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○島津委員 日本共産党の島津幸広です。
今回提出されている両法案は、その趣旨説明で、宇宙基本法の基本理念にのっとりとされています。そこで、まず、宇宙基本法と宇宙基本計画についてお聞きします。
宇宙基本法に基づき、宇宙基本計画が第三次にわたって立てられています。この宇宙計画を見てみますと、かなり変遷しているのがわかります。例えば、昨年一月に発表された第三次基本計画。この計画には、安全保障という言葉が至るところで出てきます。これまでも使われていたんですけれども、非常に多くなっている。
例えば、見出しだけを見てみましても、第一章の(二)で「宇宙空間の安全保障上の重要性の増大」、あるいは第二章の(一)でも「宇宙安全保障の確保」、第四章、具体的アプローチの中でも「宇宙安全保障の確保」とあり、ここでは「宇宙協力を通じた日米同盟等の強化」とまで踏み込んでいます。気になるので数えてみました。安全保障という言葉は五十五回出てきました。
何でこんなに繰り返されているんでしょう。大臣、どうですか。
○鶴保国務大臣 急速な技術革新等により宇宙活動国が増加をいたしまして、宇宙空間はかつての米ソ二極構造から多極構造へと転換をいたしました。その結果、宇宙空間におけるパワーバランスに変化が生じたこと、あるいは、宇宙デブリがふえまして、対衛星攻撃の脅威も増大するなど、宇宙空間の安定利用を妨げるリスクが深刻化したことなどが実質的な理由として挙げられるかと思います。
また、平成二十五年十二月には国家安全保障戦略、NSSが策定をされまして、これに応じた新たな宇宙政策が必要となるなど、宇宙空間の安全保障上の重要性も増大したことなども挙げられるというふうに思っております。
いずれにいたしましても、五十五回の安全保障について特段の意味があるというふうに私は考えておりません。
○島津委員 特段の意味がない割にはたくさん出てくるんですけれども、宇宙というのはそもそも安全保障のために存在する空間なのか、このことを私はまず問題提起しておきたいと思うんです。
その上でお聞きしますけれども、宇宙基本法が二〇〇八年に制定されました。そもそも、宇宙基本法とは何のためにつくられたんでしょうか。これは大臣。
○鶴保国務大臣 先ほど佐藤委員の御説明にもありましたが、平成二十年五月に宇宙基本法が制定されました当時の背景といたしましては、人工衛星を利用した位置情報サービス等や、宇宙用に開発された技術、素材等がさまざまな分野に活用されるなど、宇宙開発利用は我々の身近な生活においても重要な役割を果たすようになってまいりました。
また、我が国をめぐる安全保障環境の変化や、中国を初めとするアジアや中東など諸外国における積極的な宇宙開発利用の推進などの国際情勢の変化もあり、宇宙開発利用の重要性はさらに増大していることなどが挙げられるというふうに思います。
このような背景を踏まえ、我々、宇宙開発利用を国家戦略として位置づけ、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、これを総合的かつ計画的に推進し、国民生活の向上及び経済社会の発展に寄与するとともに、世界の平和、人類の福祉の向上に貢献するよう制定されたものと理解をしております。
○島津委員 今お話がありました二〇〇八年五月に、この基本法に基づいて国会の審議があったんですけれども、内閣委員会で我が党の吉井英勝衆議院議員がこの趣旨について質問した際に、こういう答弁だったんです。
本法案では、宇宙開発利用を我が国の安全保障に資するように行うものと位置づけており、憲法の平和主義の理念にのっとり、専守防衛の範囲内で防衛目的の宇宙開発利用は行うことができるのが本起草案の趣旨だ、こういう答弁がありました。
それでは、ここで言っていた安全保障に資する宇宙開発、これは一体どういうものなんでしょうか。
○鶴保国務大臣 委員御指摘のとおり、平成二十八年四月に閣議決定をいたしました宇宙基本計画においては、安全保障に資する宇宙開発として、我が国における測位、通信、情報収集等のための宇宙システムを強化することとさせていただいております。
