しまづ幸広(日本共産党元衆議院議員)-浜岡原発廃炉、静岡から政治を変えよう
国会質問

質問日:2016年 3月 25日 第190国会 内閣委員会

雇用促進住宅についての質問(内閣委員会一般質疑)

○島津委員 日本共産党の島津幸広です。

 初めに、行革担当の河野大臣にお伺いしたいと思います。

 私は、先日の予算委員会分科会で雇用促進住宅の問題を取り上げましたが、二〇二一年度までに全廃という国の方針のもと、これから先どうなるのかと入居者の方々の不安は募るばかりです。

 雇用促進住宅はもともと、行革、特殊法人改革の中で、当時住宅を管理運営していた雇用促進事業団を解散して、新しい特殊法人、雇用・能力開発機構から、後に独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営することになりました。問題は、この特殊法人改革の中で住宅部門を切り離していったことなんです。ここから雇用住宅をめぐるさまざまな問題が生まれています。

 当時の国会議論の中で、私たちは、国民が期待する特殊法人改革とは、無駄な部門は思い切って削減する、しかし同時に、国民生活にとって必要な事業は、公的部門としては拡充、改善することが大切、この立場で議論してきました。

 大臣、行政改革、こういった場合には、多くは行政機構の効率化だとか、あるいは経費削減、公務員の改革などがうたわれているわけですけれども、そもそも行革とは何か、何のための行革か、このことについて聞かれたら、大臣、どうお答えになるんでしょう。

○河野国務大臣 行政機能や政策効果の最大化を図りつつ、税金を無駄にすることがないように必要最小限のコストにより政府を運営する、そのための個々の事業や行政の見直しを不断に行っていく、これが行革だと思っております。

○島津委員 そういう立場で、やはり忘れてはならないのは国民のことだと思うんです。

 厚労省に、具体的な問題について聞きたいと思います。

 報道によりますと、この高齢・障害・求職者雇用支援機構は、この三月末で、住宅取得の意向を示している一部の自治体を除いて、自治体との取得協議を打ち切り、民間売却を目指して、そしてそれが不調に終われば退去通告する方針だ、こういうふうに報道されています。これは神戸新聞の三月二十二日付なんですけれども、この方針というのは事実なんでしょうか。

○苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用促進住宅につきましては、所有者である独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が、平成二十八年度に、入居者の方がお住まいのまま民間事業者へ売却する手続をとっているところでございます。

 売却の手続の一つとして、現在お住まいの方に対する説明会を本年度実施しておりますが、まずは、入居者の方々がお住まいのまま全ての住宅を売却できるよう全力を尽くしてまいりたいと考えてございます。

○島津委員 ですから、それが不調に終わった場合には退去を求めるという報道なんですけれども、それはそうなんですか。

○苧谷政府参考人 民間事業者への売却におきましては、入居者の方が安心して引き続き住み続けられることを条件とした譲渡を進めておりまして、現時点で退去促進を行う予定はございません。

○島津委員 今、各地で入居者の皆さんへの説明会が開かれています。この説明会、資料におつけしましたけれども、売却が不成立の場合には、ここにあるように、平成三十年度から三十一年度の間に退去していただきますというふうに、これは機構の資料でこうなっているんですけれども、これは事実ですね。

○苧谷政府参考人 お手元にありますその資料そのものは確かに説明会で配られたものでございますが、機構に確認いたしましたところ、まずは民間事業者への売却を最優先で行っており、平成三十年度から平成三十一年度の中で退去することを現時点で決定してはいないということでございました。話がつかないまま退去促進をする趣旨を書いたものではないということでございました。

 厚生労働省といたしましても、入居者の不安を招かないよう、丁寧な説明を行うように依頼してまいりたいと考えてございます。

○島津委員 いろいろ言われますけれども、結局こういう説明をしているんです。ですから、売れない場合には退去していただきます、こう書いてあるわけですよ。そういうふうに入居者の皆さんは受け取っているんですよ。事実上の追い出しなんです。

 民間に売れたとしても、それで問題が解決するわけじゃありません。各地の説明会で、民間売却後十年経過した後も住むことができるのかという質問に対して、機構の方は、購入した民間事業者の判断となりますと回答しています。

 予算委員会の私の質問のときでも、入居者と事業者の間で決められるものだ、こういう答弁がありました。

 結局、民間売却がたとえできたとしても、十年後はどうなるかわからない。これは不安をあおるだけじゃありませんか。どうでしょう。

○苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 住民の方は御不安があると思いますので、十年間、賃金も上げない状態で住んでいただけるようにという猶予期間を設けたものでございます。

○島津委員 ですから、その十年後に不安だということなんです。

 例えば、兵庫県の伊丹市のある住宅でこんな訴えを聞きました。ハローワークからの紹介で平成二十四年、二〇一二年に定期契約で入居しました、退去の話はそもそも聞いていなかった、これまで民間アパートで六万円の家賃を払っていた、やっとこの雇用促進へ転居して、今家賃が二万三千八百円だ、これで安心しているのに、これ以上の家賃の支払いはできない、十年後はどうなるのかわからない、こういう話なんです。また、民間に売れなかった場合にはもっとどうなるのかという不安があるわけです。こっちの不安の方がむしろ深刻です。

