しまづ幸広(日本共産党元衆議院議員)-浜岡原発廃炉、静岡から政治を変えよう
国会質問

質問日:2015年 5月 22日 第189国会 環境委員会

水銀条約関連法案に対する質疑②

―島津議員発言部分抜粋―

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島津委員 日本共産党の島津幸広です。

 十五日にも質問させていただきましたけれども、引き続き質問を続けさせていただきます。

 初めに、参考人質疑で大塚先生が述べられていましたが、水銀条約というのは地球環境条約ということで、世界で水銀の排出が多くなることで極地のアザラシにも水銀がたまる。特に、大気に放出された、排出された水銀は地表に落ちてくるまでの間に移動しますので、日本が出した水銀が日本以外の地域に落ちることもある。また逆に、ほかの国が出した水銀が日本にやってくることもあります。

 過去に日本が排出していた水銀がなくなってしまったわけではなく、世界のどこかに存在しているわけです。地球温暖化問題のように、共通だが差異のある責任で、全ての国が状況に合わせて最大限の努力を払うというスタンスであるべきです。

 大臣、改めて確認したいんですけれども、今回の法案はこうした考えの上で提案されているということでよろしいですね。

望月国務大臣 先生がおっしゃるとおり、我が国としては最大限の措置を講じる、そういうこととしております。

 そういう中で、条約を担保することはもちろんでありますけれども、この世界のどの地域でも、悲惨な公害被害を二度と繰り返さない。これはもう、我が国がそういった経験を通して、一度起きたらそれをもとに戻すことはなかなかできませんので、やはりそういったことを経験している国でございますから、そういった意味で、世界の水銀対策をリードしていく、こういうつもりでございます。

 現在御審議いただいている二法案及び関係法令につきましては、条約の担保に加えて、製造を禁止する水銀使用製品の水銀含有量基準の厳格化、深掘りでございますけれども、あるいは、廃止期限の前倒しもできればどんどんしていきたい。あるいはまた大気中への排出の抑制に関する自主的取り組みなど、より踏み込んだ措置もあわせて講じることとしているわけでございます。

島津委員 その上で、本法案を真に実効性のあるものにするために、国の責任、果たすべき役割は本当に大きいと思います。

 端的にお聞きします。水銀使用製品の代替化、代替製品の促進のためにどうしていくのか、これ以上進めていく、水銀使用の低減化に向けた政府としての取り組みの方針はどうなっているのか、具体的にどのようなことをこれから想定しているのかを教えてください。

谷政府参考人 お答えさせていただきます。

 我が国では、他国に先駆けて水銀使用製品の代替や低減技術の開発と導入が進められていると認識しております。例えば、蛍光ランプの代替製品として、我が国が高い技術力を有するLED照明、有機EL照明等が普及しつつございます。

 こうした我が国の水銀代替、低減技術が国際市場において競争力を獲得し、世界で導入が進むことは、水俣条約の目的にも資する望ましいことでございます。

 このため、官民密接に連携しつつ、産業界には、引き続き技術革新を進め、地球規模での水銀に依存しない社会づくりに大いに貢献していただきたいと考えております。

島津委員 もう一つは、自治体の役割です。

 これまでの議論もありましたし、私の先日の十五日の質疑でも、乾電池、蛍光管、血圧計、体温計など水銀含有廃棄物の回収、リサイクルについて、全国的には約七割の自治体で、不燃物、危険物としてほかのごみとは区別して分別収集されていることを確認したわけです。

 議論もありましたけれども、では、残りの三割の自治体が水銀含有廃棄物の回収に十分な体制がとれていない状況も残されている。こういう、三割残されているこの要因は何なのか、そして、そのことを国としてはどのように分析しているのか、これをお答えいただきたいと思います。

鎌形政府参考人 分別回収がなされていない市町村の要因ということでございます。

 これまで、我が国で水銀使用が減少してきた中で、水銀含有製品の廃棄物としての排出も相当程度減少してきておりまして、基本的には、分別のいかんによらず、廃棄物処理法の基準を満たすことにより適正な処理ができているということ、そしてまた、こういった状況のもと、国においても、これまでは水銀添加製品の分別回収について特段の周知をしてこなかったというところがございます。

 こうしたことからばらつきが生じているのではないかというふうに考えておりますが、今後は、水俣条約を踏まえまして、水銀による環境リスクの低減に万全を期していく、こういう観点から、市町村に対して、分別回収の必要性について、例えば先進的な取り組みを紹介するといったような技術的支援を行うなどいたしまして、分別回収の徹底、拡大を後押ししていくこととしてまいりたいと考えております。

島津委員 三割のところでも基準を満たす措置ということなんですけれども、前回の質問でも言いましたけれども、実際には、蛍光管が割られて回収されていくと、大気中に微量であるとはいえ水銀が出るわけです。

