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

島津委員 マネーロンダリングあるいはテロ資金対策を目的に設立された多国間枠組み、FATF、ここは、二〇一四年六月に日本政府に対して、必要な法整備がおくれているとして早期の対応を求める声明を発表しています。ですから、今答えがありましたけれども、ここはしっかりやる必要があると思うんです。私は非常に心配なんです。

 時間がありませんから次の質問に行くんですけれども、ギャンブルはコントロールできるかということなんです。

 実は、ラスベガスを管轄するアメリカ・ネバダ州のゲーミング管理局が、ギャンブルはコントロールできるかについて見解を発表しています。きょう、これを紹介しようと思ったんですが、もう時間がありませんので、これは沖縄県の二〇〇八年度カジノ・エンターテイメント検討事業調査報告書で報告されていますので、ぜひ見ていただきたいんですけれども、ここでは、結論からいえば、なかなか依存症をコントロールはできないと。そして、WHOでは、やはり依存症にならない防止対策というのは、要するに、カジノあるいはギャンブルに触れさせないことだ、こういうことを言っているわけです。

 ここで聞きたいんですけれども、日本のギャンブル依存症、これは成人人口のどれほどなんでしょうか。

堀江政府参考人 障害保健福祉部長でございます。お答え申し上げます。

 平成二十五年度に厚生労働科学研究を行ってございます。そこでは、成人の男女約四千人余りに御自分で記入していただくアンケート調査を行っておりまして、ギャンブル依存の疑いのある人は、成人全体の四・八%というふうにまとめてございます。これは、スクリーニングといいますか、御自分で書いていただいた、ある意味スクリーニングでございまして、また、患者というものではございません。

 そうしたこともございますので、現在、本年度、別の研究におきまして、医師による診断、調査員による面接なども含めまして、より高い精度が期待できる調査を実施しているということでございます。

島津委員 四・八%というのは非常に衝撃的な数字なんです。オーストラリアあるいはニュージーランド、フランス、スウェーデン、韓国や香港と比べてみても、諸外国では一%前後です。日本の異常さが際立つ結果なわけです。

 日本の病的ギャンブラー、依存症、患者の比率は、国際的なカジノが存在する国や地域と比較しても多いわけですけれども、この要因となっているのがパチンコ、パチスロです。六種類の公営賭博の売り上げの合計は約六兆円ですが、これに対して、パチンコ、パチスロの売り上げはその三倍の約十九兆円。

 病的ばくち患者をめぐっては、個々人やその周りの親しい人々の問題だけではありません。パチンコ駐車場にとめた車内への乳幼児の放置の事件、賭博が原因となる事故、事件、トラブルが後を絶ちません。最近では、プロ野球選手による野球賭博事件、バドミントン選手による闇カジノ事件が起き、スポーツ界にもギャンブル依存症が広がっています。こういうことが明らかになっていて、日本の社会の深刻な問題なんです。

 とりわけ心配なのは、青少年への影響なんです。これは青少年にどんな悪影響を与えるのか、こういう心配は統計などで科学的に裏づけることは困難なんですけれども、脱法ハーブや脱法ドラッグだけでなく、たばこやゲーム機、スマートフォンへの依存を含め、依存症という問題は青少年に広範な影響を及ぼしています。こうした問題に解決を見ないまま、さらに賭博を合法化するというようでは、真面目にこつこつと課題に取り組もうという教育は全くの絵そらごとになってしまうのか、こう心配しているわけです。

 賭博をする大人の姿を見て育つ青少年への影響ははかり知れません。IR型のカジノでは、子供が遊べるレクリエーション施設と一体です。家族で出かける先に賭博場がある。子供たちが賭博に対する抵抗感を喪失したまま成長することになりかねません。こういう対策というのは考えているんでしょうか。

西村(康)議員 ギャンブル依存症対策、あるいは青少年の健全な育成、こうしたことについて、第十条に、私ども、必要な事項を講ずるべきだということで、措置を講ずることという規定を置いております。

 御指摘のとおり、ギャンブル依存症、厚労省の調査もございますし、それから、パチンコ、スロットなども、風俗営業適正化法にのっとって、健全な遊技として発展をしてもらいたいというふうに思いますけれども、そうしたことを含めて、今回、このカジノ法案を契機として、公営ギャンブル、公営競技も含めて、ぜひ総合的なそうした対策を講ずるべきだというふうに考えております。

 今回、入場料あるいは納付金という形で一定の資金を国や地方に納めてもらうことになりますので、そういった資金を活用しながら、公営ギャンブルも含めて、ぜひ幅広くギャンブル依存症対策を講じてもらいたいと思いますし、青少年の健全な育成にもそうした資金が使われることを期待したいというふうに思います。

島津委員 時間がありませんから終わりますけれども、期待したいということですけれども、今の答弁でも具体的にどういうことをやるかというのは見えてきません。

 カジノは賭博です。賭博は必ず敗者、損する人がいるわけです。カジノの場合は、その金額がパチンコなどと比べて桁違いに膨らむわけです。他人の不幸の上にみずからの幸福を築こうというものです。新たな価値を生み出すものでもありません。地域の経済が疲弊こんぱいし、振興が求められているときに、逆行するものです。依存症など、日本社会に与えるマイナス影響ははかり知れません。賭博を経済対策の目玉にする、こんな経済学の常道からも逸脱した法案は断じて認めるわけにはいきません。国民の多数も反対しています。

 きょう質問できなかった問題もまだまだあります。また、きょうの答弁を聞いても、やはり関係大臣の説明が必要だと痛感しました。関係者の意見聴取も必要です。官房長官以下五人の関係大臣の出席での質疑、参考人質疑の開催を改めて求めるとともに、引き続き徹底審議するよう重ねて求め、質問を終わります。

質問の映像へのリンク

https://youtu.be/O_OVP90J6DI

© 2004 - 2024 島津幸広