本島参考人の意見表明と島津議員との質疑応答を抜粋。
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○松野委員長 これより会議を開きます。
科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件、特に我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について調査を進めます。
本日は、本件調査のため、参考人として国際核融合エネルギー研究開発機構(ITER)名誉機構長・未来エネルギー研究協会会長本島修君に御出席をいただいております。
この際、本島参考人に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、本島参考人から三十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に簡潔、端的にお答え願いたいと存じます。
御発言の際は着席のままで結構でございます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、衆議院規則により、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、本島参考人にお願いいたします。
○本島参考人 松野委員長、ありがとうございます。
最初に、松野委員長及び委員の皆様方に、私を参考人として呼んでいただきましたことに感謝申し上げます。核融合エネルギーの実用化に向けての現状と今後について意見を述べさせていただく機会を得ましたことを大変感謝しております。
松野委員長には、二〇一一年の秋に国会議員の先生方と一緒にITERまで来てくださいまして、大変勇気づけられました。そのことをきのうのことのように覚えております。おかげで大変元気が出た次第でございます。
きょうは、お手元にございますこの二枚ずつの、全部で二十五ページになりますけれども、その資料に基づいて説明をさせていただきます。それからもう一部、「激動する世界に思う」という、ことしの二月号「電気評論」でございますが、これは参考資料としてお配りさせていただきます。
では、二ページ目です。
まず申し上げたいことですが、核融合エネルギーの開発を進めることは新たな時代のイノベーションを生み出します、このことを先生方にまず申し上げたいと思って参りました。
我が国は、エネルギー資源に乏しく、破壊されつつある地球の環境を守りながら、エネルギー需要の増大にどう対応していくのか。地球の温度上昇を二度C以下に抑えるためのCOP21は二〇一六年十一月に発効いたしましたが、いまだに世界の足並みはそろっておりません。核融合エネルギーを我が国主導で早期に実現して大規模なエネルギー生産を開始することが、この問題の主要な解決策であると考えております。
核融合エネルギーの実証を目指すITERでございますが、後ほど詳しく説明させていただきます。安全で持続可能な社会の実現に向けて、長期間使用可能な、これはもう十万年とか二十万年の規模で使用可能になります、エネルギーの実現に向けた人類の挑戦です。新たな時代へのステップになるわけです。
我が国には、核融合科学研究所、岐阜県土岐市、自然科学研究機構に所属します。那珂核融合研究所及び六ケ所核融合研究所、茨城県の那珂市、それから、大学等に高度な研究基盤と優秀な人材を擁しております。これをぜひ活用いただきたいと思います。
核融合エネルギーの開発、研究はプラズマ物理学を基本としておりまして、必要なキーテクノロジーというのは多岐にわたります。真空、ダイバータ、超電導、材料、溶接、電力、ブランケット、トリチウム制御、安全、組み立て、品質管理、プラズマ応用といったことでございます。産業応用の幅も広いと言えます。
続きまして、先生方御承知のとおりではあると思いますが、三ページ目です。
核融合研究の目的は、地上のミニ太陽を実現することであります。その目的を一言で言いますと、安全かつ恒久的な新しいエネルギー源の実現にあります。
基幹エネルギー源としての核融合エネルギーはどういうものか、その属性というのはどういうものかと申しますと、燃料となる重水素が海の中に多量に含まれています。水の中に〇・〇三%ございます。皆様の体の中の水分にも同じ量が含まれているわけです。
