しまづ幸広(日本共産党元衆議院議員)-浜岡原発廃炉、静岡から政治を変えよう
国会質問

質問日:2017年 6月 7日 第193国会 内閣委員会

地域の公共交通をどうするかー運転免許自主返納したあとの足ー

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島津委員 日本共産党の島津幸広です。

 きょうは、高齢ドライバーの交通事故とその対応についてお聞きしたいと思っています。

 最初に、幾つか確認をいたしますけれども、運転免許を持っている人のうち満七十五歳以上の方の割合、そして直近と十年前について教えてください。あわせて、今後の推移の見通しもお示しください。

井上政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年末現在、運転免許保有者に占める七十五歳以上の者の割合は全体の約六・二%となっております。七十五歳以上の運転免許保有者数は年々増加傾向にあり、十年前と比較して、その割合は約一・九倍となっているところでございます。

 また、この割合につきましては、今後さらに増加するものと見込まれておるところでございます。

島津委員 次に、交通事故のうち死亡事故の件数、直近と十年前はどうなっているのか。そのうち、満七十五歳以上のドライバーの件数と全体の事故との割合はどうなっているかを教えてください。

井上政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの交通事故による死亡事故の件数でございます。十年前は、平成十八年でございます、五千七百十三件でございましたが、平成二十八年、昨年は三千四百十件となってございます。

 そのうち、七十五歳以上の運転者による死亡事故は、平成二十八年中は四百五十九件となっておりまして、全体の死亡事故の約一三・五%を占めております。十年前、平成十八年と比較いたしますと、死亡事故件数はほぼ横ばいであるものの、全体の死亡事故件数が年々減少しておりますため、全体に占める割合は、高齢の運転免許保有者の増加を背景として増加傾向にございます。

島津委員 今お答えしていただいたように、全体の死亡事故は減少しているけれども、満七十五歳以上のドライバーの死亡事故はほとんど変わらず、割合はかなりふえていると。これは、配付資料でもお配りしましたので一目瞭然だと思うんです。

 それでは、高齢ドライバーの事故、この対策をどうとってきたんでしょうか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御説明申し上げましたとおり、高齢運転者の交通事故情勢は厳しく、また、今後、高齢運転免許保有者の一層の増加が見込まれますことから、高齢運転者の交通事故防止対策は喫緊の課題であると認識をいたしておるところでございます。

 このため、平成二十七年に道路交通法を改正いたしまして、認知症のおそれのある高齢運転者をよりタイムリーに把握し、医師の診断を受けていただくこととし、また、認知機能が低下しているおそれがある方などに対する高齢者講習におきまして、実車指導の際に運転の様子をドライブレコーダーで記録し、その映像に基づいて個人個人に具体的なアドバイスを行うこととしたところでございます。

 この改正法は本年三月十二日に施行されたところであり、高齢運転者による交通事故の防止に向け、引き続き、その円滑な施行に努めてまいりたいと考えておるところでございます。

島津委員 まだ施行されたばかりですけれども、高齢者の運転免許の自主返納、これが進んでいると思うんですけれども、実態はどうなっているんでしょう。

井上政府参考人 お答えいたします。

 運転免許の申請取り消し、いわゆる自主返納の件数は近年急増しておりまして、平成二十八年中は三十四万五千三百十三件でございます。前年対比では五万九千七百九十九件増加いたしております。

 七十五歳以上の方に限りましても、平成二十八年中は十六万二千三百四十一件でございまして、前年対比では三万八千四百二十八件増加いたしているところでございます。

島津委員 増加しているとはいえ、まだまだこのところはこれからの課題だと思うんです。

 朝日新聞の四月六日付で、免許返納、高齢者をどう説得、こういう記事が出ました。私はコピーも持ってきたんですけれども、熊本県のことを紹介しているんですね。

 熊本県では、二〇一五年二月から、運転免許センターに三人の看護師を配置して高齢者の相談に応じて、必要と思われる高齢者に返納を促しているそうなんです。

 運転適性相談窓口で相談を待つだけじゃなくて、免許更新の書類を書く高齢者の様子を見て気になった人に声をかける。看護師ですけれども、ちょっとお手伝いしましょうかなどとさりげなく声をかけて、人目のつかないスペースに誘導する。生年月日などを尋ねるとすぐに答えられない、こういう方がいる。そういう認知症が疑われる人には受診を勧めることになるんですけれども、ここからが難関だというんです。