具体的には、準天頂衛星の七基体制の確立による持続測位の実現、Xバンド防衛衛星通信網の拡充による抗堪性、秘匿性の高い衛星通信網等の整備等を例示させていただいておるところであります。
○島津委員 一九六九年、国会で、宇宙の開発利用は平和利用に限るとした特別決議が上げられました。日本のこれまでの宇宙科学や開発の歴史を見てみますと、この決議がこれからの日本の宇宙開発にとっても非常に重要だと思っています。
二〇〇八年の宇宙基本法制定の際にも議論されました。我が党の吉井議員が、改めて、軍事のための宇宙開発はしないというのが政府の考え方ということで理解しておいていいか、こういう質問に対して、当時の町村官房長官は、平和の目的に限りというのは非軍事を意味する、こういう旨の答弁をしています。
これは再度確認しておきたいんですけれども、この一九六九年の国会決議というのは今日でも生きているんでしょうか、大臣。
○鶴保国務大臣 宇宙開発利用につきましては、一九六九年に、衆議院による宇宙の平和利用決議において、宇宙の開発及び利用は平和の目的に限り行うものとすると決議されております。
二〇〇八年に議員立法により制定された宇宙基本法では、安全保障に資するよう行うものと宇宙開発利用を位置づけておりまして、憲法の平和主義の理念にのっとり、専守防衛の範囲内で防衛目的での宇宙開発利用は行える趣旨であると承知をしております。
繰り返しになりますが、憲法の平和主義の理念にのっとった上、専守防衛の範囲内で我が国の防衛のために宇宙開発利用を行うことは、決議の文言及びその趣旨に反するものではないと考えております。
○島津委員 今の答弁にもありましたように、非軍事ということだったんですけれども、いろいろ考え方が発展して、変わってきているというふうな答弁でした。
しかし、私は、国会決議というのは非常に重いものだと思うんです。日本は、この国会決議の精神に立って、つまり、日本国憲法の平和原則に立った科学技術の発展、これがこれまであったわけです。だから、この立場で従来は、日本は、スパイ衛星や軍事専用通信への利用も含めて、宇宙の軍事利用を禁止してきたわけです。
同時に、日本の宇宙開発は関連技術の発展も加速させてきました。世界的にもすぐれた町工場の旋盤は精度の高いものをつくり上げる、また、職人わざなどの加工技術も発展させてきました。これらは日本の宇宙開発における国際貢献とともに、平和原則に立った戦後の日本経済の発展のいい例だと思うんです。
だから、こうした歴史的にも確立された基本ライン、平和原則に立った科学技術の発展、このことは、立場の違い、党派を超えて今後も守らなきゃいけないものと思うんですけれども、大臣、宇宙担当大臣としての所感はどうでしょう。
○鶴保国務大臣 先ほど来委員御指摘をいただきましたとおり、平和利用決議における平和の目的に限りの解釈は、当時の科学技術庁長官の答弁によりますと、非軍事とされております。
一方、宇宙開発利用関係の諸条約では、平和的利用は、非軍事ではなく非侵略と解されることも多く、防衛目的での利用を行うことが平和的利用の文言の解釈として許容されないものとまでは考えられません。
また、平和利用決議が採択された当時に比べ、宇宙開発利用の状況は大きく変わっておりまして、我々の日常生活の中でも宇宙の利活用は広く行われております。このように、宇宙開発利用が進展する中においても、安全保障に資する宇宙利用を一切認めないとするのが決議の趣旨とは考えにくいというふうに理解をしております。
憲法の平和主義の理念にのっとり、専守防衛の範囲内で我が国の防衛のために宇宙開発利用を行うことは、決議の文言及びその趣旨に反するものではないというふうに考えております。
○島津委員 非軍事から、そういうところから発展しているわけですけれども、非常に解釈が変わってきている。いろいろ理由は挙げましたけれども、今、安倍政権のもとで、憲法解釈も変えられるという非常に乱暴なやり方がやられているわけですけれども、それと通じるものがあるというふうに、今答弁を聞いて感じました。