 別の方は、がんの夫を抱えて医療費にお金がかかる、行くところがない、出ていけというのは死ねということと同じです、私はこう訴えられました。

 改めて聞きますけれども、今入居している住宅の引き取り先がない場合、民間に売れない場合、どこにも行き先がない、行く当てがない、こういう人はどうすればいいのか。私が紹介したような事例は数多く聞いています。中には、ブルーシートを用意してホームレスになれというのか、こう憤っている方もいらっしゃいます。

 どう対応するのか、明確な答弁をお願いします。

○苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 訂正をさせていただきます。先ほど、十年間賃金を上げないと申し上げましたが、これは家賃を上げないの間違いでございます。申しわけございませんでした。

 それで、この雇用促進住宅にお住まいの方、まずは民間に売却をさせていただきまして、先ほど申し上げましたように、いろいろございますけれども、十年間という期間をとにかく保つ。今現在できるところの精いっぱいのこととしてやらせていただいているところでございます。

 いずれにしましても、今お住まいの方が不安を抱かれないように、きちっと説明を丁寧にしていきたいというふうに考えてございます。

○島津委員 十年後のことは、またきちんとしていくようにしてもらいたいと思うんですけれども。

 民間に売却できなかった場合には、先ほどの資料にあるように、説明会を開いて退去してもらうと。そうしますと、そういう入居者の皆さんはどこへ行くのかということになるわけです。そこはきちんとどう対応するのかということを今質問したわけですから、そこをお答えください。

○苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今現在は、民間に売却できるよう一生懸命努力しているところでございますし、また、現に売却も進んでおるところでございます。

 ただ、仮に万一民間事業者へ売却できない場合におきましても、これは、できる限りお住まいの方が困ることがないような方策を検討してまいりたいというふうに考えてございます。

○島津委員 先ほど、死ねということかという声を紹介しましたけれども、これは千葉県の銚子市です。県営住宅の強制退去を求められて、強制執行の日に無理心中を図ったという痛ましい事件が起きました。四十三歳の母親が十三歳の長女を殺害した。また、愛知県豊田市でも、ひとり暮らしの七十四歳の男性が、市営住宅を強制退去された後、十六日後に自殺した、こういう事件がありました。

 大臣、これは通告してありませんけれども、国が行革で廃止を決めた雇用住宅でこのような自殺者を出してはならないと思うんです。そして、自殺者を出さないために国が必要な対応をすべきだと思うんですけれども、どうでしょう。

○河野国務大臣 現在住んでいらっしゃる方のことを最優先に考えて厚労省が対応されると思っております。

○島津委員 この間、厚労省職業安定局長名で、雇用促進住宅廃止に伴う退去者の公営住宅への優先受け入れを要請する都道府県知事宛ての通知が出されています。また、国土交通省からも、やはり都道府県宛てに同様の通知が出されています。しかし、なかなかこれの効果が上がっていない、実際にはうまくいっていない。申し込みの際に多少ポイントを優遇するだとかくじ引きを二回にするだとか、そういう措置がとられているんですけれども、実際には公営住宅の方も応募が殺到していますから入れない、こういう状況なわけです。

 ここまで来ましたら、国が責任を持って、国が決めた廃止決定ですから、雇用促進住宅が民間に売れずに行く当てがない、こういう人は国の責任で公営住宅に入れるようにすべきじゃないんでしょうか。これはどうでしょう。やってくださいよ。

○苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 済みません、繰り返しになりますけれども、現在は民間事業者へ売却しようということで努力しておりまして、現に売却も進んでいるわけでございます。

 ただ、万一ということでございますけれども、もちろん、先生がおっしゃったとおり、地方公共団体等への働きかけ等もやりながら、今住んでいらっしゃる方が困らないようにいろいろな方策を講じていきたいと思っております。

○島津委員 ぜひ、責任を持って路頭に迷わせないということをやってほしいと思うんです。

 行く当てがない、どうなるかわからない、こういう気持ちで、雇用促進住宅に入居の皆さんは毎日毎日をお過ごしになっているんです。本当に、その気持ちを私も切々と訴えられました。この心配にどう応えるのか、これはやはり政治の責任なんです。

 今大事なことは、国や機構が、退去していただきます、こんな説明を殊さら入居者にするんじゃなくて、不安をあおるんじゃなくて、本当に困っている人たちに対して、安心して暮らせる方向を示すことだと思うんです。

 次に、具体的なもう一つの問題についてお聞きします。

 三重県のある住宅では、定期契約者が二〇一六年四月一日から一八年三月三十一日までの入居の再契約を行った際、機構の側から、あなたは次の更新はありません、こう宣告されたそうです。