 認知症という言葉は極力避けて、高齢者の事故が多いですよね、健康診断を受けてみませんかなどと切り出す。しかし、多くの高齢者は、自分は大丈夫、事故は一度もないなどの反応が返ってくるといいます。ですから、お元気ですものねと受けとめつつ、少し物忘れが多いですので調べてもらいませんかなどと粘り強く話をつないでいるそうなんです。

 看護師さんが自主返納を勧める際に心がけていることとして、運転の目的や背景を本人や家族からよく聞き取ること、そして、その問題が解決されないと、この自主返納の決断が難しい。ですから、こういうところに切り込んで、高齢者の尊厳も尊重しつつ、心情にも訴えながら対応しているというんです。

 警察庁にお聞きしたいんですけれども、こうした高齢者本人や家族からの相談を専門的に受け付ける運転適性相談窓口、この熊本県のように看護師や保健師が配置されている、こういうケアに当たっているというのは、これは全国にどのぐらいあるんでしょうか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 全国の運転免許センター等に設置されております運転適性相談窓口では、専門知識の豊富な職員により、病気や障害で運転に不安のある方やその御家族からの相談に応じているところでございます。

 平成二十九年四月時点におきまして、十七都県警察において、運転免許センター等に看護師や保健師といった医療系専門職員を計三十名配置いたしまして、運転適性相談業務に従事させているものと承知いたしております。

島津委員 熊本の例では、自主返納に交付される運転経歴証明書、これを使っていろいろなサービスを受けられるんですけれども、そういう紹介をしたり、あるいは介護サービスなども希望する人には紹介する、こういう免許の返納後のフォローもしっかりやっている。ですから、この新聞報道だけ見てもかなりの効果を上げているんです。

 今、十七ということでお答えがあったんですけれども、昨年までは十だったんですよね、七ふえたんですけれども。これだけ高齢者の死亡事故、交通事故がふえていて、免許の問題が問題になっているんだけれども、そこのところを本当に進めてもらう点で、こういう体制というのは非常に大切だと思うんですよ。だけれども、余り進んでいない。これは、何で全国的な取り組みになっていないんでしょうか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 医療系の専門職員が運転適性相談を行うことによりまして、その専門的知識を生かした対応が期待できると考えているところでございますが、地域の実情によりましては、都道府県警察において看護師や保健師といった医療系専門職員を確保することが困難な場合や、予算的な制約から配置を断念する場合があるものと承知をいたしております。

 いずれにせよ、御指摘のような取り組み事例を都道府県警察と共有し、相談体制の充実に努めるよう指導をしておるところでございまして、引き続き、このような取り組みを推進してまいりたいと考えておるところでございます。

島津委員 全国の運転適性相談窓口にこうした専門家を配置するのは非常に大事だと思うんですけれども、これは自主的な取り組みということで、お任せじゃなくて、やはり国が、大臣、国としても積極的にかかわって進めていくべきだと思うんですけれども、どうでしょう。

松本国務大臣 看護師や保健師といった医療系専門職員を運転免許センター等に配置して運転適性相談に当たらせることで、その専門的知識を生かした対応が期待されるところでございます。

 このような取り組みは、相談に来られる方やその御家族にとっても大変有意義であると認識をしておりまして、全国に広げていくよう、警察を指導してまいりたいと思います。

島津委員 ぜひ、全国でこうした取り組みが広がるようにしていただきたいと思うんです。

 次に、二〇一五年の道路交通法の改正の際に、附帯決議が全会一致でつけられています。この中で、高齢者の免許自主返納に関する部分、これを紹介していただけますか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の附帯決議のうち、特に自主返納に関しては、附帯決議の第五項及び第六項におきまして、「運転免許の自主返納制度について、その周知や相談体制の充実等を図るとともに、認知機能の低下等により運転免許の自主返納が困難な場合には、家族等周りの者の負担が過度にわたることのないよう配慮しつつ、社会全体で取り組むべき問題であるとの認識の下、必要な措置を講ずること。」「運転免許の自主返納等の理由で自動車等を運転することができない高齢者の移動手段の確保については、地方自治体等とも連携しながら中長期的な視点も含め適切に対策を講じていくこと。」と規定されております。