今答弁があったように、また、冒頭見てきたように、宇宙基本法とその後の基本計画は、宇宙の軍事利用の拡大、宇宙の軍事化路線がより鮮明に打ち出されている、こういうものになっているというふうに言わざるを得ません。
朝日新聞は、当時、この宇宙基本計画、パブコメで発表された素案について社説を出しました。宇宙の軍事化路線がより明確に打ち出されている。この社説では、「安保色が強すぎる」という表題で、中を読みますと、防衛白書と見間違うばかりとも書いています。
そこで、宇宙活動法についてお聞きします。
この法案は、ロケットに積む衛星や管理する衛星の利用について許認可によって規制するものだが、その許可の基準は、打ち上げは第六条、衛星管理は二十二条において、いずれも理念に即したものであることを規定しています。
そこで、お聞きしたいんですけれども、海外で、軍事的な政府ミッション、軍事利用の衛星の打ち上げなどを商用ロケットで打ち上げるケースがあります。仮に我が国の業者、例えば大企業、これが国際的な打ち上げの市場に参入した、こういう場合、我が国の安全保障に資するなら、このような他国の軍事ミッションを我が国の企業が受注することが可能となるのかどうか。外国政府の軍事利用の衛星が我が国の安全保障にかなうなら、このスキームで打ち上げが許可されることになるんじゃないですか。
○鶴保国務大臣 委員御指摘のとおり、本法律案では、宇宙基本法の基本理念に即したものであることが、搭載される人工衛星の利用の目的及び方法として許可の基準とさせていただいております。
したがいまして、この基本理念に即したもの、あるいは宇宙関連諸条約の的確かつ円滑な実施及び公共の安全の確保に支障を及ぼすおそれがないことという厳しい要件のもと、これらを満たすものについてのみ許可をさせていただくという方針で臨みたいというふうに考えております。
○島津委員 結局、法律上は、軍事利用のための衛星を積んだ商用ロケットの打ち上げや衛星管理が可能になるというわけです。
次に、リモセン法案について、関連して幾つかお聞きしたいと思います。
リモートセンシング衛星は、可視光や赤外線あるいは電波などで地球を上空から観測する地球観測衛星とも呼ばれています。政府直属の情報機関、内閣情報調査室、内閣衛星情報センターで運用されている情報収集衛星もこのリモートセンシング衛星です。
これまで日本は、この情報収集衛星を何基打ち上げているんでしょうか。
○塩川政府参考人 お答えします。
情報収集衛星につきましては、平成十五年十一月の光学衛星一基、レーダー衛星一基の打ち上げ失敗を含めまして、これまでに光学衛星を八基、レーダー衛星を六基打ち上げております。
○島津委員 この打ち上げの目的は何でしょう。
○塩川政府参考人 お答えします。
情報収集衛星は、平成十年十二月の閣議決定におきまして、外交、防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応等の危機管理のために必要な情報の収集を行うことを目的とし、その導入が決定されたものであります。
この閣議決定に基づきまして、現在、内閣衛星情報センターでは、我が国や国民の安全を確保するため、衛星による必要な情報収集に努めているところであります。
○島津委員 大規模災害等への対応の危機管理、こういうことも言われたんですけれども、しかし、その撮影画像が東日本大震災のときには非公開でした。情報収集の衛星が解像度を上げるためには、地上から百五十から二百五十キロメートルという低高度で飛行することが必要です。そうすると、大気が厚いためにすぐ高度が下がってしまうことから、頻繁に高度を修正する必要があります。また、地上で何か事件などあると、直ちにその方向に向きを変えなきゃいけません。そのために、衛星に搭載した燃料を短時間で使い切る、こういう寿命が短い特徴を持っている。ですから、大体二年から三年、これが寿命だと言われているんです。
先ほどお話がありましたように、日本でも情報収集衛星を次々と打ち上げている。これまで、この情報収集衛星にはどのぐらいお金がかかっているんでしょうか。開発から打ち上げまでのこれまでの累計金額を教えていただけますか。