左上の図をごらんいただきますと、この重水素、それからもう一つの燃料である三重水素、これは人工的につくり出します、それを一億度に磁場の中で加熱しますと、核融合反応が持続的に起こります。一億度は磁場を使って十分に断熱されますので、それから、一億度というととんでもない高温ではありますが、圧力としては十気圧程度ですので、十分制御できるということが申し上げられます。
反応を起こすと、ヘリウムが出るわけでして、それから中性子が出ます。中性子は安全に遮蔽する必要がありますが、その技術はもうできているわけでして、この中性子を外側に置きました同じく海から取り出しますリチウムに吸収させますとトリチウムが発生する、こういう燃料を増殖するサイクルがつくれるわけなんです。三十万年ぐらいは使えるであろう。排出ガスはヘリウムである。低コストの水素ガス生産も可能になります。水素エネルギーシステムの構築にも貢献いたします。
左の真ん中の図ですが、核融合反応をエネルギー源として使って、そこから百万キロワットぐらいのエネルギーを取り出して、水蒸気をつくって、電気を発電する、こういう仕掛けでございます。
我が国が引き続き世界をリードしていくための科学技術のイノベーションを生み出すことができます。そして、科学技術立国に必要な優秀な人材を育ててきましたし、育てることができます。
ちなみに、ポリタンク一個の海水からは、一番左側の下の図にありますとおり、石油二百五十本分のエネルギーが取り出せます。これを使わない手はないのではないか、こういうふうに申し上げられます。
成功の暁には、地球環境の保全と世界平和に貢献します。人類の高度文明を一万年の単位で続かせるためでございます。
ここで、持続可能で発展する世界をつくるための条件について見ていただきたいと思います。ページ四です。右下の番号で申しております。
炭酸ガスの排出を抑えること。地域的に偏らないエネルギー源を持つこと。材料等の資源が再生可能であること、これは、繰り返し繰り返し使う必要があるからです。コストがリーズナブルであること、当然、安くないと社会には受け入れてもらえません。社会的受容性を持つこと。安全でなければなりません。そして、ビジネスとして民間の積極的な参入が得られることも必要でございます。そのほか多数の条件が複雑に絡み合ってまいります。
下の三枚を見ていただいて、どう思われるか。
私も思うのですが、北極海の氷は解けております。毎年解けているのが今問題になっているわけです。日本の衛星「いぶき」が、平均の炭酸ガス濃度が四〇〇ppmを超えたということを一昨年の十二月に検出しております。東京は、この部屋の中も結構高くて、多分一〇〇〇ppmぐらいにはなっているんじゃないかと思います。ただ、我々は二〇〇〇ppmぐらいまでは呼吸ができるんです、生物というのは意外と厳しい環境で進化してきましたので。ですから、緊急の問題という認識になりにくいところがあるんですね。これが環境問題の大きなところではないでしょうか。
そして、真ん中が原子力発電所です。これを見ると緊張感が走る場合が多いんじゃないか、特に一般の皆様は。右側が縄文、弥生時代の竪穴式住居で、これは見ると安心感を感じるのではないか。なぜかというと、我々は、進化をして、非常にすばらしい環境に生きているわけです。しかし、下手をすると、私たちの子孫が再びこのような家に住まないといけなくなるということもあり得るわけです。
それから、日本海側の原子力発電所について申し上げますと、東南海地震が来たときに太平洋岸それから大阪湾岸の発電所が津波で大きなダメージを受ける可能性があるので、やはり震源から遠い日本海側に発電所を持っておくということは、そういう緊急事態には非常に重要なんじゃないか。これは申し上げるまでもないことではないかと思います。
それで、五ページ目に移らせていただきます。
では、核融合エネルギーの開発がなぜイノベーションを生み出すのか。
これは、具体的な例は後ほど申し上げますが、核融合エネルギーが宇宙の本質にかかわっているからだ、こういうふうに私は考えております。核融合エネルギーは宇宙に普遍的に存在しています。なぜなら、恒星のエネルギー源は核融合反応です。太陽もそうです。宇宙の物質の九九%はプラズマなわけです。
その下はもう閑話休題でございますが、私が思うには、今、宇宙空間に地球型の惑星を見つけ出すということが科学的にも天文学等で活発になっています。