島津委員 松本大臣にお聞きしたいんですけれども、この附帯決議の部分、運転に不安のある高齢ドライバーの不幸な事故をなくすためにも非常に大事な指摘だと思うんです。この決議から二年近くたつんですけれども、ここで指摘された対策、これは実現されているというふうに思っているんでしょうか、認識を。

松本国務大臣 高齢運転者対策を進めていくに当たりましては、附帯決議の趣旨を踏まえ、高齢運転者の負担等にも配慮しつつ、社会全体で取り組みを進めていくことが重要と認識をしております。

 また、昨年十一月の関係閣僚会議におきまして、高齢運転者対策に政府一丸となって取り組むよう総理からも指示がなされたところでありまして、警察といたしましても、これらを踏まえ、改正道路交通法の円滑な施行に努めるとともに、警察庁において高齢運転者交通事故防止対策に関する有識者会議を開催するなど、関係府省と連携しながら、さらなる対策について検討しているところでございます。

 引き続き、高齢者の事故防止に向けて、関係機関、団体と連携しつつ取り組みを進めるよう、警察を指導してまいりたいと存じます。

島津委員 まだまだ十分な対応がされていないというのが現状です。いろいろな課題があります。

 実は先日、我が党に福井県越前市の八十一歳の男性から次のような手紙が来たんです。自主免許返納の場合の一番の問題は、公共交通機関が弱い地域の在住者は交通弱者となり、日常の買い物や病院などに行くにも不便になることです。自治体は市民バスを出していると言いますけれども、停留所までの距離が遠く、回数が少ないので、タクシーに頼っています。私も、がん手術を二回受けましたので、八年前に運転免許を返納し、毎月タクシー代を二万円から三万円払っている。

 通告をしていませんけれども、加藤大臣、大臣は高齢者運転対策、特命で大臣を担当されているわけですけれども、各地で現状を訴えて、対策、支援を求めているんですけれども、こういう声を聞いて、どのような感想をお持ちでしょうか。

加藤国務大臣 私の選挙区もどちらかというと中山間地域が多いところでございまして、そういう中で、そもそも、足の確保というのが大変大きな課題であり、また、そういう中で、今言った認知症等によって免許を返納するということになると、その地域で住むというのは非常に難しい状況に置かれる方々もおられる。

 そういったことで、今回の交通安全対策の中においても、こうした足の確保というのも一つの柱として取り組んでいきたいと思っております。

島津委員 今あったように、免許を自主返納した人がこれまでと変わらない生活を送るためには、足の確保、公共交通の整備というのが不可欠なわけです。これは、免許自主返納者に限らず、高齢者を初め要支援者にとっても強く望まれていることなわけです。

 私は、愛知県の蒲郡市に行って話を聞いてきたんですけれども、蒲郡市は四人に一人が六十五歳以上、高齢化率は愛知県の中でも二番目、JRの東海道本線が通っているんですけれども、市民の足は専ら名鉄の電車と路線バス。ところが、この電車も、利用客が減って赤字、蒲郡市と隣の西尾市の負担がなければ廃線もあり得る、こういう状況になっている。また、市内を走る民間路線バスも廃止、縮小が進んでいるんです。

 市民病院があるんですけれども、この病院に行くためには、朝、路線バスがあるからそれに乗っていくんだけれども、帰りにはバスの路線がないからタクシーで帰らざるを得ない、こういう地域もあると聞きました。

 蒲郡市に限らず、各地の地方自治体が苦労しているわけですけれども、この公共交通の維持、確保のために、国はどんな支援をしているんでしょうか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 高齢化が急速に進行する中、高齢者が自家用車に依存しなくても安心して移動できるよう、地域の公共交通を維持し、移動手段を確保することは大変重要であると認識しております。