○塩川政府参考人 お答えします。
情報収集衛星の開発、打ち上げ関係の予算は、これまでのところ、累計九千二百四十二億円であります。
○島津委員 やはり、次々と打ち上げなきゃいけないということですから、お金も非常にかかっている。しかし、なかなか、それが災害等の危機管理で使われているかというと疑問もあるわけです。
安倍政権が昨年十二月に策定した第三次宇宙基本計画工程表では、この情報収集衛星の体制を変更することが盛り込まれています。どのような体制にするんでしょうか。
○塩川政府参考人 お答えします。
北朝鮮情勢を初めとする厳しい国際情勢の中での外交、防衛等の安全保障や、大規模災害等への対応等の危機管理のため、衛星情報はますます重要になっているものと認識しております。
このような情勢に鑑みまして、平成二十七年十二月に宇宙開発戦略本部で決定された宇宙基本計画工程表においては、合計十基の整備計画について、今後、財源確保策をあわせて検討することとされております。
内閣衛星情報センターといたしましては、宇宙基本計画工程表を踏まえまして、情報収集衛星の体制の継続的強化に向け、引き続き、必要な人員、予算の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
○島津委員 情報収集衛星というのは、可視光で地表の写真を撮る光学衛星と、電波で夜間や雲の多いときでも情報が得られるレーダー衛星の二基が一セットで運用されているわけです。しかし、一日に一回しか同じ場所を観測できないので、今、二セット四基で運営されているわけです。それを、今お答えがあったように十基にするというわけです。
これからまた、これまでも九千億円以上使って、さらに多額の税金を投入してつくり上げる、こういう情報収集衛星の体制なんですけれども、先ほども述べましたように、その撮影画像、大震災のときでも非公開。国民にはどう役に立っているかわからない。そして、その収集した情報についても、開示されるのか、されていない。外交、防衛等の安全保障に活用される。軍事スパイ衛星じゃないか。こういう指摘もいろいろなところから上がっているわけです。平和と国民生活を破壊する衛星の軍事利用、きっぱりやめるべきじゃないんでしょうか。
続いて、準天頂衛星についてもお聞きします。
第三次宇宙基本計画では、日本版GPS、全地球測位システムと呼ばれる準天頂衛星を、現在の一基から前倒しして七基体制が掲げられました。先ほども議論があったところです。
この問題は、参議院の予算委員会で我が党の井上哲士議員も取り上げましたが、日米ガイドライン防衛協力指針に、新たに宇宙に関する協力が盛り込まれました。そして、二〇一三年から開始された宇宙に関する包括的日米対話で、日本の準天頂衛星システムの協力の促進が日米で議論されています。そのもとで、準天頂衛星整備前倒しが行われ、七基体制を目指して当面四基にふやす。これは二千億円強が見込まれているわけです。
大臣、この準天頂衛星、アメリカの要求に沿って、米軍と協力する、軍事利用するということじゃありませんよね。
○鶴保国務大臣 七基体制の確立についての御趣旨でのお尋ねだろうと思いますが、米国GPSと同じ信号を出すことから、米国GPSと連携した衛星測位システムの抗堪性強化につながるということが一番大きな理由だと思います。またあるいは、米国GPSに依存しない我が国独自の持続測位を可能とするという二つの側面から、我が国の安全保障強化には資するものと考えております。
具体的な安全保障上の有効活用の中身や準天頂衛星の利活用につきましては、繰り返しになって恐縮でありますが、日本国憲法の平和主義の理念に基づき、関係府省とも連携をしながら、これから詳細を詰めていきたいというふうに思います。
○島津委員 GPS衛星というのは、カーナビなどに使われていますから、カーナビなどのために打ち上げられたと思われがちなんですけれども、実はそうじゃありません。本来の目的は軍事用なんです。潜水艦が海中からどこへ浮き上がるか、これを決めるのもこのGPS、軍隊が移動する、こういう情報もこれでやるわけです。