これには目的がありまして、宇宙空間で我々と同じような高度文明を見つけることができると、そこから電波なりが飛んでくるのに数万年かかるわけですね、それを検出するということは、確率論的にこの文明が数万年続いているんだということになるんです。これは、ドレイクの法則という法則があります。我々の人類も数万年続く可能性があるんだということを確率論的に証明できるわけなんですね。
私が核融合研究者として申し上げたいのは、そこの百万キロワットの核融合発電所からは、一秒間に一兆の百億倍という大量のニュートリノ、これは梶田先生がノーベル賞をもらわれたニュートリノです、発生していますので、ニュートリノは何の障害もなく飛んできますので、物理天文学の総力を挙げてこのニュートリノの検出を試みると、宇宙文明がいるんだということの証明の近道になるんじゃないか、こういうふうに申しています。これは、少し道筋がずれましたけれども、私の夢としてです。
その次のページ、六ページ目です。
世界をリードする我が国の核融合研究ですが、トコマック、ヘリカル、レーザーという三方式、日本は基盤を持っております。
トコマック型は、元原子力研究機構、現在の量子科学研究開発機構でしてきて、大変な実績を持っております。ヘリカル型は、トコマックとは違うんですが、ヘリカルコイルを使います。核融合科学研究所でしております。それから、レーザー方式というのがありまして、これはレーザーを使ってばしんと反応を起こそうという、大阪大学で基盤があります。
この六ページで申し上げたいのは、この三つの方式が、日本で長い実績があり、基盤を持って、世界的にも評価されているということです。
次のページですが、ここで世界の研究の最前線を説明いたしますと、多くの装置を擁して研究が進んでおるわけです。ITERについてのスケジュール、それからその後の段階、DEMO炉でございますが、示しております。協調と競合の世界でございます。日本も負けていられないということがございます。
日本については、一番真ん中、上にありますように、LHD、核融合科学研究所です。それから、量子放射線機構、略して申し上げますが、トコマックの建設が現在進んでおります。それから、右下の方にありますのが、IFMIFという材料試験装置の試験が六ケ所村で進んでおります。こういった研究が進んでいます。
そして、我が国の研究の着実な進展、核融合研究開発については八ページにまとめました。
時間がかかっているということは事実でございますが、ゼロからの出発で、急速に進んできたということを示しております。加速器やスーパーコンピューターに比肩できる進展をしております。
九ページでございますが、私の研究歴をごく簡単に自己紹介させていただくためのものでして、今までITERを含めて三段階のチャンスをいただいております。私のこの研究の発展の中で、いろいろなチャンスをいただきました。
ITERですが、七カ国・地域から成る公的な国際プロジェクト、九ページの一番下のところです。フランスの原子炉法規で規制される核施設、ニュークリアファシリティーでありまして、出資者のみならず参入企業を含め多くの民間のステークホルダーを擁する大変チャレンジングなプロジェクトです。それだけ難しいということも言えます。
そこで、次のページ、十ページに行っていただきますと、ITERの目的をまとめてあります。
ITERですが、インターナショナル・サーモニュークリア・エクスペリメンタル・リアクターの略ではありますが、ラテン語で道という意味も持っております。
ITERは、炭酸ガスフリーなエネルギー源となる商業用核融合炉に至るまでの道です。ITERは、国際協力でして、パワーの増幅器です。約十倍の増幅能力を持っております。後ほどまた説明いたします。それに対して商業炉は、私はマネーアンプリファイアーだと申しています。電力を出しますので、売れるわけです。したがって、ビジネスになるわけです。その前の段階がITERです。
二つ目のポチは、核融合エネルギーの安全性の実証です。それから、科学的、技術的に利用可能であることを実証するための実験炉であります。
ITERは、五万キロワットのエネルギーを入れて、五十万キロワットの出力を出します。ですから、十倍のエネルギーを出します。これで核融合ができるということを日本の皆様及び世界に示すことを目的としていまして、その次に進むかどうかは、このITERの参加国も独自に進めていく手はずになっております。
日本は間違いなく行ってくれると思いますし、ヨーロッパ、アメリカも恐らく。ただ、アメリカは石炭をたくさん持っておりますので、少しおくれるかもしれません。中国は非常に強力に進めております。