 このため、国土交通省としては、地域公共交通確保維持改善事業により、幹線バス交通、コミュニティーバス、デマンドタクシーを初めとする地域内交通や、離島の生活交通の維持、地域鉄道の安全対策等の取り組みを支援するため、平成二十九年度予算において約二百十四億円を計上しているところであります。

 このほか、訪日外国人旅行者の移動の円滑化に資するバリアフリー設備や、交通系ICカードの導入などについては、訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業約八十五億円の内数、また、地域鉄道の安全性向上に資する設備の更新等の一部については、鉄道施設総合安全対策事業約四十二億円の内数をそれぞれ計上しているところでございます。

島津委員 今お答えしていただいたんですけれども、バス一つとってみて、広域の複数の自治体をまたぐ路線バスの支援というのは、これはあるわけですけれども、では、一つの自治体の中での民間路線バスの支援というのはあるんでしょうか。

松本政府参考人 コミュニティーバスを初めとする、地域内、一つの市町村内のですね、地域内の公共交通は、高齢者を初めとする地域住民の移動手段として極めて重要な役割を担っていると認識しております。

 このため、国土交通省といたしましては、先ほど申し上げました地域公共交通確保維持改善事業によりまして、過疎地域などにおけるコミュニティーバスやデマンドタクシーなどの運行に伴う赤字や車両購入に対する支援を行っております。

 これらについては、平成二十九年度予算の全体の事業の約二百十四億円の内数で支援することとしております。

島津委員 コミュニティーバスは、民間の路線バスなんかが廃止されちゃって、いよいよ困って自主的にやっていくわけなんですけれども、複数の都市、自治体をまたぐ基幹的なバスの支援はあるけれども、自治体の中で完結するバスの路線への支援はやっていないわけですよね。

松本政府参考人 済みません、先ほどちょっと御説明が足りなかったと思いますが、複数の市町村をまたぐ幹線バス交通に対しての赤字については補助をしております。

 さらに、その幹線バスに接続する、フィーダー路線と言っておりますけれども、接続するようなコミュニティーバスでありますとかデマンドタクシー、それは一つの市町村内に限っても構いません。大体一つの市町村内にとどまります。

 あと、それに限らず、例えば、過疎地域等における鉄道駅に接続するコミュニティーバスでありますとかデマンドタクシーでありますとか、過疎地域における幹線バスに接続するようなコミュニティーバス等に対しても、一市町村内にとどまっておっても補助をさせていただいているところでございます。

島津委員 民間の路線バスの話をしているわけで、やはりないんですよ。複数またぐものはあるんだけれどもね。やはり、今求められているのは細やかな生活の足の確保なんです。

 民間の公共交通が衰退する中で、この蒲郡市では、今もお話がさんざん出てきましたけれども、ある一つの地区でコミュニティーバスを走らせています。定員が九人、病院だとかスーパー、公民館、名鉄の駅などを回る。右回り、左回りというのがあって、一日計六便出ていて、運賃は、大人百円で、子供五十円。これに対する市の財政支援は年間四百万円弱だと聞きました。

 評判がいいわけですから、ほかの地域でもやってほしいという声が上がるんですけれども、なかなか、財政問題もあって、ほかの地域でも要望はあるけれども実現しないという話でした。

 こうした、今も支援しているという話でしたけれども、コミュニティーバスの国の補助金というのは、これは金額としてどのぐらいあるんでしょうか。

松本政府参考人 予算としては内数でございますが、実績で申し上げますと、平成二十七年度の実績でありますと、約三十四億円でございます。これは、コミュニティーバスに限らず、乗り合いタクシーとか、もっと小型のものも含めての金額でございます。

島津委員 それで十分かどうかというのがあると思うんですけれども。

 今では、地域のコミュニティーバスの運行、これはふえているとはいえ、まだまだ少ない。住民の皆さんが希望しても、財政的な理由で実現していないわけです。

 静岡県の掛川市でこんな話を聞きました。掛川市や袋井市を初めとする地域に、中核の、中東遠地域の基幹病院があるんです。中東遠総合医療センターというのがあるんですけれども、掛川市も、この地域のコミュニティーバスで病院まで走っていて、料金は百円だそうです。