アメリカは、今お話があったように、三十基のGPS衛星を打ち上げています。無人攻撃機の問題が大分問題になっていますけれども、この無人攻撃機の運航も、GPS衛星が遠隔操作のかなめになっているんです。
今、大臣、お答えがありましたけれども、こういうGPS衛星、日本の準天頂衛星も軍事目的に利用されるんじゃないかと非常に懸念するわけです。それはないということを改めて、今の答弁だとちょっとよくわかりませんでしたけれども、軍事利用はさせないということを約束してほしいと思うんです。
○鶴保国務大臣 委員御指摘の軍事というものの内容が必ずしも明らかではありませんが、軍事がいかなるものであるかということに対しての判断は、主体、あるいは相手先、あるいはその環境、状況などにより、その都度確認を要するものというふうに考えております。
御指摘の軍事利用の有無につきましては、日本国憲法の平和主義の理念に基づき、準天頂衛星の利活用について検討をさせていただきたいというふうに思っております。
○島津委員 結局、約束、明言していただけないわけですけれども。
今まで見てきたように、リモートセンシング衛星というのは、静止気象衛星「ひまわり」など、私たちの暮らしに役立っている衛星がある一方で、上空から、地上や海上での他国の部隊や基地の動きや活動状況を画像情報として探るスパイ衛星の役割を果たすこともできるんです。
無人攻撃機など、直接の武力行使にも活用されています。平和利用で始まった宇宙開発が、なし崩し的に軍事利用に傾き、それが強まっていく、この懸念、きょうの議論でも拭い切れません。
最後に、法案について具体的にお聞きします。
法案は、内閣総理大臣によって、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に支障を及ぼすおそれがあると認める十分な理由があるときは、画像の提供を一定期間、特定の地域を示して禁止することができるとしています。
確認したいんですけれども、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に支障を及ぼすおそれとは客観的にどういう場合なのか、そして、十分な理由とはどのような事態を想定しているのか、これをお答え願います。
○高田政府参考人 お答え申し上げます。
国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に支障を及ぼすおそれがあるものとは、個別具体的な状況に応じて総合的に判断する必要があり、具体的な状況を一概に申し上げることは困難であります。
その上で、あえて申し上げるとすれば、例えば、衛星リモートセンシング記録が紛争当事国やテロ組織などによって利用され、武力紛争やテロ行為などが助長されるおそれがある場合、あるいは、政治、軍事的な情報収集手段として利用され、我が国の安全保障に支障を及ぼすおそれがある場合などがこれに当たる可能性があると考えております。
また、十分な理由があるときということについてのお尋ねでありますが、このような国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に支障を及ぼすようなおそれがあるときであって、そのように認識するのに十分な資料や客観的、合理的な理由がある場合などがこれに当たる可能性があると考えております。
○島津委員 曖昧な点も多々ある答弁でした。国民の知る権利を脅かしかねないと思いました。
さらに、画像の提供を一定期間、特定の地域を示して禁止するとしているわけですけれども、日本国内で規制をしても、実際問題として、アメリカなどから海外の情報はどんどん入ってくるわけです。特に、アメリカは軍事技術の古くなったものを民間に払い下げして活用しているため、アメリカの民間データが流れ込む、こういうことが今でもあります。
その意味でも、今回の法案というのは実効性がないんじゃないかと思うんですけれども、どうでしょう。
○佐伯政府参考人 お答え申し上げます。
