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おはようございます。日本共産党の島津幸広です。
初めに、記録的な大雨で被災された方々に、心からお見舞いを申し上げます。日本共産党も、救援と復旧に向け、これからも全力で頑張る決意です。
さて、議題となっている改正案について伺いたいと思います。
最初に、瀬戸内海の環境が悪化した、さまざまな原因が複雑に絡み合って起こったものであると思いますけれども、発議者はこの原因をどう見ているのか、先ほど趣旨説明もありましたけれども、改めてお聞かせください。
○清水参議院議員 お答えいたします。
ただいま御質問をいただきました瀬戸内海の環境悪化の原因についてですが、瀬戸内海の環境については、高度経済成長期に急激に水質汚濁、水質の悪化というのが進みました。これは瀬戸内海だけではなく、当時の日本のほかの地域でも起きたことではありますが、工場排水や生活排水の流入が主な原因というふうに思われています。
これを受けて、昭和四十八年に制定された瀬戸内海環境保全特別措置法に基づいて規制等の措置が講じられまして、総じて瀬戸内海の水質は改善をされてきました。その一方で、海の生物にとっての環境、これは生きる環境ですけれども、これは決してよくなったとは言えませんで、瀬戸内海の漁獲量はピークの三分の一にまで近年では減少しています。
その漁獲量の減少については、燐、窒素といった栄養塩類の減少との関連を指摘する見解がある一方で、科学的データの蓄積が十分に得られていないこともあり、いまだ確たる結論は得られていません。また、藻場、干潟等の減少、漂流ごみ、海底ごみの問題といった課題、これも残っています。
これらの課題に対応するためには、規制するだけではなく、これにあわせて、瀬戸内海を生物多様性、生産性が確保されるなどその価値、機能が最大限に発揮された豊かな海とするための取り組みを推進することが必要であると考えまして、本法律案を提出したものであります。
○島津委員 ありがとうございました。
今回、法案の基本理念に、生物多様性が保たれた豊かな海とあります。
今回初めて入ったわけですけれども、環境が悪くなる前にはどのような生物が瀬戸内海にいて、環境の変化とともに生物がどのように減少したのか、簡潔でよろしいですので、お答えを願いたいと思います。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
瀬戸内海の環境保全上の大きな課題の一つといたしまして、生物多様性の確保が挙げられているわけでございます。
平成二十四年に出されました瀬戸内海の環境保全、再生のあり方に関する中央環境審議会の答申におきまして、生物多様性が劣化した具体的な例といたしまして、広島県呉市における海岸小動物、ナマコ、ウニとかエビとかカニとかそういうものでございますけれども、この海岸小動物の種類数が昭和三十五年度から平成二年度にかけまして著しく減少した、あるいは干潟が消滅したことによってカブトガニが減少したことなどが具体的な例として挙げられているところでございます。
○島津委員 そういう状況が進んでいるわけです。
そして、今回、良好な環境の保全、再生、創出とあります。保全というのは今あるものをこれ以上壊さないということでしょうし、再生というのは失ったものをもとに戻すということだと思うんです。それでは、創出というのはどういうことを意味しているんでしょうか。
○高橋政府参考人 本年二月に、豊かな瀬戸内海を目指すという新たな観点で、瀬戸内海環境保全基本計画の変更を閣議決定いたしました。
その新しい基本計画の中では、沿岸域の環境の保全、再生、創出というのを大きな柱の一つとして位置づけまして、各種施策を進めることとされてございます。
この創出につきましては、瀬戸内海において開発等に伴いまして多くの藻場や干潟が失われたという現状を踏まえまして、新たな藻場や干潟の造成等を通じて良好な環境をつくり出すという意味であるというふうに認識をしてございます。
○島津委員 それでは、実際に、干潟や藻場の造成、整備など、環境改善を今していると思うんですけれども、この取り組みについてはどんなようなものなんでしょうか、お答え願いたいと思います。
