―島津議員発言部分抜粋―
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○島津委員 日本共産党の島津幸広です。
きょうは、お二人の参考人の皆さんに貴重な御意見をいただきまして、私からも感謝申し上げます。
お二人に質問させていただきたいと思うんですが、まず御両人に、水銀は環境中に排出されると回収が難しいわけです。ですから、やはり排出量を減らすということが重要です。ですから、新規に水銀鉱を開くことや、今ある水銀鉱も期限を区切って閉山する、代替可能なものは水銀フリーにして水銀需要を減らしていくという取り組みがなされるわけです。しかし、不純物としての水銀は閉山しても関係なく出てきます。
そこでお聞きしたいのが、石炭火力についてです。発電という技術は石炭に頼らずとも可能で、代替可能と言ってもいいと思いますが、発電の水銀フリーという意味で、石炭火力はできる限り減らしていくべきではないかと私は考えているんですが、お二人のお考えをお聞かせください。
○大塚参考人 ありがとうございます。
石炭火力につきましては脱硫・脱硝装置がつけられておりまして、その脱硫・脱硝装置がつけられていることによって、結果的に水銀に関してもかなりそこで抜き取られているというところがございまして、アメリカなどでは、石炭火力に関しまして水銀の大気汚染の問題は実はかなりございますけれども、我が国におきましては、脱硫・脱硝装置がかなり厳格に設置されていって、そちらの方の規制がなされているために、石炭火力からそれほど大量の水銀の排出がなされているという状況にはないというところがございます。
しかし、石炭火力につきましても、先ほど申しました五つの主要な発生施設でございますので、条約にのっとって、さらに先ほどのBATの考え方にのっとった基準をつくることによって、今まで以上に厳しい対応をしていくことが重要であると考えております。
以上です。
○藤原参考人 石炭火力については、私の聞いた範囲内では、条約で指定されている五つのカテゴリーの中では非常に水銀対策については進んでいるのではないかと思います。資源のない日本国内で電力を生み出す中で、石炭火力というのは非常に重要な位置づけにあると思いますので、その点については御心配ないかと思いますが、むしろ、このような日本の石炭火力の水銀除去システム装置などを全世界に広めて、そういうところで貢献できるのではないかと思っております。
○島津委員 ありがとうございました。
次に、大塚参考人にお伺いしたいんですけれども、これまでも議論がありましたけれども、市町村の責務として、一般家庭からの廃棄物の適正処理があります。私も、幾つかの自治体、市に行って聞き取りをしてきたんですけれども、やはり皆さん、これから新たに進めるという場合にはコストがかかるということで、心配されて、本当にできるのかどうかということも言っておられました。不安もあるわけです。
きちんとできる自治体もあるし、ほどほどの自治体もということでは困るわけですから、今後、廃棄物処理法の政省令が改正されて、具体的にどう取り組むかが決まっていくわけなんですけれども、自治体が適正回収にそろって取り組める、このようにするにはどういう改正があるべきだと思われるんでしょうか。
また、国は技術的な支援ということだけなんですけれども、特に財政で、自治体だけの責務としてしまうことで実効性がなくなるんじゃないかという心配もあるんですけれども、その辺のお考えをお聞かせください。
○大塚参考人 重要な御指摘だと思います。
既に、全都清等を中心として、七割の自治体が回収の仕組みをつくっておりますので、それを拡大し、発展させていくことが重要であると考えております。
一般家庭から出る廃棄物に関しましては、市町村の処理責任がございますので、適正回収に関しても市町村にやっていただくということが今後とも重要だと思っております。
これに関しましては、自治事務になっておりますので、今から国が一律の規制とか対応をすることがかなり難しいという状況でございまして、今後とも市町村にできるだけの対応をしていただくということで、国はそれに対しての技術的等さまざまな助言をしていくということが重要であると考えております。
以上でございます。
○島津委員 ありがとうございました。
続いて、御両人にお伺いしたいんですけれども、今回、鉄鋼が自主規制という枠組みになりました。私は、鉄鋼も、ほかのセメントや石炭火力のように規制対象にすべきだと考えていますけれども、このことについてはどうお考えですか。