本法案においては、国内に所在する操作用無線設備を用いた衛星リモートセンシング装置の使用により取得した記録を規制対象としており、海外に所在する操作用無線設備を用いた衛星リモートセンシング装置の使用により取得した記録は規制対象とはなりません。その点は御指摘のとおりでございます。
一方、民間事業者が衛星リモートセンシング装置を使用する能力を持つ国では、衛星リモートセンシング記録を適切に管理するための法制度が整備されてきておりまして、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランスといった国でも整備されてございます。
我が国といたしましても、こうした国々と緊密に連携をすることによりまして、衛星リモートセンシング記録の適正な取り扱いの実効性を確保してまいりたいと考えております。
○島津委員 我が国、ほかの国もやっているところもあるわけですけれども、しかし、それで万全とは言えない。ある意味、実効性がないわけです。テロ組織などに渡らなくても、ほかの国は情報を十分に得ているわけで、そういう点では本当に実効性を疑問に思います。
私は、ある研究者の方からこの法案の審議に当たって話を聞いたんですけれども、今回のリモセン法案は、そうした今述べた実効性がないと同時に、研究者にとって不安と語っていました。研究者にとっては、これが制約になって害悪の方が大きいんじゃないか、制約を加えずに自由に競争した方が宇宙技術の民主的発展にとって有効である、こういう声だったんです。
こうした研究者の立場からの不安、心配、この声にどう応えるんでしょうか。
○佐伯政府参考人 お答え申し上げます。
本法案で規制対象となる衛星リモートセンシング記録、こちらを利用するに当たりましては、適正に取り扱うことができる旨の内閣総理大臣の認定を受ける必要がございまして、申請等の一定の手続負担を必要とすることは事実でございます。
一方、本法案第三条第二項におきましては、「衛星リモートセンシング装置の使用により生み出された価値を利用する諸活動の健全な発達が確保されるよう適切な配慮をするもの」と定められております。
認定に係る判断基準につきましては、衛星リモートセンシング記録の利用の目的が国際社会の平和の確保等に支障を及ぼすものでないこと、衛星リモートセンシング記録の安全管理措置を適切に実施できることなどが考えられておりますが、詳細な検討に当たりましては、研究者の方々の研究活動が円滑に進むように検討してまいりたいと考えております。
○島津委員 ぜひ、こうした研究者の皆さんの心配にきちんと応えていただきたいと思うんです。
この法案は、テロ対策等を名目に、最新の宇宙技術で得た情報に政治、行政的な規制をかけるものです。国による規制が進むと、画像ユーザーである研究者にとっても大きな制約になるわけです。宇宙科学発展の妨げともなります。
同時に、画像を商用として取り扱っている民間企業にも支障が生じることになります。基準が不明確なまま、時の政府の判断で禁止措置をとる、こういうことになるわけですけれども、非常に危険だということを指摘したいと思うんです。
宇宙というのは、ハッブル宇宙望遠鏡で撮られた神秘的な映像に多くの人が魅せられています。木星や火星探査での新発見に心が躍り、小惑星探査機「はやぶさ」の劇的な帰還に多くの人が拍手を送りました。
こうした宇宙をめぐる話題には夢とロマンがかき立てられます。しかし、それらは宇宙開発の一面でしかありません。そうした華やかな話題の裏で進行しているのが宇宙の軍事利用です。宇宙科学、探査分野や民生分野が後景に押しやられ、軍事利用に莫大なお金がつぎ込まれています。軍事機密に制約されるため、民生用に開発普及されコストダウンを進める阻害にもなります。科学技術の発展の阻害にもなるんです。
日本の宇宙開発は、一九六九年の全会一致での国会決議以来、非軍事に限られ、自主、民主、公開の原則で進められてきました。改めてこの決議に立ち戻って、日本の宇宙開発を憲法九条に基づき平和目的に限定する、そのためには宇宙基本法の安全保障条項を削除することを求めて、質問を終わります。