○高吉政府参考人 お答え申し上げます。
藻場や干潟は、水産生物の産卵場、生育場として重要な役割を担っていると認識しております。
このため、水産庁としましては、水産基盤整備事業によりまして、着定基質の設置等による藻場の整備や、覆砂等による干潟の造成の取り組みに対して支援を行っているところでございます。
これまで、漁港漁場整備長期計画等に基づきまして、昭和五十一年度から平成二十三年度までの数値でございますが、全国で約二万二千ヘクタールの藻場、干潟を整備してまいりました。
今後とも、水産生物の生育環境の改善に向け、必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
○下司政府参考人 お答え申し上げます。
国土交通省では、海域環境の改善は重要であると認識しております。
このため、港湾整備に際し発生するしゅんせつ土砂等を有効活用した干潟、藻場の造成や、深掘り跡の埋め戻し、生物との共生に配慮した構造物の整備等に取り組んでまいりました。
今後とも、瀬戸内海を豊かな海とするため、国土交通省といたしましても、港湾整備に際し、海域環境の改善にも資するよう取り組んでまいる所存でございます。
○島津委員 そうした取り組みがあるわけですけれども、創出事業について、決していい面ばかりじゃない。とりわけ環境団体の環瀬戸内海会議の人たちは、この取り組みについてかなり否定的な意見を持っておられます。
例えば広島県尾道市の百島では、砂を持ってきて人工干潟をつくったんだけれども失敗した。十年、十五年ぐらいはよかったんですけれども、結局、上の砂が流されて泥の層がむき出しになってしまった。よそから持ってきても、結局長期的に見れば失敗する、こういう例もあるわけです。
今回、瀬戸内海環境基本計画では、沿岸域の環境の保全、再生、創出は、良好な環境を回復させる観点から努めるもの、こう明記されています。これは、今ある干潟や藻場では足りないから、新しくふやして環境改善するということで、しかし一方で、新しくつくったからかわりに別の干潟や藻場を潰す、こういうことはしてはいけないわけで、これはそうしないということでよろしいんでしょうね。
○高橋政府参考人 御指摘のとおり、瀬戸内海で多くの藻場や干潟が失われているという現状を踏まえまして、良好な環境を回復させるという観点で、現存する藻場や干潟等を保全しつつ、再生、創出を進めていこうというものでございます。
○島津委員 新しくつくる、今あるものはこれ以上壊さないという答弁だったと思います。これはぜひそうした方向でしていただきたいと思います。
次に、参議院の審議で我が党の市田議員が質問した遊休埋立地の問題です。
藻場や干潟がなくなるなど、今までにさんざん埋め立てられてきたことが瀬戸内海にダメージを与え続けているわけです。原則埋め立ては禁止にして、これ以上埋立地をふやさない、これが大切と思うんです。
同時に、使われていない遊休地を活用するということも求められています。例えば、瀬戸内海の環境団体の皆さんは、今ある造成地、遊休地、この遊休地を中に削り込んで、緩い傾斜をつけておく、そうすれば、自然の力で砂がたまり、浜やいそができて、ゴカイや貝類が帰ってくる、こういう提案をしています。
これは、先ほどいろいろな創出の取り組みがあったわけですけれども、私、事前に聞きましたところ、国土交通省が生物共生型港湾構造物の整備ということで、護岸の前面を階段状にして干潟にしていくという整備があるというふうに伺いました。これは、垂直護岸ということよりも、なだらかにしておけば、やはり自然の力で砂も戻ってくるし、生物も戻ってくる、こういう考え方でやっていると思うんですけれども、これは環境団体の皆さんが提案していることにもつながると思うんです。
環境省としては、こういう遊休地の活用というのは検討するつもりはないのでしょうか。これは、ぜひ大臣に考えをお聞かせ願いたいと思います。