みずから目標を定めて、排出データをとり、公表するという仕組みなんですけれども、これできちんと排出が削減される実効性がある取り組みとなるのかどうか、その辺はどう見ておられるかというのをお聞かせください。また、実効性のあるものにするためには、よりよい仕組みが考えられるものがあれば教えていただきたいと思います。
○大塚参考人 ありがとうございます。重要な御指摘だと思います。
この点につきましては、我が国の水銀の大気汚染が世界の水銀の大気汚染の一%にすぎないということとか、従来も水銀に対しての大気汚染の対応というのが取り組みが進められてきているということに鑑みまして、鉄鋼は、条約自体の対象ではないものですから、自主的な取り組みということに大気汚染防止法改正案ではなされているところでございます。
スライドの二十二にも書きましたように、今おっしゃっていただいたように、鉄鋼においてはということになりますが、みずから遵守すべき基準を作成して、水銀濃度を測定して、この結果を記録して保存するということでございます。その評価に関してとか実施の状況に関しても公表しなければならないということでございます。
今おっしゃっていただいたこととの関係では、この排出量を公表していただき、有識者等を含めた会議でこれを評価するというようなこと、フォローアップをするというようなことが極めて重要だと考えております。そのようなことによってかなりの程度の対応ができるということを考えているところでございます。
以上でございます。
○藤原参考人 鉄鋼については、条約対象外ということで自主管理ということになっておりますけれども、確かに、先生のおっしゃるとおり、環境や健康リスクを防止するための法律であるにもかかわらず、業種による対応に違いがあるというのは違和感がございます。
ただ、先ほど大塚先生も申しましたとおり、自主管理とはいいつつも、やはりその管理がしっかりなされているかどうかということで国としても環境省としてもフォローしていくということであれば、さほど問題はないのかなと考えております。
○島津委員 ありがとうございました。
続いて、藤原参考人にお聞きしたいんです。
先ほど、御社の水銀回収の状況のお話があったんですけれども、日本全体の使用済み水銀含有製品はどのぐらいの割合で野村興産さんのような回収できる業者に回っているのか、全部回っているのかどうかということなんですけれども、現在、きちんと回っていない部分も多分あるんじゃないかと思うんです。そういう部分を専門業者のところに行き着くようにする、このようにするにはどういう対策が必要だというふうに考えられるのか、何が今障害になっているかということがありましたら、お話をお聞かせ願いたいと思います。
○藤原参考人 弊社に国内で発生するどのぐらいの水銀が集まっているかというのは、なかなか想像に難しいところでございます。
ただ、間違いなく、この条約担保によって大防法による水銀の規制がかかった場合には、その規制がかかった分が廃棄物となって排出されますので、その部分がまたさらに水銀回収量としてふえてくるのではないかと思います。
それで、水銀含有製品なり水銀を含んだ廃棄物の回収をどうやって進めていったらいいのかというのは、なかなか難しいところではございますけれども、私どもの営業活動もちょっと問題があるんですけれども、実際に、日本国内で水銀廃棄物がある、水銀を含んだものをどうして処分したらいいんだろうといったときには、皆さん、どうやっていいかわからないというのが正直なところのようです。
いまだに、弊社としても、いろいろインターネットなどを活用しながら、水銀のことでお困りであれば弊社にお任せくださいという形で宣伝活動はしているんですけれども、やはり、そういう水銀を含んだものが出た場合には、どういう処理業者があるのか、弊社以外にもどういう業者があるのか、どういう形で処理をしてくださいという形の、何かPRなり啓発活動をしていくということが一番重要ではないかと思っております。
○島津委員 ありがとうございました。
続いて、御両人にお聞かせ願いたいんですけれども、水銀の排出基準は後日定めることになっています。この場合、硫黄酸化物などのように総量規制にはなっていないわけです。水銀は、御承知のように、なくなることなく環境中に蓄積していく物質ですので、総量規制すべきじゃないかというふうに考えるんですけれども、この点ではどうでしょうか。