 民間に売れるかどうかまだ決まっていないうちから契約しない、つまり、退去しろと迫っているわけです。先ほどの配付資料の日程表から見てもおかしい話です。退去説明もまだやられていない、本当にひどい話です。

 この住宅は、聞きましたら、アンケートで民間売却を拒否する意思を示している、そういう住宅だそうです。それが影響しているのか、それとも、既に二〇一八年度から二〇一九年度の間に退去という既定路線の上に立ってこういう宣告が行われているんですか。これはどうでしょう。

○苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 機構にも確認いたしましたけれども、現在、家賃滞納等の再契約における条件を満たさない方、そういう方でない限りは、契約期間満了後の再契約はしない対応というのは行ってございません。

 民間売却を理由とした更新拒否ですとか、あるいは、どうも売れそうもないからということで更新拒否をしたという事実はございません。

○島津委員 そうじゃないんですよ。こういうことで実際に再契約拒否が各地で行われているんです。

 かつて、普通契約者、これは二〇〇三年十月以前の契約者ですけれども、あるいは定期契約者に対して事実上の契約拒否が行われたことがありました。こうした乱暴なやり方に対して批判が上がって、この間、事実上こうした契約拒否が撤回された経緯があります。

 今、事実はないとおっしゃいましたけれども、これから、契約拒否しない、こういうことが起こらない、これは約束していただけますね。

○苧谷政府参考人 お答え申し上げます。

 家賃滞納等の再契約における条件を満たさない方でない限り、契約期間満了後の再契約はしないというようなことはいたしません。

○島津委員 家賃滞納でも、やはり本当に生活に困っている方がいらっしゃるわけですよ。そういう方に対して、家賃が払えないから出ていけと言うのは、先ほど言ったように、それこそ、自殺するんだとか、こういうことになってしまうんですよ。そういうしゃくし定規なやり方でこうした公的な住宅は役割を果たせると思うんでしょうか。どうなんですか。

○苧谷政府参考人 家賃滞納の場合も、それはいろいろな状況がございますので、本当に入居者の方が大変な場合等は当然考慮いたしながら、入居者の方が不安を抱かないような対応をとるように、厚生労働省といたしましても機構に対して依頼したいと思っております。

○島津委員 この間いろいろ質問する中で、住民の皆さんが不安にならないように丁寧な説明、しっかりした説明ということを繰り返しおっしゃるんだけれども、実際に現場に行けば、住民の皆さんはそういう説明を受けても、不安だ、わからない、こういうことがあるんですよ。ですから、これはきちんと、説明だけじゃなくて実際の対応として、やはり公的な住宅の責任を果たす、厚労省としてそうした皆さんの暮らしを守っていく、居住権を守っていく、こういう立場でしっかりやるべきだと思うんです。

 最後に、大臣に再びお聞きしたいと思うんです。

 冒頭に確認しましたけれども、本当の意味での行革というのは、国民のためになるかどうかが大きな尺度としてやはり大事だと思うんです。

 行革、特殊法人改革の対象とされた雇用促進住宅は、財政的にも黒字で効率的な運営をしてきました。そして、今、民間への売却なんかも進められているわけですけれども、地方自治体への売却、譲渡された、ここでは、住民の定住促進対策あるいは若者対策、いろいろな形で効果的な役割を果たしています。しかし、ここまで見てきたように、行革の名のもとで進められている雇用促進住宅の廃止の方針が入居者の皆さんに大きな不安を与え、実際に困っている、こういうことが起きているんです。

 具体的に言えば、もう廃止するからということで、必要な修繕なんかはやらない。命にかかわる、安全にかかわるようなこと以外は、例えば、階段の手すりを塗装するだとか、階段の滑りどめをやるだとか、こういうことが放置されちゃっている。

 私は、行革の方向が間違っていると思うんです。大臣、こうしてきょうの議論を通じて、この行革の方向は間違っていると思うんですが、どうでしょう。

○河野国務大臣 問題意識はよくわかりましたが、この問題は厚労省の所管でございますので、厚労大臣にお尋ねいただくのが適当かと思います。

○島津委員 所管が違うのは十分承知しています。ただ、やはり行革担当大臣で、これからも行革を進めていらっしゃるわけですから、感想として、きょうの議論を聞いて、これはおかしいんじゃないかと私は思うんですけれども、どうでしょう。

○河野国務大臣 所管しておりませんので、お答えする立場にございません。

○島津委員 安倍内閣閣僚の一員としてそういう御回答ですから、なかなか、姿勢が伝わってくるなという思いをしました。

 閣議決定された二〇二一年までの雇用促進住宅の廃止決定は極めて大きな矛盾を広げ、入居者の実態に沿わない理不尽なやり方が進められています。改めて、私は、閣議決定の撤回、入居者の一方的な追い出しをしない、そして、行政改革は国民の立場に立った真の改革になるように求めて、質問を終わります。

 

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