○望月国務大臣 今の先生の御指摘は、未利用地の活用ということになりますけれども、これは中央環境審議会で、答申において、景観や生物多様性の保全に配慮しつつ、自然再生に向けた検討が必要である旨の指摘がしっかりとなされておりますので、今後、国土交通省や、今先生の御指摘のあったようなさまざまな工法とかやり方があると思いますので、そういったものを、あるいはまた、関係府県等と連携して、地元の御意見もよく聞きながらということになりますが、遊休埋立地の実態をまず把握していかなくてはいけない。この間も参議院の方でそんな答弁をさせていただきましたが、把握するとともに、環境省としても遊休埋立地の活用の可能性について検討していきたい、このように思います。
○島津委員 法案の理念で、環境の保全上の支障の防止だけじゃなくて、瀬戸内海を豊かな海にするための取り組みをあわせて行う、総合的、計画的に推進すると言っています。
今も大臣お答えになりましたけれども、埋め立てによる自然海岸の減少が藻場や干潟の減少となって、水質の自然浄化、生物の生息などに影響しているわけですから、遊休地の垂直護岸をそのままにしておくよりも、確実に豊かな海にしていくことに資すると思うんです。
いろいろ聞きましたら、遊休地の活用というのはハードルがあるそうなんですけれども、試験的にでもやってみるということも含めて、結果が見られれば本格的に進めるということも含めてやっていくことも一つの方法だと思うんですけれども、ぜひ環境団体の皆さんも提案している方法について検討していただきたいと思うんです。再度、大臣、どうでしょう。
○望月国務大臣 先生も、我々も静岡県の同じ地域で、非常に海に面している、あるいはまた川、それから浜名湖といったようなさまざま水に面しているところですけれども、一回そういった自然を失うということになりますと、なかなかもとに戻るのが難しい。
我々も、海岸を埋め立ててバイパス等をつくって、その当時は経済の発展のためにやろうと。ところが、それはまたもう一度、バイパスは残して自然景観だとか海浜を取り戻そう、そういったときに、やはり、砂を持ってきてそこへ置いてもなかなかそういったものが再生できないということがございます。これは非常に技術的にも難しい問題がございます。かといって、手をこまねいているわけにもまいりません。
先ほど申しましたように、学者の皆さんの、中央環境審議会等のそういった御意見もしっかり踏まえ、また、今さまざま、地元の方がよく地元のことをわかっておりますので、そういう皆さんの、過去に歴史のあったすばらしさ、こういうものがあったというものも聞きながら、また、さまざまな、NGOを初めそういう皆さんの御意見があればそういったことも参考にさせていただいて、再生に努めていきたいな、こんなふうに思っております。
○島津委員 ぜひいろいろな、とりわけ環境団体の皆さんを含めて意見を聞いて検討していただきたいと思います。
次に、海砂を掘った後の穴がそのままにされていて、貧酸素水塊あるいは青潮、こういう原因になっているわけです。それを埋め戻すことも想定していると思うんですけれども、先ほど国交省からは、しゅんせつ土砂で埋め戻すという説明もありました。
これは、埋め戻す際に、間違っても鉄鋼スラグやあるいは陸地の建設残土などを使うことがないように、海の環境を悪化させるこういう危険なものは使用しないということが大事だと思うんですけれども、この点は、使用しないということでよろしいんでしょうね。
○高橋政府参考人 御指摘のとおり、安全性は大変重要かと思っております。
一方で、どういう材料を使うかにつきましては、土砂のかわりにさまざまな材料、例えば鉄鋼スラグを使うというような提案もされているのも事実でございます。
そのため、環境省といたしましては、過去に、環境技術の実証事業というものがございまして、その中で、鉄鋼スラグを用いた、これは藻場の造成でございますけれども、それの安全性の評価をしてございます。その際には、その実証事業に使用するスラグの溶出試験を行うとともに、スラグを設置した後のその実海域における影響、pHの上昇とかがないかというようなことも確認をしてございます。
いずれにしても、埋め戻し材や藻場、干潟造成に用いる材料につきましては、水環境に悪影響を与えないということがしっかりと担保されることが重要だというふうに考えてございます。
○島津委員 安全性が確保されればいいという問題じゃなくて、やはり鉄鋼スラグそのものが大変大きな、いろいろな問題があるわけで、これはぜひ使わないでいただきたいというふうに思うんです。