 ところが、掛川市というのは、旧大東町や大須賀町と合併した市で、旧掛川市からはこのコミュニティーバスが出ている。ですから、そこの皆さんはそれに乗っていく。

 ところが、その合併する前の大東や大須賀の皆さんはコミュニティーバスがないわけですから、病院に行くのにどうするかというと、地域の路線バスが十分でないから、やはりタクシーに頼らざるを得ないというんです。

 ですから、病院の待合室でこんな会話があるというんですよね。俺は百円で来た、同じ市民ね、同じ市民なのに、私はタクシーで数千円かかった、こんな会話があるというわけです。同じ市民なのにこのような差が生じているわけです。

 政府が取り組んでいる対策でも、高齢運転による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議では、「社会全体で高齢者の生活を支える体制の整備を着実に進めてまいります。」と述べているわけです。

 しかし、地方に行けば行くほど、公共交通機関の整備が急速に今求められているけれども、財政基盤は弱い。社会全体で高齢者の生活を支える、こういうことで、地方自治体だけに押しつけていたらだめなわけですよ。

 やはり、今紹介したような不合理な問題を解決するために、国としてどうしていくつもりでいるんでしょうか。

松本政府参考人 地域の公共交通につきましては、地域公共交通活性化再生法というのがございまして、それぞれの地方公共団体が地域の最適な公共交通網というものをつくるという仕組みがございます。

 それに対して、我々は、計画づくりに対する支援でありますとか、さらに、計画ができたものに対するバックアップをさせていただいているということでございます。

 いずれにしましても、この地域公共交通活性化再生法というのがございまして、地方公共団体がまずは、一番地域の実情を御存じですから、その交通の計画、ネットワークのあり方をつくっていただいて、それに対しては国はバックアップをしていくという形になっております。

島津委員 まだまだ不十分ですので、しっかりやっていただきたいと思うんです。

 ちょっと時間がありませんので、次に進みますけれども、免許自主返納者のタクシー利用についてお聞きしたいと思うんです。

 先ほど手紙を紹介した越前市では、市民の要望を受けて、七十五歳以上の免許返納者のタクシー代金の一割引き、これが二月一日から実現したそうです。

 実は、私の住んでいる静岡県でも、タクシーの、自主返納者への一割引きがあります、制度が。

 ところが、見過ごせない問題があるんです。これは、タクシーの乗務員から、静岡県の沼津市の方から直接聞いたんですけれども、この一割引きした分が、乗務員いわゆる労働者の負担になっているというんです。

 タクシーの乗務員の給料、これは御承知だと思うんですけれども、稼いだ金額の取り分、これは歩合制なんですよね。五対五だとか、四・八とか五・二だとか。五、五の場合、例えば千円の料金で乗って料金を払ってもらうと、労働者の取り分が五百円で、会社の取り分が五百円。ところが、一割引きをした場合に、千円のところが九百円になっちゃって、だから、本来なら五百円のところを四百五十円しか労働者が収入にならない。要するに、この制度が労働者の負担になっている、こういう問題になるわけです。

 同じ割引制度でも、障害者の割引は会社負担になっているというんです。自主返納者の割引がタクシー労働者の負担で支えられている、こういう状況というのは掌握、承知しているんでしょうか。

早川政府参考人 お答えいたします。

 タクシー事業に要する経費を運転者に負担させるということにつきましては、平成二十六年に施行されております改正タクシー特措法、正確には特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法でございますが、この改正の際の附帯決議におきまして、事業者はそのような慣行の見直しに努めることとされているところでございます。また、この附帯決議におきましては、改正法の施行の状況や効果につきまして、三年ごとに総合的に検証を行うこととされているところでございます。

 これを受けまして、国土交通省といたしましては、現在、同法の対象地域のタクシー事業に対する調査を行う中で、御指摘の運転免許証自主返納者に対する割引ということを含めました公共的割引運賃における運転者の負担状況につきましても調査を実施しているところでございまして、これにより実態の把握に努めることといたしております。