全ての知的財産、ノウハウですが、七つのメンバーが共有いたします。日本の出資は全体の九・一%ですが、結果は一〇〇%もらえる、こういう取り決めでございます。ヨーロッパは約四五%、やはりサイト国ですので。
設計、組み立てはITERが行い、参加七極は製造して、それを物納、物で納めるという形です。約二万三千トンの重さを持ちまして、部品の数も二万点。それから、建物は全体で三十五万トンの重量になります。非常に大きなプロジェクトです。
次のページですが、ITERの現状を申し上げたいと思います。
私もITERを離れて二年ぐらいたっておりますので、その内情は一〇〇%理解していないところがございますが、まず、私のいるときから申し上げていたことは、ITER計画はターニングポイントを通過し、夢が現実の目標になっているんだ、これが重要なことです。頂上はまだ先だけれども見えているということが申し上げられます。したがって、各国の取り組み方は真剣度も増してきていると私は見ております。
現在、やはり大きなプロジェクトであるがゆえの困難というのはありまして、正直に申し上げますが、数々の、種々の要素を加味して、コストと計画の改定が行われました。
これは文部科学省からいただいた資料です。運転開始が、二〇二〇年の十二月が二五年、約五年のおくれ。核融合の運転開始、先ほどの五十万キロを目指しての燃焼実験、重水素、三重水素、これが二〇二七年から二〇三五年。終わりはなるべくおくらせないようにしようという計画ですし、そのめどもつきつつあります。
やはり先生方にぜひお願いしたいのは、計画が延びるということによって、経常経費、インフレの影響、それから、新しい技術の開発の結果、新しいことを入れてくるといったことも発生いたしますので、どうしても現在の見積もりで五百七十億円ぐらいが必要になってくるということが現状でございます。しかし、投資効果は十分にあるはずだ、こういうふうに強く申し上げたいと思います。
そして、我が国が準ホスト国としてのリーダーシップをさらに発揮していただきたい、こういうふうに思うわけです。
その下の写真ですが、こういう一こまも五年間の私の在任中にありました。
左側は、二〇一三年の大臣級会合でございます。EUのエネルギー担当コミッショナー、エッティンガーさん、それからフランスの科学技術大臣が、女性の方です、来ていただいています。それから、日本からは文部科学省の福井副大臣が来てくださいました。
そして、その次の年には、当時のEUのバローゾ大統領が訪問してくださいました。この写真は、スタッフの前でスピーチをしていただいたときの写真です。
その次のページを見ていただきたいんですが、建屋の建設が進んでおります。トコマックピットの大きさは、八十掛ける百十の、建物の高さは六十メーターです。左下のとおりです。四百九十三本の免震構造体が支えております。これは、フランスの原子力発電所は全てそういう構造になっていまして、免震構造体が下にあります。日本では、ないことですね。
右側の図は、最もクリティカルなパスである建屋です。横軸がちょっと見にくいんですが、一番右が現在、それから右から三番目が二〇一五年で、私が離任したあたりですが、青い線が作業量、作業者の人工を示していまして、右肩上がりで作業量がふえている。これは、順調に進んでいるんだということを示すわけです。私も大変心強く思っております。
それから、次のページへ移らせていただきますが、主要機器を示しております。超電導コイル、真空容器等で、旗がありますが、各国の分担でして、大事なことは、二万三千トンの機器のうち、我が国は主要な機器をとっているということでございます。これは、技術的なノウハウが十分たまる構造になっております。
それを示したのが十四ページでして、いろいろな分担で、詳細は省かせていただきますが、超電導関係、材料関係、赤い字が日本のところです。計測装置等も日本はとっております。日本は、基本的にはおくれは発生しておりません。大変頑張ってくれております。
次が、やはり安全性というのは非常に重要なので、二ページ使って、簡単ですが説明させていただきます。
まず十五ページですが、福島やチェルノブイリのような事故は核融合プラントでは起こりません。その理由は、燃料のプラントの中の量が一グラムだからです。十六ページにもありますが、原子炉との比較をしています。