 リスクが少ないといいますけれども、御承知のように、水銀は蓄積していくわけです。冒頭言いましたように、他の国にも流れていくわけです。日本ができることを最大限にやるというのが条約の精神であり、今回の法律の精神だと思うんです。

 十五日の質疑の中で、市町村の責務について、市町村ごとの経済的、社会的条件に応じてということについてお聞きしました。しかしながら、政府参考人の答弁は、いずれにしても市町村は、適正に回収する努力をいただくということ、こういうことでした。これでは答弁になっていなかったんですけれども、とにかく努力をせよ、こう言っているにすぎないわけです。

 そこで、改めて聞きます。ここで言っている経済的条件というのはどういう条件と考えているんでしょうか。具体的なことでお答えください。

鎌形政府参考人 法案十七条の「その区域の経済的社会的諸条件に応じて、」の経済的条件についてのお尋ねでございますが、具体的には、経済的諸条件とは、当該市町村の財政状況などを指すものと考えております。

島津委員 同じく、社会的条件とはどのような条件を想定しているんでしょうか。

鎌形政府参考人 法案十七条の社会的条件とは、地理的状況などを指すものと考えております。

島津委員 ですから、私は前回、その条件が整わない場合、とりわけ経済的条件、財政面でできないという場合にはやりたくてもできないという場合がある、そういう場合にはどうしたらいいかという意味で聞いたわけです。

 先ほども確認したように、現状でも三割の自治体が水銀含有廃棄物の回収に十分な対策がとれていない。一応分別回収に取り組んでいる自治体でも、さまざまな課題を抱えています。

 市町村に、分別回収に協力したい、きちんとやっていきたいという気持ちがないわけじゃないんです。私が直接お聞きした自治体でも、担当者の皆さんからは、努力していきたい、とりわけ、今回条約ができ、法律ができるわけですから、そういう気持ちが本当に伝わってきました。しかし、本当にできるのかということを心配しているわけです。

 コストをかければ分別回収は可能かもしれない。しかし問題は、限られた予算の中で、住民への周知徹底、意識づけ、回収ルートの新設、これを行えるのかどうかという不安を抱えているのが実態なんです。条件がどうであれ、いずれにしてもやっていただく、こういうことは条文と矛盾しているんじゃないでしょうか。

 水銀含有廃棄物の回収は、条約に上乗せして環境省が法案に入れた部分です。本気でやる気があるのか。結局、国は、こう決まりました、後はよろしくお願いしますという立場なのか。これで本当にいいんでしょうか。大臣、改めて考えをお聞かせ願いたいと思います。

望月国務大臣 家庭から排出される水銀添加廃製品でございます。前回も委員の方からさまざま御指摘がございました。

 ただ、現在も廃棄物処理法に基づいて環境保全上は適正な処理が行われていると考えておりますが、さらに、水銀による将来の環境リスクの低減に万全を期すべく、分別回収の徹底、拡大を後押ししていく必要がある、これは我々もそんなふうに思っております。

 そのための方策としては、さまざま、経済的、社会的条件とありましたけれども、市町村が財政事情も含めたそれぞれの状況に応じた回収方法を工夫できるように、例えば、パッカー車に専用ボックスを設置して他の分別区分のごみと同時に収集できるとか、あるいは、低コストな取り組み事例を情報発信する、そういうことの助言だとか技術的支援を行ってまいりたい、このように思います。

島津委員 現状でも適切な処理といいますけれども、前回の議論でも、適切な処理というふうに伺いましたら、破損せずに持っていくという答えがあったわけです。ですから、今、適正な処理にはなっていない状況もあるというのは指摘しておきたいと思います。

 将来的には、水銀の使用制限によって価格が下落する、需要がなくなることが予想されています。それに伴って、回収した水銀含有物の処理料金も引き上げられることになるでしょう。国は、水銀条約に上乗せの取り組みとして、水銀使用製品の適正な回収を法案に盛り込んだ。それはもちろん必要なことなんですけれども、自治体だけでできるのかということをきちんと考える必要があります。自治体が水銀の分別回収に税金を使うことへの住民の理解を得る、そのための住民への啓発、住民はどう分別に協力すればいいのかの説明が大事です。

 先日の野村興産の藤原参考人も、半数以上の自治体が自主的に行っている蛍光灯や電池の分別回収においても、なぜ有害ごみとして取り扱わなければならないのかを理解している人は少ない、まずは、この水銀というものを個々人に啓発していくことが非常に重要だ、こう陳述されていました。これは本当に大事な指摘だと思います。