島津委員 これから調査で実態把握ということなんですけれども、現に私も聞いているわけですから、これは沼津市で聞いただけじゃなくて、掛川市でも聞きましたし、静岡市でも聞きましたし。静岡市の場合は、あるタクシーに乗ったら、会社は最初、労働者負担を提案してきたそうなんですよ。労働組合があるものだから、それはおかしいんじゃないということで、交渉して、会社負担になった。会社によってばらばらなんですよね。

 これはちょっと、どちらかの大臣、通告してありませんけれども、お聞きしたいと思うんですけれども、運転者の負担になる割引料金というのは、ありがたくない客になってしまうんですよね、こうなりますと。みんなで支え合うという本来のあり方から外れると思うんですけれども、自主免許返納者の割引をタクシー労働者の負担にさせることはあってはならない、こう思うんですけれども、どうでしょうか。

加藤国務大臣 今、国土交通省の事務方からもお話がありましたけれども、附帯決議において、そうした慣行の見直しに努めるとされているわけでありますので、まず実態把握をしっかりしながら、そうした慣行の見直しが着実に進むよう、しっかりと努力していく必要があると思います。

島津委員 社会全体でということで総理大臣も言っているわけですから、ぜひ、ここのところは改善するように、政府としても国交省としてもきちんと役割を果たしていってもらいたいと思うんです。

 タクシー労働者の生活というのは本当に大変なんですよね、給料も低くて、過当競争で、会社の経営も大変だと。タクシーに乗ると、高齢者が多いんですよね。話を聞くと、給料が低いから、子育て中の若い人ではタクシーの乗務員をやっていられないというわけですよ。それだけ低い中で、そういう中で、国の旗を上げて自主返納でということでやっていて、一割引きだというのが労働者の負担になっているというわけですから、こんな不合理なことはありませんので、ぜひこれは改善していただきたいと思うんです。

 このように、自主返納を進めるために、警察庁が県警におろす、県警がタクシー協会に料金の一割引きを要請し、それに協会が応えて、協会が会社に要請して、どこの予算も使えないために、運転手が、労働者が泣くという状況になっているわけです。

 最後の質問になりますけれども、加藤大臣、ここまで指摘したように、高齢者の交通事故をなくすためには、さまざまな課題があります。こういう問題に対して、きちんと財政支援も含めて国としてどうするのかが今問われていると思うんです。担当大臣としての御決意をお聞かせ願いたいと思います。

加藤国務大臣 昨年、高齢運転者による交通事故、交通死亡事故が相次いで発生したことを受けまして、十一月に高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議を開催し、その際、総理から、改正道路交通法の円滑な施行、社会全体で高齢者の生活を支える体制の整備、一連の事故を踏まえたさらなる対策の必要性の検討について指示をいただいたところでありまして、これを受けて、私が本部長を務めます交通対策本部のもとに、関係省庁の局長等を構成員とする高齢運転者交通事故防止対策ワーキングチームを設置いたしまして、担当する省庁を中心に、スピード感を持って鋭意検討を進め、とり得る対策を早急に講ずるよう指示をしたところであります。

 先ほど警察庁からも答弁がありましたが、警察庁においては高齢運転者交通事故防止対策に関する有識者会議が開催され、また、国土交通省においても高齢者の移動手段の確保に関する検討会が開催され、それぞれ今、検討が進められているところであります。

 それ以外にも、経済産業省、国土交通省において、安全運転サポート車、今、サポカーと称しておりますが、の普及啓発に関する関係省庁副大臣等会議を設けられ、三月にも中間取りまとめが行われたところであります。

 これから、こうした検討結果を含め、この六月を目途に、関係省庁における検討及び対策の実施状況について全体的な取りまとめを行いたいと考えております。

 そして、早急に実施できるものについては直ちに実施をしていく、引き続き検討が必要なものについては継続して検討を行い、高齢者運転の交通事故防止対策が総合的に推進していけるように、関係省庁とも連携をしながら進めていきたいと思います。

島津委員 ぜひ、改正道路交通法の附帯決議に基づく取り組みをしっかりやっていただきたいということを求めて、質問を終わります。

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