核融合炉の場合は、炉心にある燃料が一グラムで、石油八トン分のエネルギーしかありません。ですから、万一何か起こっても、そのエネルギーの被害の範囲でおさまるわけです。これは大きい。
ところが、原子力の場合は、これも非常に安全性に配慮はされているわけです。私は批判するつもりは全くありませんが、五百トンの燃料をあらかじめ炉心に入れて、少しずつ燃やしていくわけです。だから、制御ができなくなると福島のようなことになってしまう。この違いが大きいわけですね。
核融合炉は、原子炉より技術的に高度であって、複雑でございます。したがって、つくることは難しいわけです。原子炉に比べると随分おくれて、まだ実現していないという事実がそれをあらわしております。しかし、安全性は高いということが言えます。これが大きな点です。ですから、十五ページの三つ目のポチに書きましたが、どのような異常が生じてもプラズマを停止できるんだと。
それから、十五ページの上から三つ目のポチにありますように、私はニュークリアオペレーターを務めましたので、日本でいえば原子力規制委員会の対象になるわけでございます。その中で、安全に求められる要素というのは、放射性物質の閉じ込めと周辺への被曝、その二つだけでございます。
では、ちょっと急がせていただきます。
十七ページ、これは日本の今後を示しております。やはりITERを成功させて、今の日本の基盤を有効に使って次の段階に進もうという計画です。二〇五〇年を目途にしております。
それから、十八ページ目ですが、世界も実用炉に向けてのロードマップがITERの進展とともに進んできています。
特に中国について述べさせていただきます。習近平主席が二〇一一年に研究所を訪問している写真を見せておりますが、中国は本気でありまして、大学に核融合学部を新設して、人材の養成等も進めております。それから、ITERの装置もつくろうとしております。日本は絶対負けてはいられないと思います。
それから、低放射化材料の開発が必要ですが、これは六ケ所村の研究所で進んでおります。
それから、十九ページ、二十ページは、もう一つの方式でありまして、私が二〇〇九年まで所長をしておりました。こういうヘリカルなコイルを使います。絶対にできないだろうという装置を一九九八年に完成して世界をはっと言わせたんですが、これは、私はプロジェクトマネジャーをしましたが、期限内に予算内につくらせていただきました。そういうことも評価してITER機構長に推挙されたと思っております。
最近、重水素の実験が地元の御了解も得て始まって、一億度の発生に成功しております。こういうアクティビティーがあります。
それから、その次のページ、二十一ページを見ていただきたいと思いますが、民間活力の参入とその必要性です。
世界的には数多くの企業が参入し出しております。左側のリスト、ちょっと見にくいと思います。アメリカ、カナダ、ヨーロッパ等ですが、日本も一社ございます。我が国にはまだその機運は醸成されていないというふうに思います、もう少し活発になってほしいと。
民間の開発意欲は、ビジネスそのものですから、高い活力を持ち、リスク評価もきちっと厳格に行って、決断も早く、責任の所在も明確です。
右の方に、ジェネラルフュージョンというカナダの企業がございますが、百億円を集めて、七十人の社員を雇って、ビジネスとしての研究をしております。私はその科学アドバイザーも務めております。
イノベーションについてですが、二つ御説明したいんです。
一つは、二十二ページ、地磁気が今消滅しようとしています。千年後にゼロになります。そうしますと、生命体の危機が訪れる可能性がありますので、核融合の技術を使って、十二本の鉢巻きを巻いて、今の約十分の一の地磁気を発生させると、飛行機にも乗れるし、地上の水とか空気が太陽風、太陽からの放射線ではじき飛ばされて火星とか月のようになることを防ぐことができるという構想です。火星と月は地磁気がないんですね。ですから、ああいう世界になっております。詳細は省かせていただきます。
コストですが、私の見積もりでは一千兆円です。GDPと比べて、人類がもし滅亡するかもしれないというときにはこれぐらいの出資は得られるんじゃないかと。これは極端なイノベーションです。
もう一つは、次のページ、二十三ページを見てください。これは、私が学事顧問をしております春日井にあります中部大学の超伝導センターでの結果を紹介しております。やはり超電導技術です。