 国民への啓発は、本来国がやるべきことです。先ほども議論がありましたけれども、これから国はどんなことをやろうとしているのでしょうか。

北島政府参考人 お答えいたします。

 国民の皆様には、適切に水銀使用製品を分別廃棄することに取り組んでいただきたいと考えておりまして、これらの取り組みを促すためには、議員御指摘のとおり、普及啓発が大変重要です。

 水銀による環境の汚染の防止に関する法律案におきましては、事業者が製品について水銀等の使用に関する表示を行うなどの消費者への情報提供を行う努力義務を規定しており、国といたしましては、今後、情報提供に関する一定の指針を作成して、事業者に求められる具体的な取り組みの内容を明らかにしてまいります。

 また、本法案に基づく、水銀等による環境の汚染の防止に関する計画におきましては、水銀が使用されている製品に関する情報や、特定水銀使用製品が原則製造禁止となっていることなどを含め、我が国の水銀対策や関連する情報について国民にわかりやすいものとなるようにしたいと考えております。

 さらに、パンフレットの作成やウエブページにおける情報提供も行い、広く国民の皆様への普及啓発に努めてまいりたいと考えております。

島津委員 国の役割とともに、地方自治体も直接住民には周知徹底していくことが必要なわけですから、具体的には、人とお金、体制、財政面での支援が必要です。このことは、国もこれからぜひ検討していただきたいと思います。

 時間がありませんので、製造事業者の責任と役割についてお聞きします。

 製造事業者の回収への協力は欠かせないと考えます。現在でも、電池や蛍光管の販売店や役場での回収は一定の成果を上げているわけです。この取り組みは強化されるべきで、自治体との連携もより進めていく必要があると思います。

 分別が必要な製品の回収、処理費用は誰が負担するべきなのか。その製品で恩恵を受けた人、製造者、販売者が廃棄に係るコストを一部負担するのは当たり前のように思います。この点、大臣、いかがでしょうか。

谷政府参考人 お答えさせていただきます。

 先生御指摘のように、製品から排出される水銀量を低減するためには、関係事業者、消費者、市町村が、製品の製造の段階から廃棄の段階まで、各段階におきまして、それぞれの役割を果たすことが重要でございます。

 我が国の産業界は、これまで、製品の製造、販売段階では、資金や人材を費やし、他国に先駆けて、水銀使用製品の代替や低減技術の開発と導入を進めてまいっております。例えば、電池の製造における過程では、水銀の使用量は、ピーク時の約百七十トンから、現在、約〇・二八トン、つまり、〇・二%以下に削減しております。

 今後も、さらなる水銀の使用削減や代替製品の開発は、回収や廃棄に係るコストの低減に大いに資するものというふうに考えております。

 また、先生御指摘のように、回収、廃棄段階でも、ボタン電池につきましては、事業者団体の自主的取り組みとして、全国のスーパーやホームセンター、家電量販店などの店頭に、全国で約一万三千のボックスを設置し、回収を行う等の活動をしております。

 経済産業省といたしましては、今回の水俣条約を踏まえた対策等の趣旨を関係する事業者に対し周知し、適切な対応が進められるよう促してまいりたいと存じます。

島津委員 時間がありませんので、ちょっと議論したかったんですけれども、最後に、保管についてお聞きしたいと思います。

 野村興産の藤原さんも参考人質疑でおっしゃっていましたけれども、日本は国土が狭くて、地震や異常気象も多い、欧米と同じような管理方法がとれるわけじゃありません。長期的に水銀を安全に管理し続けるには、やはり国が責任を持ってやる必要があります。

 どこに水銀を処分するかという選定でも、国が責任を持って行うべきです。水銀が漏れたりしない何らかの形で国がきちんと監視をする、このようにした方が、当該地域の住民の皆さんにとっても安心で、スムーズに運ぶと思うんです。

 保管についての国の関与は非常に重要だと思うんですが、この点、大臣、最後にいかがでしょうか。

望月国務大臣 今、漏れたりしないというお話がございましたけれども、アメリカは、容器に入れて、そして地中に埋めるというような形をとっていますけれども、我が国は、硫化により硫化水銀の状態にした上で固型化する、この義務づけを今検討しております。

 ただ、これにつきましては、天然に鉱石として存在する形の形態であって、非常に安定をしているということでありまして、これはまずは排出事業者において適切に管理されることが重要であると思っています。

 ただ、やはり、硫化水銀の長期安定につきましては、国としても継続した調査研究や検証を行うこと、これが大切だと思っておりまして、処理体制及び長期間の監視体制を含めて、全体の仕組みを適切なものとするように検討を深めていきたい、このように思っております。

島津委員 なかなか、議論したいんですけれども、時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

質問の映像へのリンク

https://youtu.be/2ips2mM7Zqw

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