同時に、いろいろな加工品だとかを使っていくということの方向もあるようなんですけれども、これまでも、廃棄物のリサイクルだといって、いろいろ基準を満たしていろいろなところに使われてきた。しかし、それが結果的に環境汚染を引き起こしたという例があちこちで見られます。実証試験で安全となっても、そのまま品質が担保されないと大変な事態になるわけです。
仮に、実験をして安全性が確保されたということになって使うにしても、その後その安全性が担保されるというのは保証がないわけで、ですから、万が一、仮に使う場合でも、安全性がずっと担保されるというチェック機能を厳しくしていくことが非常に大事だと思うんですけれども、この点はどうでしょう。そういうふうにしていくということでいいんでしょうか。
○高橋政府参考人 御指摘のとおり、長期的な影響についてもモニタリングしていくということは重要かと思っております。
○島津委員 問題の鉄鋼スラグそのものを使うというのは非常に問題ですので。これは安全上非常に問題であるということを厳しく指摘しておきたいと思います。
最後に、時間がありませんので。
私は、この法案の審議の前に小豆島に行ってきました。行っていろいろ見て驚いたんですけれども、稜線までかかる大規模な採石、石をとった後の現場、かつてあった道路がなくなって、新しい道路ができて、無駄に山を削る。ある島では、島の半分ぐらいが、小豆島以外の島ですけれども、採石で山の形が削られるというぐらいになっちゃっている。
小豆島に行って、私が聞いて、見て、こんなに山が削られると島がなくなっちゃうんじゃないですかと心配したら、皮肉まじりに、そのかわりに面積がふえていますということで、埋め立てしているところを見せてもらったんですけれども、こういう形で非常に深刻な事態が進んでいます。
それから、もう一つ見て驚いたのは、ダムがあるんです。内海ダム、新内海ダムといいまして、御承知のように、瀬戸内海国立公園に指定されて、しかもその中の、指定第一号、寒霞渓というのがあるんですよね。これを源流にして内海湾に注ぐ川があります。このわずか約四キロ、三千九百九十六メートルのこの川にダムをつくる。ダムがつくられたところの川幅は六・六メートルから七メートルほど、そこに川の全長の一五%に及ぶ堤の長さ四百四十七メートルのダム。高さは四十二メートル。利水、治水目的というんだけれども、実際には、小豆島の水源は、一九九九年から吉田ダムから供給されて、今では渇水どころか給水制限も起きていない。
このダムの貯水量、四国の水がめと言われている早明浦ダムのわずか三百分の一にすぎないものです。こういうのが、行ってダムを見て、そんな巨大なダムでどんなに大きなダム湖だろうと思ったら、本当にため池ぐらいな水しかたまっていない。こういうダムだったんです。
こういう無駄な事業が行われているわけですけれども、陸地の景観を破壊している、こういうことだけじゃなくて、こういうことによって、山が持っている栄養分が川を伝って海に流れ込む、こういう循環を破壊しているわけです。
こういう点について、採石で景観が悪くなるということも、今度の法案では景観をやはり保全していくということも入っていますし、豊かな海をつくっていく点では、海の問題だけじゃなくて、陸の環境をよくしていくということも非常に大事だと思うんです。この点での大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○望月国務大臣 御指摘の点は、平成二十四年に閣議決定されました生物多様性国家戦略において、森、里、川、海のつながりを確保するということ、これが重点的に取り組むべき基本戦略の一つとして掲げられているところであります。
このため、陸域における土地利用でありますけれども、川を通じて影響が海へ及ぶことを念頭に置きながら、適切に実施する必要がある、こんなふうに考えております。
環境省としても、この法案の基本理念にある豊かな海を目指して、引き続き、関係省庁や関係府県などと連携した取り組みをしっかりと進めてまいりたい、こんなふうに思っております。
○島津委員 時間が来たので終わりますけれども、いずれにしても、環境を悪化させた原因の究明、そしてその反省の上に立って、瀬戸内海を豊かな海とするように実効ある対策がとられることを強く求めて、質問を終わります。
ありがとうございました。