既に、一キロメーターの五万キロワットの送電線の開発に成功しておりまして、この応用例は、シベリアにある豊富な天然資源をシベリアまたはサハリンで発電して、ロスがほとんどない超電導線で持ってくると、海の中を通すわけですが、日本に大量のエネルギーを確保できる、そういうことに役立つはずだということで開発しております。現在、次の十キロのラインの建設を進めようとしております。これは比較的近未来のイノベーションです。
そのほか、先ほど申しましたが、多くのイノベーションがありますし、例えば、超電導になりますが、NMR等の技術にも使われております。
二十四ページ、二十五ページ目は私のまとめでございますが、読んでいただければと思います。
機構長時代に、各極との契約行為、プロキュアメントアレンジメントを九〇%結んだということが非常に大きなことの一つと考えております。その結果、現在、物がサイトへ搬入され出している。
二十五ページでございますが、七つの参加極とITERチームに対して、ITERの進展に対する大きな努力に心から敬意をこの場をおかりして表させていただきます。そして、感謝しております。
設計段階から製作、インフラ建設に移行しており、物品も製作が開始され、ITERは、建設の進展により、既に折り返し地点を通過しております。
ITERにかかわる我々の目的と責任というのは、ITER建設の進展を社会に開示して、その全容、コスト、スケジュールにかかわるリスクを関係者とステークホルダーが容認できる範囲に抑えることだと肝に銘じております。
そして、我が国に強くお願いしたいことは、今後も準ホスト国として最大の努力を傾注して全ての課題に挑戦していただきたい。巨大かつ複雑な国家プロジェクトの性質、初期条件に由来する困難を乗り越え、ITERのプロジェクトを完成へと導くためでありますが、それが我が国が得られる利益の最大化につながると確信しております。
我が国の強力なコミットメント参画によりまして、ITERプロジェクトを俯瞰するITER機構の組織、協力の文化そして仕事のプロセスに抜本的な変革が進むと期待できます。これを確信しております。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
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○島津委員 日本共産党の島津幸広です。
きょうは、貴重な意見、お話をありがとうございました。
核融合の話を聞きまして、私は、若いころに見た映画の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」というのがあるんですけれども、あれを思い出したんですよ。車型のタイムマシンで過去、未来を行き来する映画ですけれども、最初の燃料はプルトニウムだったんですよね。ところが、未来から帰ってきたら、生ごみだとか空き缶だとかを入れてエネルギーにしている。身近なものがエネルギーになるという点で、非常にそういうことを思い出したんです。
きょうも話されましたけれども、先生も、二〇〇八年十月のプラズマ・核融合学会誌で、宇宙に高度文明が発見された場合の話として、一万年以上続いている社会では必ずや核融合エネルギーを実現していることでしょうと書かれていました。これを読んで、非常に夢とロマンあふれる話だというふうに感じたわけです。
人類初の核融合炉の実現を目指すITER計画ですけれども、しかし、これはまだ本当に初期段階にあるわけです。しかも、きょうも話がありましたけれども、スケジュールが遅延し、それによりコストも増大する。追加費用は五十二億ユーロ、約六千五百億円で、日本の負担は、分担は九・一%ですから、約五百七十億円ほど。昨年のITER機構の理事会では、この負担決定は暫定とされたと聞きます。各国がその負担増分の引き受けを国内でまとめられるかどうかわからないからだ、こういうわけです。
日本国内でも、科学技術に対する予算は心細く、福祉や医療などが削られる中で、国民の皆さんも予算の使い方には厳しい目を持ち始めています。「もんじゅ」にこれまで一兆円の国費を使ってきたことに対する批判の声も高いものがあります。
先生は、「学術の動向」二〇〇九年四月号で、サイエンスの発展を続けるための原則を六つ挙げられています。そのうちの一つに、社会への発信、これを指摘しています。学術に携わる人間は社会に正確に発信していかなくてはならない、これでないとサイエンスの発展がない、こういうわけです。これは国民の税金を投入している政府にも言えることだと思うんです。