○大塚参考人 総量規制に関しましては、条約の制定過程におきましても検討はされたところでございますけれども、最終的には採用されなかったところでございます。
この水俣条約が地球環境条約の一種であるということを考えますと、総量の削減ということは重要でございますけれども、排出事業者が、削減をしていくために、みずから排出しているものが最もわかりやすいというところを考え、さらに、従来の遵守に関しての義務づけの基準との関係を考えますと、濃度規制の方が適切であるというふうに考えて、BATに基づく濃度規制をしていくということでございます。それを考える上では、先生がおっしゃるように、総量に関しても十分考慮しながら濃度規制について行っていくということを考えるべきだと思っております。
以上でございます。
○藤原参考人 諸外国では、確かに、濃度規制と総量規制と両方、二本立てでやっているところもあるようですが、先ほど大塚先生もおっしゃられたように、まずは濃度規制で始めてみて、その中で、これからインベントリーをとっていくと思いますので、インベントリーを見ながら総量規制値という形で進んでもよろしいのかとは思います。
○島津委員 ありがとうございました。
続いて、御両人にお伺いしたいんです。
これまでも議論がありましたけれども、日本では、水俣病の被害を出した経験がありながら、今回の条約が出るまで、厳しく規制するより、企業の自主的な取り組みに任せる姿勢がありました。
そもそも、もっと早く脱水銀のための規制や取り組みを国が主体となって行って、それを世界に広げていくというのが本当の意味でのリーダーシップであると思います。
その辺についての両先生のお考えや、それから、これまでの水銀規制のための取り組みが日本ではおくれていた、こういう捉え方をしているかどうかということもちょっとお聞かせ願いたいと思います。
○大塚参考人 ありがとうございます。
おっしゃっていただいたように、水俣病は、実際に問題になったのは水質汚濁との関係でございまして、これに関しては、私のペーパーの注の二だったかに書いておきましたように、水質汚濁防止法の方で厳格な規制をしているところでございます。ですので、今後、水俣病のようなものが発生することは水質との関係ではないということに既になっているわけで、それに対しては十分な対応がなされてきていると言ってよいと思います。
御指摘の点は、大気及び水銀添加製品、水銀使用製品の件だと思いますけれども、大気に関しましては、先ほども申しましたように、健康との関係では全く問題がないレベルになっておりますので、十分な対応がなされてきたということだと思います。ただ、地球全体での水銀の循環という観点で、今後、さらに基準を追加していく、より厳しくしていくということを考えているということでございます。
水銀添加製品の方につきましては、従来、具体的に問題となったケースが非常に少なかったということもありまして、対応してこなかったわけですけれども、今回、条約の制定を機にして、日本においても地球環境問題としての水銀問題に対応するということになったわけでございまして、我が国も、今回の水俣条約の制定に関してはかなりいろいろな発言をして貢献をしてきている、さらに、水銀アセスメント等に関しても資金を提供してやっていただいているということもあるわけでございますので、かなり、水俣病との関係もあって、一生懸命、環境省を中心として取り組んできたということがあると思います。
ですので、おくれていたというふうには私自身は余り考えていないところでございます。
以上でございます。
○藤原参考人 水銀対策がおくれていたかどうかということについては、なかなか難しい話で、水銀にかかわる問題というのはなかなか表沙汰になりにくい部分があって、現在、いろいろ条約担保のために国内法の整理はしているんですけれども、それでも、調査していても、実態はどうなんだというのはなかなかわかりにくい部分があります。物が水銀だけに、企業としてもなかなか言い出しにくい部分があって。
と言いつつも、今、いろいろ、環境省さん、経産省さんの努力で実態がわかるようになってきているところでございますので、これを機に、初めの私の意見陳述の中でも申し上げたとおり、実態に即した政省令の改正なり法律の作成というのを強く期待するところでございます。
○島津委員 ありがとうございました。
きょう伺った意見をしっかり受けとめて、頑張っていきたいと思います。