しかし、現状、国民の皆さんがこのITER計画に対してどれだけの理解があるのか、先生の御認識と今後の課題、また、政府としてやっていかなければならないこと、やってほしいことなど、率直な御意見をお聞かせ願いたいと思います。
○本島参考人 日本の国民の皆様の核融合に対する認識は、私どもの努力不足もあって、まだまだ不十分なところはあると思います。やはり、それをよりよく御理解いただくためには、特にITER計画でその着実な進展を示すことが必要である。
今、ターニングポイントを過ぎて、やはり胸突き八丁のところでございます。ですから、これを乗り越えるべく、いろいろな応援をいただけるととてもいいな、こういうふうに思うわけです。
御質問に直接お答えすべきことは、やはりまだまだ社会への発信というのは、こちら側が十分だと思っている部分はないとは思うんですが、不十分で、これからも努力してまいりたい、こういうふうに思います。
○島津委員 ありがとうございました。
ぜひ、政府としても、やはり国民の皆さんへの発信、理解を得ながら進めていくというのは大事だと思うんです。
次に、核融合と核分裂、よく比較されるわけですけれども、きょうもお話がありました。
核融合では、福島第一原発事故のように暴走はしない、核融合反応を速やかに停止することが可能だ。また、原発の場合は使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物が発生しますけれども、その処理技術がまだ未確立だ。これに対して、核融合では高レベル放射性廃棄物は発生しない、低レベルは出るんですけれども、これはこれまでの技術で処理、処分できるというわけです。
先生も、ITER機構の特別インタビュー、これを読ませていただいたら、その中で、「原子力の場合、炉心に大量の燃料をあらかじめ装填して、少しずつ制御棒を抜きながら燃やしていきます。制御不能になるとメルトダウンをおこしてしまいます。そういったリスクが非常に少ないのが核融合炉だといえます。福島第一原発のような事故は、核融合炉では、絶対におきません。」こう述べられているわけです。
さまざまなところで原発に比べての核融合の安全性を指摘されているわけですけれども、しかし、これは逆に言いますと、核融合に対して、核分裂を利用する原発は問題が多く、リスクも高いということの裏返しなわけです。原発の負の遺産がどうなるのか。これは今でも、廃炉の作業というのは非常に長期間、長い年月がかかるわけです。処理できない高レベル放射性廃棄物、使用済み核燃料などをどうするかという問題もあるわけです。
私たちは、そういうことを考えると、これ以上、リスクのある原発をふやしていくことはどうなのか、原発から手を引いていくべきではないかと思うんですけれども、この問題での先生の将来的なお見通し、またお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○本島参考人 まず、非常に重要なことと思いますのは、長期的なビジョンが必要になってくるのではないか。日本の国力で核融合の実証炉ができて、電気を発電して、それで三割とか五割とかを賄おうというふうにしていくためには、一年間に一個発電所を核融合でつくっても、百年で百台にしかならないわけですね。ですから、やはり百年ぐらいはかかる。
ですから、その間に政策を維持していただく必要がありますし、将来的には、核融合炉が百台になれば、それは原子力はもう役目が、御苦労さまでしたということは、私が生きていれば言えると思いますし、その間はいろいろな方法をミックスして考えていっていただく必要がどうしてもあるんじゃないか、こういうふうに思います。
○島津委員 ありがとうございました。
もう一つ、核融合は原発と比べて安全性が高いわけなんですけれども、しかし、リスクがないわけじゃないと思うんです。
例えば、核融合炉での爆発というのはまずないわけですけれども、電気系統などからの爆発なんかは想定されるんじゃないかと思うんです。もちろん、高レベルの放射性物質が拡散される原発に比べて被害は桁違いに少ないわけですけれども、リスクはゼロじゃないと思うんです。安全神話をもとに進められた原発の苦い教訓もあります。
核融合炉の開発に当たって、原発との違い、あるいは安全性を強調することとともに、さまざまなリスクも想定して、国民の皆さんにも示して、理解を得ながら進めていくということの必要があると思うんです。
どういうリスクがあるのか、その点、どう国民の皆さんにお示ししていくかということでお話しください。
○本島参考人 その点、ITERでの経験、つまり、フランスの原子力規制当局、ASNからライセンシング、許可を受けたと。その中には、フランスの原子力規制法に基づく縛りを全て受けておるんです。そのことが大変重要な実績になってくると思いますが、やはりその中ではリスクは明確にしております。
放射線的には、何か起こる、例えば上からボルトが落ちて八百立方メーターの一億度のプラズマに当たった、そうすると、プラズマは一遍にとまってしまうわけですが、トリチウムは放射性物質ですから外へ出てくるわけです。それで、エバキュエーションと申しますが、人の避難とかの計画も立てて、それで許認可をいただいています。被曝量については、事故時でも、一般の皆さんには自然放射線レベルで抑えられるような基準でつくっております。
それから、地震ですね。今のITERのサイトは、日本で起こるような大陸移動説型の地震は起こらないんですが、やはり局地型の地震はあります。それに対しては、震度七までもつような構造をつくって、それで建物等の許可をいただく。
それから、津波は来ないんですが、上流にデュランス川という大きな川があって、大きなダムがあるんです。そこからフランスの場合はかんがいをしておりまして、発電もしているんですが、豊かな農地をつくっているんです。そこのダムが決壊したときにどうなるのか、こういう評価もしています。これは十五メーターぐらい水位が上がるんです。津波はないといって安心していられないわけでして、リスクとしてはそのリスクが結構怖いものだというのが後で結論として明確になったんです。
そういったことを、日本でいえばいわゆるパブコメをいたしまして、フランスの場合はコミッションをつくって、そこで一般の皆様からの二万件ぐらいの質問を受けましたけれども、対応させていただきました。
そういった経験というのは、私は成功した経験だと思いますから、ほかの国にも応用できることなのではないか、こういうふうに思っております。
以上でございます。
○島津委員 どうもありがとうございました。
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○島津委員 二回目ですが、よろしくお願いいたします。
ちょっと角度を変えるんですけれども、核融合の研究開発は、二〇一六年四月に、当初の日本原子力研究開発機構から分離されて、放射線医学総合研究所から名称変更された量子科学技術研究開発機構に移されました。この量研機構のホームページを見ますと、「量子科学技術に関する研究開発や放射線の人体への影響、被ばく医療並びに放射線の医学的利用に関する研究開発等の業務を総合的に行うことにより、量子科学技術と放射線医学に関する科学技術の水準の向上を図ることを使命とします。」こうありました。
日本原子力研究開発機構は福島の原発事故後も国策として進められている原発の推進を担って、核融合の研究開発は医療の研究や技術とともに進めていくというふうに読めるんですけれども、このことで、核融合の研究というのは格下げされたんじゃないか、こういう意見を聞きました。
移行した経緯、もし承知しておられるようでしたら教えていただきたいし、このことに対する先生の御認識をお伺いしたいと思います。
○本島参考人 そのときはまだフランスにおりました関係で、余り詳細には存じておりません。
ただ、私の経験でも、幾つかの大学共同利用機関、核融合科学研究所もそうですが、全部で十六、そのころはありましたけれども、二〇〇三年でしたか、四つの大きな研究機構に統合されて、マネジメントの強化とそれから予算等の合理化が図られているわけです。
私が承知しておりますのは、外から見ておりましたので不正確な点があるかと思いますが、やはり当時の原子力機構が、非常に大きな組織になっておりますし、サイクル機構を随分前に統合しておりますし、「もんじゅ」のこと等もまだ懸案事項として残っておりましたので、原子力とは違う、核融合を分離するという力が働いたのではないか、こういうふうに思っております。
決して格下げではないというふうに、彼ら自身が頑張っていただきたい、こういうふうに思いますし、頑張っていると思います。やはりITERの直接の担当部局ですから、しっかりしていただきたい、こういうふうに思います。
○島津委員 ありがとうございました。